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アインシュタイン公認パワーストーン

作者: さきら天悟
掲載日:2016/03/09

「もう直ぐだな」



「何が?」

今日は3月上旬、奴の明るい顔を見て、

震災の日のことではないと想像できた。



「3月14日だよ」



「ホワイトデーかよ」

俺は吐き捨てる。

女にはまったくと言っていいほど縁がない。



「違ッ」

奴は嬉しそうな顔をした。

人を小ばかにする常習犯だ。



俺は一応付き合い、考えるフリをする。



奴は口角をさらに上げた。



嫌味な奴だが、金回りはいい。

バカではないが、人を苛つかせる。

本人は、他人を面白くイジッテイルつもりのようだが、

そのことが周りには伝わっていない。

でも、奴のことが分かっている俺は上手く接することができるのだ。

それにたまに逆襲して、ストレスを晴らしている。


「ヒントくれよ」

俺は奴に付き合ってやる。

どうせ、この店の飲み代は奴が払うのだ。

気持ちよく払わせてやる義務がある。



「重力波ッ」



「先月ニュースになった?

アメリカで観測された?」

俺は目を見開いてみせた。



「やっぱりアインシュタインは偉大だな」

奴は3回頷いた。



重力波はアインシュタインが予言していたものだ。

星など兆大な質量の物体は空間を歪ませるそうだ。

今回はブラックホールの衝突・合体による重力波が地球で観測されたのだ。



俺は首をひねる。

「で、3月14日と何が関係あるんだ?」



「アインシュタインの誕生日」

奴は伏し目がちに言った。



そういうことか。

そう言えば、以前アインシュタインを好きな理由を聞かされた。

同じ誕生日だ、と。

と言うことは。

「今年も参加するよ」


恒例の誕生日パーティー、

去年は延べ100人近くになったようだ。



俺の了承を得て、奴は顔を弛ませた。

すると奴は俺の手首に気づいた。


「ばっかじゃないの」

奴は俺の手首を指差す。

「そんなの付けても意味ないし」



俺は手首をさする。



「そんなんに、パワーがあるわけないじゃん」

奴は高笑いを上げた。



これは飲み屋の女の子の海外旅行のお土産だ。

確かに、彼女はパワーストーンと言っていたが、

そんなのはどうでも良かった。

ただ付け心地が良かった。

ちょっと冷たくて。


イラッとした。

彼女を侮辱されたようで。



「パワースポットって言うけど、

あんなの信じてるとバカだよ。

明治神宮の清正の井戸がいい例だ。

パワーがあったら、

加藤家はお取り潰しにはならなかっただろう」



確かにそうだが・・・

「お前知らないのか?

あの話」



奴は怪訝な顔をした。



「お取り潰しになった本当の理由は、

そのパワーを幕府が恐れたということを」



奴は、えッ、という口をしたまま、

声を発せずにいた。



「もし、熊本の加藤家が滅んでなかったら、

島原の乱と呼応して、幕府が転覆していた、

と言われていることを。

まあ、確かに怪しいパワースポットもあるがな」



奴は大きく頷いた。



俺は左手を差し出した。

「知らないのか、このパワーストーン。

海外じゃあ有名だぞ」



奴は首を振る。



「お前が尊敬する・・・」

奴をじっと見る。

「アインシュタイン公認のパワーストーンだぞ」

ウソはついていない。



奴はその言葉にのけ反った。


「ちょっと見せてくれ」



俺は手首から外し、奴に渡してやる。



「磁気か?」

奴は珠の一つを指でなぞる。

「いや磁気じゃないな」

奴はスマホを近づけ、くっつかないことを確認する。

「まさか」

奴は厳しい目つきをする。



俺はそれを受け止める。



奴は頷く。

「放射線?」



俺はニッと笑った。



「へぇ~、アインシュタイン公認なんだ~

俺も欲しいな」

物欲しそうに俺を見つめる。



「これはお土産だから、渡せない。

今度の誕生日にプレゼントするよ」



「楽しみにしてるよ」

奴はパワーストーンを俺に返して言った。



こんなモノでよければいくらでもプレゼントしてやる。

どこにでもありそうな石だからな。

でも、アインシュタイン公認はウソではない。

ちゃんとこの石にはパワーがあることをアインシュタインは証明している。

恐ろしいほどのパワーが。

30グラムぐらいあるから、東京23区を滅ぼせるくらいのパワーが。

広島に落とされた原爆の4倍以上のパワーが。

E=mC^2

アインシュタインは相対性理論で、質量はエネルギーであることを証明した。

広島の原爆は7グラムの物質消失の対価のエネルギーだったのだ。

だから、30グラムのパワーストーンは、その4倍以上のパワーがあるというワケさ。


アインシュタイン公認パワーストーン、

売り出せば儲かるかな、と思った。

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