1-62 過去2
「神無月家は特異なケースとしてこれを見守りました。調理器具を与え料理の仕方を教えそれを食べさせ続けました。必要なら調味料や他の食材をも渡し、そうしたのです」
さとりは何も考えないようにする為か、感情を殺し淡々と続けた。
「しばらくしてハルさんは狂いました。能力も無く意味は無かったと思われました。しかし深雪さんの実験が成功しハルさんの前に姿を表すことで正気を取り戻しました。そして記憶の欠落はありましたが、そのまま別の実験体として使われることになります。……人を食すことで力は得られるのかどうかというものです」
人を人とも思わない、許されない実験だった。
「ハルさんの食べる物は神無月家から送られ管理されていました。ハルさんは何も知らずに食べ続けていたと思います。深雪さんが居なくなったことで不安定になり、過去に自分がしたことを瑠璃さんの実家で思い出したのでしょう。それは精神的に耐え切れることでは無かったと思われます」
楓は吐いてしまった。
前に晴彦の部屋で料理した物はもしかしたらと思ったのだ。
「ハルは能力が無かったはずよね。帝と戦っているあれは何?」
瑠璃が質問した。
「見えない物を日常的に見ることでそういう能力が鍛えられたのかもしれません。人を食すことに意味があったかどうかは何とも言えません。ただ楓さんとの試合でその兆候はあったと思います」
楓は何の事か分からないといった雰囲気だ。
「人に幻覚を見せるといっても体自体を動かすことはできません。後ろから押されれば、前に足を出す。刃物で刺されればそこに手を当てる。こういう簡単なことなら出来るかもしれませんが楓さんの攻撃を避けた時の様な、複雑な動きは普通できないはずです。深雪さんの幻覚を操る力とハルさんが創造した実際に存在し、戦ってくれるお姉さんの二つの力があったのだと思われます」
皆はこれまでの晴彦の事が分かったがとても理解できるようなことではなかった。
しかし決めなければならない。
晴彦をどうするかということを……。




