プロローグ
連載始めました。
よろしくお願いします。
「その結婚、まった――――!!!!!!」
厳粛な空気の中、誓いをたてようとする私達を止める声。
式に集まった人達、私や彼の友人にお互いの両親。そして関係者達は大きく張りのある声で式を止めた人物を見やる。
「……グライアス殿下?」
どうして殿下が? 私は首を傾げた。
私は殿下とは、親しい間柄ではない。
グライアス殿下と親しい付き合いをしていたのは――そこで、私はハッとして結婚相手のオズワルトに視線を向けた。
「……グライアス……」
えっ? どうして目をそんなに潤ませてるの?
しかも殿下を呼び捨て?
顔も上気して、どうしてそんなに嬉しそうなの?
まるで、恋をしている乙女みたいに――
「えっ……?」
まさか、まさかとは思うけど……
「オズ! 愛してる! 一人の女のものにならないでくれ!」
「グライアス……」
手を広げて「さあ、俺の胸に飛びこんでおいで」と言わんばかりの殿下。
マッチョなくせにそういう王子様的な態度がよく似合う。
事実王子なんだけど。
そして厚い胸板のせいで、ピッチピチの詰め襟の制服が今にもはちきれそうだけど。
「オズワルト……」
二人の関係を瞬時に悟った私は負けてたまるかと、隣の彼の袖を握りしめ、目を涙で潤ませる――というか、本気で泣いてます。
だって、信じられないでしょ? 婚約者が男性とそういう仲だったなんて。
しかも、挙式の途中で相手が乗り込んでくるなんて。
「……ステラ」
「オズワルト……」
オズワルトと見つめ合う。彼の端麗な顔が困惑に満ちていた。
躊躇ってる。それは、明らかに自分に分が悪い気色だ。
行っちゃ駄目、と私は彼の袖から手を握りしめた――その瞬間。
「ごめん……! ステラ!」
私の手を振りほどき、ヴァージンロードを駆けていく。
「グライアス……!!」
名を呼びながら殿下の胸に飛び込んでいくオズワルト――私の結婚相手。
「オズ……すまなかった。もう、お前を離さん!」
私の結婚相手を抱き締めて、そう誓う殿下。
その言葉、どうしてオズワルトに言うの! ていうか、相手が女性だったら凄く感動する台詞だよ!
愛を誓う言葉は男に対しても有効なんだ、オズワルトの「はい!」と承諾する声が嬉しさに震えてる。泣いてるよね、きっと……
――というか、私の方が大泣きたいです。
そうして手に手を取って、教会から逃げ出す二人。
呆然とする私。
私、結婚相手を男に奪われました……