1-69 せっかく区別がつくようになったのに
さとりの前に傀儡が立ちふさがる。
傀儡の両腕からは刃物がでている。
「ハル、分かっていると思うけど私は物理的に何も出来ないわ」
仮想画面で表示された小さな姉さんが話した。
「でも相手の行動パターンはこれまでのデータで予測できるわ。隙を突いてさとり自身を銃で撃って気絶させるのよ」
「分かったよ、姉さん!」
俺は傀儡に接近した。
傀儡の両腕からの攻撃を飛び込むように回避し、傀儡の両足を手錠で拘束する。
傀儡は驚くほど軽く、簡単に拘束することが出来た。
初めての試合では普通の人間のように考えていた為、俺の力では動かすことすらできないと思い込んでいた。
傀儡を一度運んだことがあったのでこの対策はすぐに思いついたものだった。
「今よ、ハル!」
そして俺はさとりを銃で撃った。頭を狙い気絶させようとした。能力者なら殴打程度のダメージだからだ。
しかしさとりの頭の一部がはじけ飛んだ。
人の肉片と機械の部品を飛ばしながら。
「何! どうしてだ?」
俺は取り乱していた。
俺の勝利者宣言がされていたがそんなものはかき消されるくらい俺は叫んでいた。
「しっかりしろ! 大丈夫か?」
あわてて倒れこんださとりに駆け寄った。
さとりの顔は機械が剥き出しになり無残な物になっていた。
俺はこんな物を見る為に顔の区別が着くようになりたかったわけではない。
ただ純粋に皆の顔が見たかっただけだ。
そしてさとりによって両手に手錠を掛けられた。
「……ハルさんは本当に優しすぎますね。これが私の受けた命令。死んでもハルさんを拘束することです」
「なんでもいいからしっかりしろ!姉さん、どうすれば助かるんだ?」
俺はもう拘束されたことなどどうでもよく、たださとりを助けたかった。
「ハル、御免なさい。私にはどうすることもできないわ……」
姉さんでも助けるすべは無かった。
「……いいんですよ。私はもう……。最後まで私を想ってくれてあり……がとう……」
そしてさとりは動かなくなってしまった。
俺はさとりを抱いたまま、呆然としていた。




