1-19 過剰
「そうね、ハル。頑張りましょう。相手はもう攻撃してるわよ」
トランプのカードが宙に浮きながら大量に俺に向かって飛んできていた。
いつものように秘密兵器の動物の絵が描かれた可愛いまな板を出し防御した。
しかしまな板は無残にも切り裂かれ何の役にも立たなかった。
「ね、姉さん?」
「包丁フライパンときたからお約束として持ってこいって行っただけで効果はないわ!」
「……貴方の行動は本当に読めないわ……」
相手は呆れているようだ。油断とかしてくれたら助かるな。
そして先ほどのようにまたカードが飛んできた、さっきより少し早い。
回避を試みるが俺の服が破れ腕からは血が出ている。
たかがカードだが能力で強化しているのか切れ味抜群だ。
「貴方の攻略法はもう分かっている」
「点や線での攻撃はほとんど回避してしまう。だから面での攻撃で攻めさせてもらうわ」
縦二メートル、横三メートルほどの範囲にカードが均一に並び俺に向かって飛んでくる。
前、後、前、後。唯一の救いは飛んでくるカードの量が一定な事、多角的な同時攻撃が無い事だ。
じわりじわりと追い詰められる。俺に傷が少しずつ増えていく。
避けると同時に三、四発銃を撃ってみるが、瑠璃の手に持つカードで簡単に弾かれる。
銃弾を見切る目と弾く速さもすごいが恐るべきはそのカードの強度の方で銃弾でも傷一つ付いていない。
「カードとハルと相手が一直線になるように位置を取って!」
困ったときに姉さんはいつも助けてくれる。
俺の後から飛んでくるカードを半分喰らいながらギリギリのタイミングで銃を撃つ。
カードと銃の二つの攻撃が瑠璃を襲う。
だが飛んでいるカードは瑠璃の前でピタリと止まり、銃弾も手に持つカードで弾かれる。
「私がカード操作を誤るはずがないじゃない」
相手の余裕の台詞。ここで少し遅れて三つ目の攻撃が瑠璃を襲う。
襲うはずの無いカードが瑠璃の眼前に飛んでいった。
「そんな!」
始めのカード勝負のときにカードを一枚盗んでおいたのだ。
相手は驚きの声を上げるがカードは簡単に弾かれた。しかし瑠璃に一瞬の隙が出来る。
俺は残りの弾丸すべてを撃ちきった。
半分以上弾かれたが、数発は当たり瑠璃はくぐもった声を上げる。
「ハル、油断しないで! 撃ち続けて!」
俺はリロードし、さらに銃弾を撃ちつくす。
カードはもうただ浮いているだけだった。
さらにもう一度リロードし、銃を撃つ。容赦はしない、姉さんの言うことは絶対だ。
瑠璃はずっと苦悶の声を上げていたが途中からは聞こえなくなった。
俺はカードが落ちるまで繰り返し、繰り返し打ち続けた。
カードが落ちるとともに、もう聞きなれた俺の勝利が告げられた。




