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身内より身内に近い人が慣れませんでした(3)

お知らせのとおり、今回でしばらくお休みします。

「コニー……?」

 

 そんな私を見てコニーは悲しそうに目を伏せた。

「私を第一夫人にするのは、私が結婚もしないでステラ様のお側にいることに関しての同情でしょうか?」

「ち、違う……!」

 私は即、返した。

「それに、後から娶るとかいうお嫁さんと仲良くできるって……私がステラ様の奥さんを纏めろってことですよね? 彼女達がステラ様の愛を争奪するのを私がうまく纏めて、平和にやるようにってことですよね?」

「――!? ちが……!」

「そう取れます。ステラ様は平等に愛すると宣言していますが、今のお話ではそう取れませんでした」

「……」


 ショックだ。

 そんなつもりはない。コニーに囲った女性の管理を任せるとか思ったことなんてない。


 ――でも

(私の態度や言葉に出てるの?)

 どうして?


「そりゃあ、いいご縁があればいずれかは……とか考えも少しはあります。だけど、私はそもそも結婚に憧れを抱いていませんし。今のお仕事……ステラ様のお世話がとても楽しいんです。だって、ステラ様が五歳の頃からお側にいるんですよ?」

「コニー……」

「こんな考え、おこがましいとは思うんですけれど、ステラ様のことは本当に妹か娘のようにお世話をしてまいりました。…………なのに」

 じわり、とコニーの瞳から再び涙が溢れてくる。

「結婚が駄目になって、『男になりたい』というお気持ちは痛いほどです。『ハーレム作って女性をまんべんなく愛する』これも、まあ、良いか、と思いました。――ステラ様が今までのようなお気持ちでいたのなら! でも、ステラ様は男性になる時間が長くなればなるほど、『男性寄りの考え』になってきて……私の好きなステラ様がどんどん消えていって……!」

「そ、そんなに変わってないよ!? ねえ、兄上」

 今まで縮こまって話を聞いていた兄にふる。

 だけど、兄は微妙な表情で返すだけだった。

(ええ……? それ、どういう意味?)

「男性のステラ様は、女性を見る目がとても嫌らしいです! 今日の朝だって村の娘達に必要以上に馴れ馴れしく、あれでは女性を口説き落とすゲームにしかみえませんでした! ふしだらすぎます!」

「そ、そんな……」

 頭が真っ白になって、考えがまとまらない。次の考えが思いつかない。

「あれでは、王宮の恋愛ゲームを率先してやっていたグライアス殿下と同じです!」


 グ、グライアス殿下と一緒――


 カクン、とコニーの手から離れ、私の手は力なく床に落ちる。

「コニー、それは流石に言い過ぎだ。ステラは今、王宮貴族との関わり方や女性への態度の取り方の勉強中なのだから。ああした男女の駆け引きのやり方も知らなくちゃならん」

 兄がコニーに異議をたてる。

「そんなこと、ステラ様に教える必要など……!」

「それがステラの望みだろう? コニーもステラの侍女ならそれに従うように」

 兄の厳しい声音にコニーは、しばらく黙っていたけど

「申し訳ありません。このまま男性になるステラ様のお側にお仕えする事はできません」

と言い出した。

「コニー……どうしても嫌なの?」

 長く私の側にいてくれたコニーがいなくなる。

 それだけでも、私には大打撃すぎる。

「耐えきれないんです……! ステラ様が男になっていくのが……! 外見は変わっても中身はステラ様、そう思っていました。だけど、中身まで男になっていくステラ様に私はついていけません……! 私の大好きなステラ様がいなくなってしまうのが辛い……お側にいるのが辛いんです! お許しください!」


 ワッと泣き出したコニーを見て、私も同じように泣いてしまった……。





◇◇◇◇◇


「この兄の頼みを聞けないというのか?」

「もう、縁は切ってあります。書類作成時にいたでしょう?」

「しかし、血の繋がりは切ってもきれん! そして、この頼みは国のためだ」

「……どこが国のためなんですか」

 ドン! と、レノンの横にいる男が荒々しくテーブルを叩く。

 格好は王宮に勤める騎士なのに、やることはゴロツキと一緒だ――レノンはそう思う。

「おまえは殿下のいう通りの薬を作ればいいのだ! 『獣になる薬』をな!」

「生態系の全く違う薬を調製しろなんて、師匠さえもできなかったのに」

 レノンの言葉にグライアスはニヤリ、と笑った。

「ヒュー殿がまだ、王宮に仕えているとき軍事会議で『兵器として獣化した人を使う』という案があったそうだ。その案に基づいてヒュー殿が調製した薬についてのまとめた書類が残っている」

 レノンの眉が疑わしそうに寄る。

「……知らない。残っている師匠のノートには記載がない」

「ノートに残してなくても……レノン、おまえの頭に残っているだろう?」

「教えてもらってない」


「今、おまえが言ったこと、嘘か真か調べなくてはならんな」

 グライアスが指を鳴らすと、外に控えていた騎士達が一斉にレノンの家の中に入り、あちこちを荒らし始めた。

「止めろ!!」

 それは探すというより、言葉通り部屋中を荒らし、めちゃくちゃにする行為だった。

 椅子やテーブルは勿論、並べてある瓶などをなぎ倒し、それはステラの作った化粧水までにも及ぼうとする。

「それは依頼物だ!」

 レノンは騎士に飛びついたが、あっけなくなぎ倒されてしまう。

 床に身体を投げ出されたレノンの頭を、騎士が容赦なく踏みにじる。

「依頼物を壊したくないよな。薬術師としての評判に関わるしな? レノン」

 グライアスは床に倒れたままにレノンに向かって屈む。

「兄は、おまえの薬術師としての腕を頼りにしてるんだ。オズワルトのあの薬のように素晴らしいものを作ってくれ。――そしたら、母の件、謝ってやってもいいぞ?」

「――!?」

 グライアスの言葉にレノンの瞳がぎらつく。剣呑さを増した瞳でグライアスを睨むも、更に強く踏みにじられ頭に激痛が走った。

 苦痛に歪んだレノンを見て、グライアスは騎士に目配せして緩くさせた。

「父から真実を聞いた。だが、分かったところで、おまえは脇腹の息子。正式に認められていないお前の母が辛い目に合ったのは、王宮ではごく自然の流れ。そして、レノンおまえも――我が王室では厄介な子なのだよ?」

「だから! 王宮から去った! 嫡廃もした! 関わる気などない!」

「でも、レノン。そういってもお前は俺の弟だ。しかも凄腕の薬術師。あんな性転換の薬など容易に作れるものではないからなあ。だから、取り立ててやろうというのだ」

「……断る!」


「そうか、残念だ。おい、その瓶もってこい」

 騎士の一人が、ステラの作っている化粧水瓶をグライアスの渡す。

「これは私が預かる。私が依頼した『獣になる』薬と引き替えだ」

 そう言い放つと、高らかなに笑いながら野外に出て行く。


「ああ、そうだ。エリソン侯爵の令嬢のことだが、おまえ幼なじみなんだってな?」

 振り向きざまに笑いかけるグライアスの笑みは、邪悪さが滲みでていてレノンは

「断ったと聞いてる! もう彼女には構うな……!」

と威嚇する。


「それはレノン、おまえ次第だよ? 賢いから分かるだろう? 私の言わんとすることを」

 グライアスはそう言って去っていった。








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