真相 第三話
吉町は賭け事が好きで、よく浪岡の不埒者らと共に賽子に興じていた。だがいかんせん負けが続き、借金まみれになった。とうとう住んでいる土地屋敷をすべて差し出すかと脅迫される。吉町としてはさすがに無理だし、一応はある程度のプライドもあった。浪岡北畠家臣が、借金まみれになって財産を取られてすべてを失ったともなれば、とてもじゃないが生きていけない。
ここで鰺ヶ沢より来たヤマノシタが一枚噛んだ。ではこうしよう。浪岡御所の蔵には金銀財宝があまたあるという。……ここは吉町と仲がいいという御所の北畠顕村を連れ出して、賭け事に興じさせようと。
吉町が賛同しさえすれば、奪った財宝と代わりに借金を帳消しにする。そればかりか分け前も与えよう。
吉町は戸惑った。御所号を騙すなど……家臣としてしたくない。不義だし不忠だ。いやいやとヤマノシタ。お前は誘うだけだし、何よりも嵌るかどうかは顕村次第だ。お前の責任ではない。吉町はというと、自分の切羽詰まった状況もあるので、しぶしぶ従ったのである。
……この時までは、多くの野郎どもの意識下には、蔵の財宝のことしかなかった。ヤマノシタ自身、面松斎に依頼された”その先のもの”があったのだが、正直どちらに転がろうがいいとも考えていた。成功すれば仲間らで望む者に土地を与え、失敗しても己は命を失う必要がない。損をするのは浪岡の善良者ばかり。
かつてのまとめ役とは、どこか違っている。