1-12 膠着状態
俺はまず相手と距離をとった。
行動パターンを読まれてるとはいえ、遠距離からの攻撃を仕掛けてみるのが王道だろう。
「ハル、あなたがまだ気づいてないことがあるわ」
「なんだい姉さん?」
「女の子はお面を付けてるわよ! 夜店に売ってるみたいなの。うさぎさんね」
「姉さん以外は同じに見えるから気づいて無かったよ」
「つまりどっちが本人か傀儡かわからない? ってプロフィールに顔写真でてたし、女の子が本人だよね」
「そうなのよ、気づいてないのかしら。それとも何かほかに意味があるのかしら?」
「とりあえず、女の子の方を狙ってみるよ!」
威嚇射撃をする。とりあえずフルオートで全弾。
金属と金属がぶつかるような音が連続でする。
結果は女の子の前に面の男が立ち銃弾をすべて体で受けきっていた。
「いつから気づいていました?」
うさぎの面を投げ捨て、美濃さとりがそう問いかけた。
面は勢い良く俺の後方まで飛んで行く。
本当に賢さBランクなのかこいつ。
あ、頭脳は関係なくて能力の詳しさだけの判定だったかも。
「開始前にプロフィール見てるから、その時すでに……」
「その手がありましたか。なかなかやりますね」
「普通に考えたら先制攻撃しないと防御したらすぐにわかってしまうと思うぞ」
「本体が分からず、右往左往するところが見たかったのです。一回戦を見る限りもっと馬鹿だと思ってました」
つまりこの真面目なのに馬鹿っぽい子に俺はもっと馬鹿だと思われてたのか。
結構腹立つな、馬鹿だと思う奴に馬鹿にされるの。
「それでは本気で行かせて貰います!」
傀儡の腕から刃物が飛び出る。一回戦と同じくまた刃物ですか。
傀儡がこちらに飛び込んでくる。
傀儡とはまだ距離があったが体に衝撃を感じた。
それと同時に、パン!という音が聞こえる。
俺は前かがみに倒れこみ、床に手をつきながら何が起きたのかを考える。
さとりの手に銃は握られていない。
「あそこよ、ハル」
俺は姉さんの指差す後方を見る。
うさぎの面だ。そしてその影に銃があった。両方とも宙に浮いている。
離れたものを操作する力、傀儡を見ればよくわかる。その力で銃を操作したのだ。
通常重い物ほどマナで操作するのは難しくなる。銃と傀儡の二つを同時に操る事は凄い能力者だと言えるだろう。普通は己の肉体を強化を優先するので変っているとは言えるが。
そして俺の力では銃弾を耐えることはできない。
しかし俺はすぐに立ち上がり、先ほどのさとりと同じように勢い良く投げる。
背中から取り出したフライパンがさとりの目の前に投げられた。
「そ、そんな方法で防ぎますか。予知の力とは本当のようですね」
今朝、部屋から持ってきたものだ。姉さんの言うことは聞いておくものだ。
しかし銃弾を逸らしただけで銃の口径によっては簡単に貫通しちゃうので、良い子のみんなは真似しないでね。
ちなみに動物の絵が描かれた可愛いフライパンだ。銃弾で表面が大きく削られてしまって無残な姿になっていたが。
「ハル、気を引き締めましょう。相手は何をしてくるか分からないわ」
「そうだね、姉さん。油断せずに行くよ」
俺は近づいてくる傀儡の面を狙って銃弾を放った。
両腕でほとんどはじかれてしまったが、面を傷つけることはできた。しかし傀儡の動きは変わらなかった。特徴的な面だったので何かあると思ったがただの飾りのようだった。
そこからは生きた心地がしなかった。
傀儡は体中から刃物が飛び出し、その合間には銃弾が飛んでくる。
だが相手の銃弾が尽きてからは楓の連続斬りを避けきった俺には比較的余裕だった。
姉さんの言う通りに避けていただけだが。
しかし俺にそれほど余裕があるわけでもなく、さとり自身を銃で撃つことは傀儡に阻まれてできなかった。
俺と傀儡が戦い、姉さんとさとりが見守る変わった構図で戦いが続けられた。
どちらも決め手に掛け試合は長引いた。
そしてそのままかなりの時間が過ぎた。制限時間というものは無いのかもしれない。




