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津軽藩起始 浪岡編 (1577-1578)  作者: かんから
第四章 北畠顕村、策に嵌る 天正五年(1577)夏
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ヤマノシタ 第四話

 笑いの声が部屋にこだまする中、(あき)(むら)は隣の(よし)(まち)に“訳”を尋ねた。




「実に言いにくきことですが……昔より賭け事が好きでして、本性を隠して参じております。そこなる(まか)(なえ)という者は……単なる使用人しようにん風情(ふぜい)。“まかない”を作ることが仕事なので、転じて“蒔苗”と名乗っているだけでございます。」



 “そしてあちらなる賭けの元締めは……“ヤマノシタ“と申します”



 “……ほう。ヤマノシタと。下の名は”



 “いえ、それ自体が名前です。下賤の者ゆえ、苗字などありませぬ”





 顕村はまじまじと恰幅のいい体つきの、その元締めを見た。“ヤマノシタ” は顕村の様子に気づき、笑顔で問いかける。



「それでは霊山(れいざん)(おう)。賭け事は初めてですかな。」





 ……大盗賊なるものが博打をやったことがないのも変な話なのだが、なんと言おうか。


「上方より参ったのでの、こちらのやりかたはよく知らぬ。」




「そうか。では、お教えしよう。」


 ヤマノシタは、目の前に転がっていた賽子(サイコロ)を持ち、横に寄せてあった白い茶碗に入れ、勢いよくひっくり返した。床に茶碗の(へり)がつき、中が見えることはない。



「至極簡潔。上方の民は頭がよきこと。いささか込み入って難しいかもしれぬ。だが田舎の民は頭がようない。」


 野郎どもは思わず吹いている。



「賽子が、何の目であるか当てるだけ。さあ、なんと心得る、霊山王。」


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