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津軽藩起始 浪岡編 (1577-1578)  作者: かんから
第三章 兼平綱則、浪岡を退く 天正五年(1577)梅雨入
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老獪 第三話

 長老の北畠(きたばたけ)(あき)(のり)、御所の北畠(きたばたけ)(あき)(むら)の前へわざと恭しく進み出で、この若君に裁可を願う。



 顕範の目は鋭く、空気を察しろという圧が強い。ただ残念なことに、顕村には不信感しかない。つい最近、やっとで顕範の本心を聞けたと思い嬉しく感じていた。“浪岡の独立独歩”……危うい道だし、他の家来衆とも意を異にする。だがせっかくのことであったので、顕範の好きなように言わせておいた。

 ところが今や逆のことをのたまわっている。浪岡は南部に従うしか道はなく、以前も以後も変わらぬとでも言っているかのような。



 かといって顕村に、この場をひっくり返すほどの力もない。立場はある意味でお飾りに近い。……そこで顕範に対し無言で返す。鋭い目線はぶつかり、それは周りの家臣団をも動揺させた。



 その家臣らの中の一人……多田(ただ)はいっそう哀しくなっていた。だが、自らは旧来伝統的であるが浪岡を支える管領という立場。……この場をおさめなくてはならない。


 多田は少しだけ前へでて座り直し、御所の顕村を憐れみの表情で見つめた。少しだけ首を横に振り、“もう抵抗はやめろ”と言わんばかりに。




 顕村は多田の表情に気付く。……己は顔を引きつらせた。沸き立ってくる怒りの心、仕方ないのはわかっているのだが、睨み合い始めた以上、後には引けぬ。しかし……反南部の多田が、矛をおさめよと。……不本意だ。人生最大の屈辱だ。これでは御所の名は形無しだ。




 ……静かではあるがゆっくりと、何か下につかえているものでもあるかのように、顕村は頷く。


 こうして浪岡は再び南部へ従うに至る。


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