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第六話 異常の方程式

 死生観の麻痺してる千鳥には赤原がどれほど異常なのか認識が甘かった。厄をため込む異常が周囲の人間にとって災いとなることは当然の道理であるのに、その警戒を怠った。ただ無力というだけで、人が無害かどうか推し量ることなどできないのだから。

 千鳥はとある定食屋の前で立ち止まった。店先の食品サンプルにはうっすらと埃がかぶっているが、未だ現役で営業し続けている。この深夜ではさすがに準備中の札がかかり、中には誰もいない。入り口である引き戸にも鍵がかかっている。だが、当然のように内ポケットの鍵で千鳥は解錠した。断わっておくが千鳥はこの店とは何の関係もない。勝手に合鍵を作って勝手に開けているというだけだ。そこまでして、戸は開けずに千鳥は黙って継己に手を差し出した。気力を振り絞って歩いていた継己はその手に倒れこむ。

「いや、そういうつもりではないんだが」

 むっつりと不機嫌そうに千鳥は自分含め三人分の重量を支える。ああ、ごめん、と律儀に答え、継己は戸のほうに体を引きずる。懐から取り出した札を戸へと押し付ける。すると、札に朱で描かれた梵字と幾何学模様を想起させる文様が浮き出し、流れ、引き戸全体に広がる。わずかに燐光する戸を引いて、今度こそ継己はその中へと倒れこんだ。千鳥も担いだ赤原がつっかえないように屈みながら戸をくぐる。刹那、浮遊感に似ためまいが起こる。目の前には年月を経た定食屋のテーブルとイス、ではなく貸しビルの応接間が広がっていた。空間の継ぎ接ぎによる移動術式。派手ではないにせよ、何かと継己の術式が活躍していたことは事実である。千鳥の後ろで扉がひとりでに閉まり、薄氷の砕けるような音とともに紅いきらめきが霧消する。あちらとこちらのつながりが切れ、元の正しい空間の在り方に戻った。

 千鳥は赤原をソファに横たわらせ、血に汚れたその上着をゴミ箱に捨てた。それから足元に伸びている継己を抱き起した。やけに重いと思って見れば、早くも継己は寝息を立てて眠っていた。呪い返しをしていたと継己は言っていた。赤原の向かいのソファに継己を横たえ、千鳥は思案する。

 いったいどの程度の呪いがなされたのか。呪い返しでここまで消耗する呪いをいきなりかけられたのか。

「なあ、お嬢ちゃん」

 猫撫で声を赤原が突然出したので、千鳥の思考は中断される。

「なんだ……?」


こんばんは。夜道です。読んでいただき感謝です。残酷描写タグをつけ忘れていて申し訳ない。読み返したらグロくてびっくりしました。ではまた。(早く赤原の見せ場を作ってやりたい)

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