1-21 俺だけの
楓の提案で瑠璃の手作りのご飯をご馳走になることになった。
場所は俺の部屋。
いつの間にか楓もさとりもご馳走してもらうことにもなっていて、いっしょに行動する。
「わ、私料理はあまり得意じゃない」
という風に始めは拒んでいたが頼み込んだら最後には承諾してくれた。
食材をみんなで買いに行く。
こういうことは初めてでとても楽しかった。
「さとりちゃん、こっそりお菓子を籠に入れちゃ駄目よ!」
「ハル君も釣られてお菓子入れちゃ駄目だって!」
「って、瑠璃ちゃんは漢方の薬草やら怪しげな爬虫類の肉やら入れて何を作るつもりなの……」
楓の悲痛な叫びが響く。
「ハルは私以外と来ることが無かったけど、たまにはこういうのも良さそうね」
姉さんは喜んでくれた。俺も本当に楽しかった。会計が俺だったことを除いて。
お菓子買いすぎたかもしれん、これから節約しないとな。
部屋に着き、瑠璃が魔女みたいに怪しげな鍋を混ぜている後ろでいくつか質問された。
「神無月家って有名なんです?」
「それは僕も気になった!」
あまり説明したくなかったが友達二人の頼みだ断れない。
「マナを使えるのは人、能力者だけっていうのが一般的な考えだよな。マナを機械で使う、この不可能なことをずっと研究してる変わった家ってことで有名なんだよ」
そんな家の出身だったが俺は機械が苦手であまり好きじゃない。
機械の知識も興味も無かったのでそれ以上説明することも出来なかった。
そうこうしているうちに料理が出来たようだ。
「む、無理して食べなくてもいいわよ」
瑠璃がなぜか不安げに言ってくる。
濃い紫色で物凄い匂いのスープ? が出された。
「これはやばいかも?」
「私は遠慮しておきますね……」
「ハル、がんばって!」
どうも誰も食べる気がないらしい。確かに明らかに食べ物の色でも匂いでもないので当然か。
「俺に食べれない物は無い!」
食べることにすべてを捧げるつもりの俺に食べないという選択肢は無かった。
「ん、美味しいよ。おかわり!」
元気よく言った。本当はまずかった。人の食べる物の味ではない。
しかし無理矢理作らせた手前残すわけにいかん。材料も勿体無いし!
「ハル君って意外と勇気あるよね!」
「ハルさんの胃袋はAランクですね!」
「さすがハル、食べ物については無敵ね!」
口々に誉めてくれる。
「前に食べた人は死にかけて、毒殺で疑われたわ……」
殺人未遂ってこれですかもしかして? もう勘弁して下さい!
「少し自信がついたかも、また今度作ってあげてもいいわ!」
次は殺人になっちゃいますよ……。
俺が命を削って食べているときに聞き慣れた声が聞こえた。
「メッセージガトドキマシタ」
仮想画面で表示された小さな二頭身のマスコットキャラクターが手紙を持って踊っていた。
「音も仮想画面も他人に見えるようにしてるなんて、設定きちんとしときなさいよ」
瑠璃に注意されてしまった。
「そのキャラクターって、もしかして噂の姉さん? をイメージしてるの?」
この後はたぶん俺があまり聞いてほしくない質問が続くはずだ。
「詳しく聞きたかったんだけど、その姉さんって何? どこにいるの? 死んじゃったとか?」
楓とさとりはそれは言っちゃ駄目みたいな雰囲気だった。
もうみんな気づいている、気を使って何も言わなかっただけだ。
俺の姉さんは俺にしか見えていないってことを……。
雨はもう止んでしまいそうだ。
ほんの少し、ほんの少しだけ聞こえる。
「おなかすいたね、おねえちゃん」
「……」
「おなかすいたね、おねえちゃん?」
「……」
「おねえちゃん、おねえちゃん?」
「だ、だいじょうぶよ、すこしつかれただけよ……」
すでに悲しい運命は決まっていたのかもしれない……。




