1-4 戦闘開始!
対戦相手、楓は刀を抜き両手で持って自身の前に構える。
ここは不用意に飛び込まず、距離をとって射撃をするのがいいだろう。銃と刀では射程が違いすぎる、的になってもらおう。
俺は銃をいきなりフルオートで全弾撃ちつくした。ちなみに銃は今日始めて撃つ、一発のつもりが全弾撃っちゃった。
楓は自分に命中する数発だけを刀ではじきそのまま前に詰め寄ってくる。
刀が俺の左肩に当たる瞬間、俺は懐に入れてあった包丁で刀をそらした。
姉さんの言いつけ通りに忘れ物をしなかったおかげだ。
楓は驚きつつも冷静に俺と距離を取って下がった。
「そんなの持ち歩いてるとか本物の変態さんだね! しかもなんか可愛い絵が書いてある子供用だし、本当にわけが分からないよ!」
何も言い返せなかったが、なんとか攻撃は防ぐことが出来た。
しかしもうこの手は使えない。
上手く刀に当てたつもりだったが包丁は真っ二つに折れてしまった。
もともとの強度の差もあるがやはり能力者としての差が大きすぎたのかもしれない。
野菜とかくっつかなくて結構便利だったのに!
「また変な物だされたら困るから……」
楓はなぜか更に下がり、刀を鞘に納め、手を柄に添えて構えを取った。
居合い斬りとかいうやつだろうか?
俺はその間に銃の弾倉を入れかえる。
先ほどより刀の間合いは広がりそうだが距離は始よりかなり開いている。
とても刀の届く範囲ではない。
余裕を持って銃を構え楓を撃とうとしたその時、制止の声が響いた。
「ハル! 左に避けて!」
撃つのを止め指示通りに左に回避行動を取る。
俺の右横を何かが通った気がした。
飛び道具だろうか。しかし後ろの壁にも別段変化は無い。
それどころか楓が動いたようには見えなかった。
「壁を良く見てみなさい、薄っすらと亀裂があるわ」
確かに後ろの壁を注意深く見ると亀裂があるように思えた。
俺なりにこの攻撃を考察する。
放つ手は見えなかったがスカートがなびいたのが見えた。
思わず中を見てしまう。
スパッツで何も見えないのにどうしても目が行ってしまう。
見えないのに見えて、やはり見えない。
途中で見ようとするものが変わるという幻惑効果まである恐ろしい技だ。
「ハル、馬鹿な考えは捨てて! この攻撃は飛ぶ斬撃、しかも斬撃は見えないわ」
馬鹿な俺の変わりに姉さんが相手の能力を教えてくれた。
やはり楓は能力者としての力が俺と全く違うのかもしれない。
「へぇ、今のを回避するのね! 情報共有系の感知能力かな?」
今のままではまずい。俺の運動神経ではあんなのを何度も回避できるか怪しい。
楓が余裕を見せている間にまた全弾銃を撃つ。
今度は俺にも楓が刀を抜いたところが見えた。太刀筋はまったく見えなかったが。
そしてすべての弾を居合いで斬り捨てたようだ。
一度しか抜いてないのになぜ全弾斬れるのだろう。
「僕は居合いで防いで見せたよ! 僕に攻撃が効かないってわかるかな?」
楓は余裕を見せ、勝利を確信したようにそう言った。
その隙に弾倉をいれかえ……やべ落とした。
「ハル落ち着いて! 相手は油断してるからゆっくりでも大丈夫よ!」
姉さんの励まし? で少しは落ち着きを取り戻せた、はずだ。
弾倉は一応入れ替えれた。
「リロードするってことはまだ戦うってことだね?」
「まぁ今度は僕の攻撃を防いでね!」
次はたぶん複数回、飛ぶ斬撃が来るはずだ。
「ハル!」
最後に聞こえたのは姉さんの声だった。