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津軽藩起始 浪岡編 (1577-1578)  作者: かんから
第四章 北畠顕村、策に嵌る 天正五年(1577)夏
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謀の道 第三話


 その日、御所の北畠(きたばたけ)(あき)(むら)は特にいらだっていた。浪岡の雰囲気に落ち着きはなくなり、物騒な話ばかり。顕村にしてみれば以前のような浪岡が好きであるし、和歌や蹴鞠などをたしなんでいたい。そんな平和な世界がいい。


 かといってすべて軟弱というわけではなく、一応は長老の(あき)(のり)に厳しく育てられた。故に意識の中には常に浪岡の将来のことがあるし、御所としていかに動けばよいか考えている。




 だが、所詮は温室育ち。顕範の老獪さをわからないし、滝本(たきもと)の解ったうえでの行動も知らない。思いもよらぬことであり、結局は表層しか見ることができない。あくまで表層の話でのみ物事が進んでいると。おめでたいことでしかないのだが、もちろん裏には根回しがあれば、現場での腹の探り合いもあろう。そういったところを想像できないのだ。


 顕村は何か自分がのけ者にされているような気もした。顕範や管領の水谷(みずたに)こそそうだ。さらには南部代官の滝本も顕村では話が通じないとばかりに彼らとばかり顔を合わす。



 ……こうなると、酒に入り浸るしかない。……大瓶に“山ノ下”と黒字で大きく書かれている。地酒の類だが、これがめっぽう強い。最初こそ烏帽子は灯の横に礼儀正しく置いてあったが、腕を動かした勢いで倒してしまった。……北向きの簾をあけると、暑苦しい夜ではあるが北には家々もなく川や田畑しか見えないので、気持ちは少しだけ晴れやかになる。これが南の簾をあけてみろ、隙間なく並ぶガサツな家々があろうし、人の往来も遠目ながら入ってしまう。……顕村は立派な直衣こそ来ているものの、中に来ている着物の胸元を大きく開き、体を横たえてる。



……北向きなので、月は見えぬ。風情がないなと無意味に貶してみた。だが元は自分で選んであけたのだから文句など語ってもと、自己嫌悪に陥るのである。


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