古代の呪い
2匹の獣の咆哮を受け、身体が硬直する
「ぼさっとするな!かくれろ!」
アルドの声に、ハッとし身をかがめるが視線は2匹の獣から外す事ができなかった。獣との距離は離れているが、もしも見つかったなら逃げる間もなく殺される自分の姿を想像してしまい動きが鈍くなる
「レオニス大丈夫か?」
静かな口調でアルドがたずねてくる。
「アルドさん…あれは一体何なんですか?」
視線を2匹に向けたままアルドにたずねると
「あれが魔獣だ…熊型のほうがロックベアーで狼型がフォレストウルフだな…いや…あれは稀少種か?!」
アルドが驚き目を見開く
「まずいな…あのロックベアーの方なら何とかなるがフォレストウルフ稀少種は不味いな、もしかしたらこの距離でも見つかる可能性がある。」
その言葉にレオニスの頬を汗が伝う
「アルドさん…もう遅いかも…」
その時レオニスは感じた…フォレストウルフがこちらを見ていると。なぜと聞かれてもわからないが、確かにこちらを見ていると感じた…
その時ロックベアーが立ち上がり吠えるとともにフォレストウルフの足元が隆起し土の槍がフォレストウルフを襲う、しかしそれを何事も無かったようにフォレストウルフは踏み砕くとお返しとばかりに今度はフォレストウルフの青い瞳が紅くなる、すると周りの木々が意識でもあるかのようにざわめきだすと突然何かが大地を突き破りロックベアーに絡み付く
「あ…あれは魔法?!…」
レオニスがそう呟くと、アルドが頷く
「ロックベアーが使ったのが土属性のアースランスだ、フォレストウルフが使ったのは水と土の複合魔法か精霊術なのか…あんな魔法は見たことが無い…見たところ木の根のようだが…」
するとロックベアーに絡み付いた木の根の様な物がロックベアーを締め付けだすと今度はロックベアーの身体から黒い靄があふれだす
「アルドさん、あのロックベアーからでてる黒い靄は何ですか?何か嫌な感じがするんですが…」
「黒い靄だって?そんなもの見えないが…っと戦闘も終わりそうだな、あとは俺達がどうやって逃げるかだが…」
アルドがそう言った時ロックベアーの断末魔の叫びとともにロックベアーの体が木の根によって上半身と下半身とにわかれ鮮血を撒き散らしながら大地に落ちる。
そしてフォレストウルフがこちらをむいた
「こいつは…覚悟を決めるしかねぇな…」
とアルドが呟いたその時…声が聞こえた…
(異界の者よ…私の声が聞こえるか?)
「アルドさん…あいつ喋るんですか?…」
「なに?!俺には何も聞こえないが…」
(異界の者よ、そなたに頼みがある…この近くに泉がある、そこに我が子がいるのだ…愛しき我が子はまだ幼く力も弱い…単身では生き抜く事もできぬであろう…そなた、我の代わりに育ててはくれぬか?…)
「待ってくれ、意味がわからない!どうして俺なんだ、あなたが育てればいいじゃないか!」
(異界の者よ…そなたの言う事はもっともだが、我の命はここで潰えるじゃろう…)
「え?…」
(お主も見たのであろう黒き靄をあれは、ついた者の意思を奪い進化させる古代の呪い。いまの我でも倒す事は出来ぬであろう…)
レオニスの視線がロックベアーに動く
「あ…あれは!!」
アルドもその声にきずきロックベアーを見ると、死んだはずのロックベアーの上半身と下半身が黒い触手で繋がり瞬く間に再生してゆく
「グギャァァァ!!!」
ロックベアーの咆哮とともにまた黒い靄が発生すると今度は全身を包み込み足元には触手が魔法陣の様な物を描くと紅く発光しだした………。