真相 第二話
日が上がろうとしているのに野郎どもが賭け場で待つ理由……実はある男の戻りを待っている。
吉町であった。
吉町は夜と同じように商家長谷川の表を避け、塀伝いに横手を通り、四角く囲まれた小さめの木口より体を曲げて入る。……待ち構えていた野郎たちは豹変し、剣幕を悪くしそのほうを睨む。
彼の姿が目に入るなり、ある一人は脇腹より蹴りを喰らわす。吉町はそのまま横へ倒れこみ、そこは特に汚いのが一目でわかる土間であったので、埃もたいそう浮いた。もう一人は容赦なく体を踏んづけて、他の者は胸倉を捕まえては顔を殴った。……少し離れてヤマノシタも見ている。この人物が何か言えば止まるのだろうが、あえてしない。……そのうち野郎どもの一人が“顔に傷つけば怪しまれる”と止めに入り、やっとのことで暴行は終わった。すると次にくるのは言葉攻めである。初めに蒔苗が言った。
「吉町。よくもさっきは使用人風情と馬鹿にしてくれたな。」
吉町は先ほどまで体を痛めつけられ、思うように動かせない。それでも蒔苗の前へ膝をつき、めいいっぱいの釈明をした。
「すまぬ。まさか聞こえていたとは……。」
「いっていいことと悪いことがあろう。」
蒔苗の怒りは激しい。ほかの者も続けて吉町を罵る。
「確かにお前は浪岡の立派な侍。こちらは“使用人”、下っ端のな。だがお前は借金で首が回らぬ。そこで俺らの言いなりだ。恥ずかしいだろ。」