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王の娘  作者: 大友うさぎ
寵姫
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華陽夫人

華陽夫人は喉元に何かが引っかかる感覚に襲われた。それと同時に嬛に会いたいという衝動にも駆られた。たかが、女官長の姪にここまで衝動が駆り立てられるのが自分自身、不思議であった。

思案の中、脚を揉んでいた宮女の和之(わし)がポロッとこう言った。

「大王が昔、宮女の景氏(けい)に手を着けたことを覚えておいでですか?」

「景氏……王太后の宮女だった?確か、小冬(しょうとう)と呼ばれていたわね」

「少し聞いたことがあるのですが、王太后の喪が明ける前に娘が生まれて、お怒りになった王后様が追い出したとか」

「その話ね…」

華陽夫人は手にしていた扇を座布団に向かって投げ捨てた。和之が言ったこの話は夫人も聞いたことがある。しかし、真意はいかがなものかと首を傾げてしまう。

何故なら、あの温和な王后が王の娘を生んだ宮女を追い出すわけがない。確かに、王は禁忌を犯した。だが、生まれた娘を容易く生母ごと捨てるわけがない。最悪、養女として下賜する道もある。

「夫人、もしでございます。柴尚宮の姪が、その娘であったら」

「嬛が王の娘?」

和之の言葉に散らかっていた積み木がまとまりを帯びていく。

もし、その話が本当ならば柴尚宮は彼女の身分を偽ったわけだ。しかし、柴尚宮が言っていた「力になる」という言葉は間違ってはいないだろう。

華陽夫人は寵姫と言えども子どもがいなかった。王子であれば太后に、王女であれば将軍の義母になれる。この肅の暗黙の了解として王女、つまり公主は将軍の妻として降嫁することになっていた。将軍は王族の婿という立場を得る代わりに王族を守る義務を帯びるのだ。

柴尚宮は景氏の娘である、嬛を養女にして将軍に嫁がせようとしたのではないか。

不意にそのように華陽夫人は思った。だが、公主でありながら追放されてしまった理由は思いつかなかった。

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