2日目 、朝食と行動開始
お待たせしました。ようやく2日目突入です!
もう少し早く投稿するつもりでしたが、色々と遅れてしまいました。なんとか投稿予定日は守りましたが(・・;)
今回の話は内容的に不十分だと思いますので、後日改稿します。誤字報告もいただければ嬉しいです。
*12/6 PVが2000突破しました!ありがとうございます!
冷えた風が頰を撫でて、俺の身体が一瞬震えた。
「うん?」
俺は目を開ける。
スタッフルームの小窓から溢れる暖かい黄金色の光が顔を照らす。
いっけね、寝ちまってたか……。
ストア内には俺と未来しかいないため、ゾンビ対策用の見張り員無しに2人同時に寝るというのは非常に危険だ。ゆえに未来が寝ている間は起きてるつもりだったが、いつの間にか眠ってしまったらしい。
寝たまま視線を左に向けるとデジタル時計はAM8:35と表示されていた。
眠い目を擦りながらエアベッドからむくりと起き上がる。
「あ?」
そのとき、隣にいるはずの未来がエアベッドにいないことに気づいた。
未来がどこにいるのか辺りを見回していると–––、営業フロアへと繋がる扉の向こうからから何やら音が聞こえる。
俺はエアベッドから立ち上がり、音のする方へ歩く。
スタッフルームから出て、発生元へと近づくにつれてコトコトという音と鼻歌が聞こえ始める。
スタッフが出入りする扉を開けると、楽しそうに朝飯を作る未来の後ろ姿があった。
この階……というかこのストア内にはキッチンが存在しない(スタッフルームに電子レンジくらいはあるが)。しかし流石と言うべきか。ここのディスカウントストアには携帯コンロやフライパンなどの調理器具が勢揃いしている。
未来はそれらを商品棚の上に置き、調理している。恐らく早朝から準備をしていたのだろう。朝飯はほとんど出来ており、最後の一品に取り掛かっていた。後ろにある調味料を取ろうと振り返ったところで俺の存在に気づく。
「あ、たかしくん!おはよー」
「ああ、おは…」
「もう少しでご飯できるから待っててね」
調味料を取り、再び背中を向けた未来は何か思い出したかのようにフライパンと箸を持つ両手を動かしながら俺に話しかける。
「そういえば、あの毛布…たかしくんがかけてくれたんだよね?」
毛布というのは、未来が寝たあとに俺が下の階から持ってきたやつのことだ。
いくら夏だとはいえども、朝は若干涼しい。未来の身体が冷えないようにかけておいたのだ。
「ん。まあな」
「ふふっ、ありがとう」
やわらかい笑みを向ける。
何故か俺は恥ずかしくなりそっぽを向く。
「別にお前のためじゃねえぞ?風邪でも引かれちゃ困るから毛布かけてやっただけだ」
「もう、そこは『どういたしまして』でいいの!」
ちょい怒ッ!的な表情をした未来は肩を竦めると、どこか呆れたような眼差しを向ける。
「まあ、たかしくんが素直じゃないのは知ってるけどね」
そう小さく呟くとまた調理に没頭し始める。
5分後、テーブルが無いため、床に料理が並べられた。
ゾンビの世界になる以前に俺が食べていた簡単な朝飯と違い、未来が作った料理は手が込んでいた。全体的には和食寄りのメニューだ。
「「いただきます」」
俺は初めて食べる彼女の手料理を口へと運んだ。
同時に電流が脳を直撃したかのような感覚が襲う。
ただの朝食のはずなのに、シェフの作ったのでは?錯覚してしまうほどに美味だった。
自分の彼女が作る手料理、あとはこんな状況だからだろうか。
「……美味え!」
と俺が率直な感想を零すと–––、
「はあーー、良かったぁ!」
未来が安心したかのように安堵のため息を吐いた。
「ん、何がだ?」
「私ね、家族以外に手料理食べさせたことなかったから、たかしくんの口に合うかちょっと不安だったぁー」
そう言うと未来は恥ずかしそうに頰をポリポリと掻く。
初めて・・・・手料理・・・・。
自分が初めて未来の料理を食べられたことに感激しつつ、ポーカーフェイスを保とうと頬を引き締める。
「べつに問題ねえよ。むしろこんな温かい飯が食えるのに感謝したいくらいだ」
その会話のあと、俺と未来はテレビのニュースを見ながら箸を進めた。
こんな状況となった今では贅沢といえる朝食はあっという間に食べ終わった。
「その……ご馳走様でした」
「はい、お粗末様でした」
両手を合わせ、一息吐くと
未来の表情は急に真剣になる。
「ねえ、たかしくん…これからどうするの?」
どうする……というのは、ゾンビに支配された都市に留まるのか、逃げるのかという事だろう。
未来の問いに俺は暫し黙り込んだあと俺の考えを告げる。
「ここは池袋だ。テレビからの情報で予想すると、都市人口とゾンビの数は正比例してる。数十万ものゾンビが徘徊しているこの街にいつまでもいるのは得策じゃない。ゾンビがこれ以上増える前に人口の少ない過疎地域に行くのが一番……だと俺は思う」
未来は真剣な表情でうむむ、と唸る。
「そうなると、東北か北海道かな?」
「ああ、北東北か北海道が妥当だな。人口が少ないし、都市がないかわりに農地とか牧場が多い。都市に食料物資はもう来ないだろうし、長期的に見れば過疎地の方が食料はある」
「じゃあ今日中に出発する?」
「ああ、明るいうちに行動した方がいい。夜は危険すぎるしな。出発の準備してろ」
「うん、分かった」
コクリと頷くと未来は皿を片づけ始めた。
俺は携帯する武器と荷物の最終チェックを始める。
俺と未来の荷物はいつでも出発できるように予め準備していたため手荷物をまとめるのに、そう時間はかからなかった。
俺は壁にある小窓から池袋駅前を見下ろす。
やはり大量にいるな……。
俺たちのいるディスカウントストアは池袋駅前の大通りに面しており、当然のことながら周囲には数百から数千のゾンビが徘徊している。
ストアから脱出し、池袋から離れるためには奴らがいない道を作らなければならない。
その点を含めたストア内脱出作戦は昨日から十分に練っていた。特に問題も無いはず。
あとは実行に移すのみ。
未来も準備を終え、俺の隣に来る。
「んじゃ、行こうか」
さあ、変わり果てた世界で今日が始まる。
7話を読んでいただき、ありがとうございます。
次回は貴士と未来がストア・池袋から脱出する予定です。戦闘シーンも出しますので、ご期待ください。