脱!ニート!脱!日常!
あれ?入口の照明落としてないよね?なんか暗くなってない?また、外の電球が切れたかな…ちょっと見てこよう…
「出ては行けないよ、挟まれるから」
「ふぇ?」
街中にあるちょっとお洒落なカフェ、店の隅っこの方にソファー席がある、二十代後半だろうか、背の高い小麦色の肌をした男性が本を読んでいる、ちょっと濃いめの顔から漂う優しさと色気に店員もお客もついつい二度見をしてしまう
「やっと来たか、友よ」
本から目を離さずに彼は呟いた
「お待たせしましたかな?」
どこからともなく湧いて出た客に店員は焦ってお絞りとお冷を持って行く(あれ?入口のベルならなかったよね?)
向かい合う様にソファーに腰を掛けたのはこちらも二十代後半位の男性だ、肌は白く背は高い、ハッキリした顔立ちに綺麗に輝く金色の髪
(外人かしら?)
(モデルさんたちかな?見た事ある?)
厨房で女性スタッフが囁いていた
「黒髪に染めたのか?こないだは白だった気がするが」
金髪の男はメニュー表を見ながら呟いた
「ははは!気付いてくれたか友よ!そうなのだよ、まぁ、気分転換さ」
金髪の男は注文を済ませ黒髪が本を読み終わるのを待った
終わらない…軽く咳払いをしてみる
「ん?風邪かね?らしくないな友よ」
ちげーよ、本読むのやめろっての
「単刀直入に聞かせてもらう、何故彼なのだ?」
この質問で初めて黒髪は本から目を話した、キリッとしたつり目に真っ黒な瞳だった
「何故、とは?」
片眉だけ上げて黒髪が問う
金「そのままの意味だ、彼が来たのは君の差金だろう?」
黒「いかにも」
金「何故彼を選んだ?」
黒「何故彼を選んだ?」
金「彼からは何も感じない、特別性が無い、何もおかしい所がない」
黒「おかしい所が無いのならそれで良いではないか」
金「普通の職場なら万々歳だろうよ、だが私の所は…」
そう言ってしばらく沈黙した…
黒「友よ、君の所は普通ではない、普通ではない所に普通の子が入ったらどうなる?」
金髪は目の前に置かれたコーヒーを飲み干し立ち上がった
金「何か考えが有るんだな?ならばそれを信じよう」
黒「ははは!私も信頼されたものだな」
そのまま立ち去ろうとした時、耳元から声が聞こえた
黒「私から見たら彼よりお前の方が普通だぞ?友よ」
勢いよく振り返ったがそこには誰もいなかった、先程までソファーに座っていた黒髪はどこにも居ない、溜め息1つ零し弱々しく呟いた
「また暇潰しかよ……」