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二人の公主
華陽夫人は公主の顔を見つめた。公主の顔は不安に満ちている。夫人は公主を抱きしめた。この力のない公主を守らねばならない。しかも、相手が容華夫人や趙将軍となれば尚更である。
「お母様、私は戦わなくてはならないのですね……」
弱々しい声で公主が言った。華陽夫人は公主の体をはなして再び顔を見つめた。表情はまだ不安であったが、その瞳には力があった。
「段姫、直ぐに段将軍に連絡してちょうだい」
「かしこまりました」
段姫は立ち上がり綺羅殿を後にした。残った側室たちは公主を励ました。この側室たちは華陽夫人のような権力はない。しかし、彼女たちを励まし、知恵になることはできる。
容華夫人が表に出れない今、動いているのはその腹心だ。彼女の腹心とは芸史である。芸史が趙将軍と繋がっているのは確かであろう。ならば、こちらも同じ手を使うしかない。公主を今、動かせば容華夫人や鴻城公主の格好の的になる。かといって華陽夫人が動けば手の内をみせるようなものだ。和之に動いてもらうしかない。彼女なら信用できる。それに桜児もいる。この二人がいればある程度の動きは止められるだろう。




