mission:11.逃亡
目玉がこちらを見ている。
信じられない光景が目の前にあった。
日常では全く見れない光景が今ここにある。
それが信じられなかった。
立ちすくむ六人の前に立ちはだかる四つ目の怪物。
その向こうにはオルビスの影。
咆哮は既に消え、耳も治った。
「聞こえるか!?皆!」
必死になって叫ぶアルヴォンの声が聞こえる。
「何とかな」
ここまで来ても冷静沈着なフォッズが答えた。
いくらなんでもこれは精神にも限界をもたらす。
「どうする…倒せないだろ…」
ジョージの不安が顔にも出た。
デビットが顔にしわを寄せる。
「強行突破、いや、逃げる」
「同じようなもんだ!」
ジョージが叫ぶ。
その時、化け物が一歩前に出た。
それに合わせて六人もあとすざりをする。
「どうしましょう!弾が足りるかどうか…」
ジョセフの発言にすぐさまアルヴォンが答えた。
「強行突破だ。出来るならな…」
「とりあえず、足止めに使うような物だけを使え!ここで弾を無駄にしたら俺達は…」
アルヴォンの強行突破意見に付け足すデビット。
化け物はそろそろ動きたくなったのか、体をうずかせている。
「おぉい、どうでもいいけど…近づいてきてるぞ…目を離すなよぉ」
ジョージが泣き声の混じった声で言う。
ついに化け物が手を振りかぶった。
その手を目掛けてマグナム拳銃を撃ち込むフォッズ。
手は怯む由も無く、フォッズに襲い掛かった。
「バカっ…」
アルヴォンの救援も虚しく、フォッズの体は宙に浮いた。
「フォツズ!大丈夫か!」
デビットが駆け寄るが、二回目の攻撃が来た。
手の動きを良く見て、アルヴォンがショットガンを撃った。
少し怯んだ様子を見せて、手を引っ込めた。
「今のうちに逃げろ!オルビスの大群は吹き飛ばせる武器で飛ばしていけ!」
アルヴォンが指示を出すと、四人が駆けて行った。
そして、手を押さえている化け物の隙をついてフォッズに駆け寄った。
「フォッス、フォッズ!無理するなバカ野郎!」
言葉を聞いて返すどころか目も開かないフォッズ。
そのうちに化け物は手を離した。
「くっ…」
フォッズを抱えて走り出したアルヴォン。
しかし重量がかかって思うように動けない。
化け物は足をかざす。
まずいと察知したアルヴォンは、フォッズには悪いと思ったが、フォッズを投げて飛ばし、
自分は飛び込んだ。
目の前で足が地面を響かせた。
「チクショウ」
アルヴォンが手榴弾を出して、ピンを抜いた。
抜いたと同時に化け物目掛けて精一杯飛ばした。
「喰らえぇぇ!」
手榴弾は見事命中し、化け物の胸の目が潰れた。
咆哮が聞こえる。
「ううっ!」
耳が聞こえなくなった。
それでも諦めず、走ったアルヴォン。
向こうでも、閃光が走る。
そして、爆発音。
それが終わると、今度は走る音が木々のざわめきと唸りに混じって聞こえてきた。
「無事にここを出るんだ、死ぬな!」
そう必死にフォッズに言い聞かせるアルヴォン。
頷きもせず、ただアルヴォンの背中で目を閉じていたフォツズ。
走る音が多いせいか、手榴弾で盲目になった化け物は脳内混乱を起こした。
「皆!」
アルヴォンの叫びが届き、四人の影が止まった。
「フォッズは!?」
真っ先にデビットがフォッズの事を聞く。
「先に脱出だ!」
アルヴォンの叫びで森林地帯を抜け出そうとする。
周りは木だらけだったが、次第に光が見える様になってきた。
しばらくすると雨が降って来た。
フォッズをなぐさめるのか、場の雰囲気に合わせたのか。
悲しげな雨の落ちる音が聞こえる。
その中で、盲目になった化け物は暴れていた。
訳が分からず、ただやみくもに突っ走っていった。
そう、敵も見方も区別無しで。
オルビスを蹴り飛ばしていって、長く太い腕を振って振って木々を降り倒していく。
そして…
化け物の目の前に、六人の影が写った―。