1-27 前哨(全焼?)戦
「マモナクシアイヲハジメマス」
「カイシセンマデ、サガッテクダサイ」
「ショウブ……ハジメ!」
この聞きなれた片言の声を俺はまた聞く為、瑠璃から教えてもらった切り札を始めに使った。
「俺の負けです。降参します。見逃してください。お願いします。お願いします。お願いします!」
誠心誠意をもって言えばきっと見逃してくれる、そう信じた。
「降伏は認めない。お前は一応俺と同じAランクの能力があるだろう? 少しくらい足掻いて見せろ」
帝により、静かにだがはっきりと告げられた。
俺は覚悟を決め、銃を構えた。
帝の前に無数の赤い鳥がどこからともなく現れる。
その鳥は燃えていて羽ばたくと同時に俺の方へ向かって襲い掛かる。
近くをそれが通っただけで物凄い熱さを感じる。
当たったらどれほどの熱さかと思うと足がすくんだ。
次は犬だろうか、四本足の赤い獣が地面を駆けながら近づいてくる。
火の創造主、これがAランク神の力か。
俺も同じAランクのはずだがまったく比べ物にならない。
銃を使い赤い動物たちは倒せるが圧倒的に数が多く、追い込まれる。
帝の体を狙ってもやはり体に当たる前に銃弾は煙のように消えてしまう。
凄い熱さで息をするのも辛く、胸が焼けるようだ。
「お前の相手はこれで最後だ。次があるからな」
そこで龍が現れた。
大きすぎてどう考えても避けきれない。
帝は俺を殺す気らしいな。
「ハル、こっちへ向かって!」
万事休すのところではやはり姉さんが助けてくれる。
龍が俺を焼き尽くそうと、視覚的にはその大きな口で食い殺そうと襲い掛かる。
だがその牙にかかることは無かった。
俺は女を盾にし、身を守っていた。
姉さんではない。
……瑠璃だ。
「……貴様は噂通り最低な奴みたいだな」
観客すらかまわず巻き込む帝が女一人の為に手を止めた。
「帝、もういいでしょう? お願いだから止めて」
瑠璃が帝を説得してくれるはずだ……。
「瑠璃、お前の言う事を聞くつもりは無い。そこをどけ」
二人の意見はかみ合わない。
説得が失敗したら、もう俺に手は残されていない。
「どうしてそんなにかわっちゃったの? 貴方は優しい人のはずよ」
「……説明するつもりは無い。力ずくで行く」
瑠璃が赤い獣にかまれ遠くへ連れられる。
燃え移っては居ないようだ。
そして俺は、龍の牙に掛かった。
「ぐあ、ああああああ……」
声がまともに出せない。
燃えさかる炎により地面をのたうちまわる。
俺は最後には声すら出せなくなり、意識を失いピクリとも動けなかった。
初めて俺以外の勝利者が、機械の声によって宣言をなされた。俺には聞こえなかったが。
楓、さとり、瑠璃が俺の元に駆けよる。
瑠璃は無事だったらしい。
負けておいてさらに巻き添えにするという最悪の事態だけは避けれた。
皆が口々に俺の名前を心配そうに叫んでいる。
「……次だ」
帝が歩み寄る。
「まだやろうっていうの? もう本当に止めて!」
瑠璃が必死に説得する。
「これからが本番だ。そいつがAランクだと思っていたが違うらしい。創造主がこんなに弱いわけが無い」
「そっちが本物の能力者だったのだな」
帝は見えないはずの姉さんに向かってそう言った。




