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第一話

「こ、この(わたくし)に冒険者になれと!?」


マリアベル・ウィステリアの絶叫が響く。


ブロンドの髪を毎日時間を掛けて縦ロールにして、服もアクセサリも高級店が一般的に取り扱わないくらいの高級品を一度使っては売りに出して…。


そんな生活を送っていたから、ウィステリア公爵令嬢は何かのバチでも当たったのだろうか。

そう思うくらい、一気に没落した。


理由は簡単、王子へのアタックに失敗したからだ。

詳しく言うと、王子が好んでいる汚らしい小娘を虐げたら、マリアベルの作った逆境が逆に王子を強くして、王子と小娘がくっ付いたのだ。


そのため、王子を敵に回してしまったウィステリア公爵家は、王子の機嫌を取るために、張本人のマリアベルを田舎に引っ越させて…現在に至る。


「旦那様のお勧めになったことですので。」


「ふざけているの!?私に出来るわけがな…いいえ、そんな汚れ仕事なんてしたくないわ!」


マリアベルはメイドに八つ当たりをするように机を叩いた。


マリアベルがここまで狼狽(うろた)えているのも無理はない。

幼い頃から王子に嫁ぐためだけの教育を(ほどこ)されたマリアベルは、ヴァイオリンもピアノもフルートも乗馬も出来るし、他国の言語や文化などの教養も身につけているし、流行にも敏感というかむしろ彼女から流行が生まれるくらいのステータスも持っていた。


誰よりも令嬢らしさを見せられるように、そうして育てられたマリアベルが、いくらここが剣と魔法の世界だからって、剣と魔法のお勉強などに力を入れているわけがなくて。


「私が傷付いてもいいと言うの!?」


「傷付くというか、死にも繋がりますね。

しかし、今の貴女様には付加価値などゼロに等しいですから。

…要するに、旦那様はマリアベル様がどうなろうと一向に構わないとおっしゃっております。

それと、それに奥方様も異を唱えてはおりません。」


「お父様、お母様ぁ!!!」


マリアベルは散々叫んだあとに号泣し出した。


ショックだった。

あれだけ自分を愛してくれた父親が、自分のことになると目の色を変えていた母親が、完全に自分を見限ったことに。


「お情け程度のメイドは配置されていますので、この邸宅にお帰りになれば安心です。

…まぁ、冒険者などやって無事に帰ることが出来れば、という話ですが。


尚、冒険者をなさりたくないとおっしゃるのでしたら、それは旦那様のご意向に沿わないことですので…仕送りがどうなるかは…。」


ここで、泣いている場合じゃないことがマリアベルにも分かってきた。


メイドの話はマリアベルが冒険者をやる前提でどんどん進められていく。

ここで冒険者なんてしないと駄々を()ねても、多分父親からの仕送りが止まるんだろう。


どの道、お金がないと生きていけないから、マリアベルに与えられた選択肢は仕送りが止まって死ぬか、冒険者やって死ぬかのどちらか。


「ああもう、分かったわよ!!やればよいのでしょう!?」


「理解が早くて大変結構なことでございます。」


こうして公爵令嬢マリアベルの冒険者生活が始まった。

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