1-16 本当の事だけど……
「ハル、起きて朝よ!」
「うーん……もうちょっとー……」
体が重い。最近怪我をしてばかりだし中々ハードだった。
結構しんどいので今日はギリギリまで寝とこう。
姉さんのふとももに顔を埋めながらそう決めた。
それはやわらかく最高の枕で、このまま永眠してもいい。
「ハル、ご飯よ!」
「おはよう姉さん。さぁ、ご飯だ!」
勢い良く飛び起きたがご飯を食べることはできなかった。
「ハル、騙して悪いんだけどもう三回戦に行かないと遅刻しちゃうわ!」
急いで試合場所に向かう途中に、楓とさとりの二人と合流した。
何時まで立っても来ない俺を迎えに来てくれていたのだ。
「ご、ごめん寝坊した」
「ハルさん急がないと送れちゃいますよ!」
「ハル君はいろいろ抜けてるなぁ!」
わざわざ迎えに来てくれたのは理由があった。
「次の対戦相手の事を少しだけど教えるね!」
なんとも頭の下がる事だった。
そして歩きながら説明が始まった。
「相手はとても素行の悪い人みたいだね」
自分はビルを真っ二つにしておいてとか思ったが今は言えない。
「詐欺で三回、恐喝で一回、殺人未遂で一回捕まってるよ」
え、何その犯罪者のプロフィール。俺は一体何と戦うんだ?
学校内では大抵のことが不問になるので入学前に行ったことなんだろう。能力者の学校へ入学すれば罪も一旦保留になるしな。
評価が上がれば罪が減刑されることもあるので相手は必死かもしれないな。
「以上だよ!」
楓の説明を聞いても、ただ単に不安になっただけだった。
「私からも少しですが情報があります。私が作った傀儡というか機械仕掛けの人形を相手に渡しています。試合で使用するかわかりませんが、もし使用したとしても戦闘能力はまったく無いので変に警戒しないほうが良いと思います」
さとりが作ったって聞いた時はびびったが、言われた通りに気にし過ぎないようにしよう。
「後、この手錠を差し上げます。並みの能力者には外せないと思います。ハルさんはお優しい方なので必要になるかもしれません」
俺は手錠を受け取る。これはさとりに足を向けて寝れないな。
「何か質問はありますか?」
「一つだけある」
「周りから変な目で見られるのは慣れているんだが、今日は一段と冷ややかな目で見られている気がするんだが?」
「えっ、その………」
さとりは顔を真っ赤にしてうつむいてしまった。
「この前の試合内容がどこかから漏れたみたい」
「幼女をお菓子で懐柔して、密室で拘束。辱めを与えたってことになってるね」
「ああ……」
落胆の声を上げる。完全な誤解だが、すべて事実だ。否定の仕様が無い。
俺もう駄目かも……。
「大丈夫よハル、私は信じているわ」
「姉さん、誤解だよ。俺は何もしていないってあの時見てたよね?」
楓とさとりがいつもの冷ややかな目で俺を見ている。
うん、これはいつもの周りから見られている目だ。
いつもと同じなのに嬉しくないのはいつものことすぎてもう自分でも何を言ってるのかわからなくなる。
なんとか遅刻せずに三回戦の試合会場に着くことが出来た。
考えをリセットするように訓練室の扉を開け中に入る。
「がんばってね!」
「応援してますね!」
少しだけ元気を貰って試合に挑んだ。




