1-28 偽りの悪魔
「迂闊だったわ。貴方には見えていたのね……」
姉さんを中心に漆黒の空間に囲まれる。
その空間には帝、楓、さとり、瑠璃、俺、そして姉さんの六人しか居ない。
「空間歪曲? このような力、やはりお前が本当の能力者か」
「ハルを虐めたのは許してあげるから、このまま私たちのことを黙っていることは出来ない?」
「こちらにも事情がある。それはできない」
「ならきつめのお仕置きをしなければいけないわね。……言葉を話せなくなるほどの」
「強者の台詞だな。できるものならやって見ろ」
帝から先ほどよりも大きな赤い鳥と犬が放たれ、姉さんに鋭い爪と牙が襲い掛かる。
だが姉さんに触れる前に赤い獣たちが煙のように消え去る。
「俺の真似か? ならこれはどうだ」
先ほど銃弾を同じ様に消し去った帝が驚きの声をあげたが、怯まずに今度は龍を放つ。
これも姉さんに届く前に消え去った。
ただそこにいままでほとんど動かなかった帝が飛び込んできていた。
右手を突き出し、姉さんの前に当てる。
「燃え尽きろ」
接近した物すべてを燃やし尽くす……はずだったがその力が発動することは無かった。
帝は何も起こらなかったのが信じられないのか、驚愕の表情を浮かべる。
これまで一度も苦戦すらすることがなかった者には理解できないようだ。
ここまでずっと無表情だった姉さんが冷笑を浮かべる。
「この程度は涼しいくらいね。でも……中は暖かいわ」
姉さんの手は帝の体の中にあった。
「ぐふっ……かはっ……」
くぐもった声と血を吐き出す帝。
その顔は苦悶に歪んでいる。
逆に愉悦の表情の姉さんは帝の腹から内臓を取り出した。
そして始まる、俺と姉さんが大好きな――――食事の時間が。
長い長い時間が経った。もう何も聞こえない、雨の音も。
一体どうすればよかったのか。
「おなかすいたね、おねえちゃん」
「そうね、私もお腹が空いたわ」
「ちょこ、ぼくだけもらっちゃったもんね……」
「大丈夫、私は代わりの物を貰うわ」
「ぼく、たべるものなにももってないよ?」
「ハルを、食べるわ」
「えっ……」
「ごめんなさい、もう……、もう我慢できないわ」
「い、いや、いやあああ、やめ、やめて」
仲の良かった二人。それはもう戻らないのか。




