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津軽藩起始 浪岡編 (1577-1578)  作者: かんから
第四章 北畠顕村、策に嵌る 天正五年(1577)夏
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ヤマノシタ 第一話



 ……入る機会をうかがう。


 障子の向こうからは光が漏れる。中にいるのは十人ぐらいか。各々真剣に、裏返された茶碗を見つめている。


 奥にいる恰幅のいいごろつきはその茶碗を揺り動かす。賽子が中でコロコロと音を立てる。ごろつきが勢いよく“蓋”を開けると、周りの者はそれぞれの表情を浮かべる。笑う者、泣く者、叫ぶ者。酒も入っているせいか、感情の起伏が大きい。

 負けたものから、銭をとる。勝った者には銭が与えられる。…………ここではだれもが平等である。





 その光景を見た(あき)(むら)の酔いは醒め、少ししか開いていない障子を急いで閉じた。隣の(よし)(まち)へ戸惑いの目を向ける。吉町はというと顕村の両肩を力強くにぎり閉め、小さな声で伝えた。


「いいですか、殿下……。下々の声を聴くのは上に立つものの仕事。これが第一歩でございます。」


 そのために、二人とも身なりを粗雑な麻の着物に変えていた。"つぎはぎ"がされ、傍から見れば農民ぐらいにしか見えないだろう。当然だが顕村の薄くされていた化粧なども落とした。




(あき)(のり)様や水谷(みずたに)様に近づくには、まず浪岡の今を知ることです。」



 顕村は嫌がりつつも、しぶしぶ吉町の言葉に従う。顕村の気が伏せる大きな原因は、政治に参加できないことである。直接耳を傾けることで、何が必要なことかわかるかもしれない。“何かせねばならぬ”とはこういうことだ。


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