mission:9.警戒
やっとの事で続いていた長期戦が終わった。
それもいつ死ぬか分からない状況で。
奇跡としか言い様が無いだろう。
ディモール退治に成功し、一同は屋敷からの脱出を試みる。
「…なるほど、その古代からの魔界の住人が、さっきの奴って事か」
ジョージが納得し、うんうん、と首を縦に振った。
その横で額に汗を見せているフォッズが口を挟んだ。
「さっきの奴は載っていないのか?」
その質問にデビットが答えた。
「ああ、書いてあるのは、オルビス、ディガン、ダーガン、ダンガレッド、だ」
アルヴォンがそこで言った。
「それにしても千体か、すごい数だな」
「だが、いずれは居なくなる。生存者がいるかぎりな」
ルーズがアルヴォンに顔を向けて言った。
屋敷の中はいたって簡単な構造だった。
そのことが唯一の救いだっただろう。
案外簡単に進める事が出来た。
「おいおい…構造がチャチィぜ」
ジョージが肩を伸ばして呟いた。
「とりあえず、裏口ってとこを探さなくちゃな」
デビットが言った。
「裏口…ここか」
フォッズが言うと、みんなが驚き、その方向を向いた。
「何だ…ここかよっ!」
ジョージがつっこむ様に言い放った。
早速出ようとしたジョージを引き止めて、アルヴォンがドアを蹴飛ばして周囲を観察する。
何も居ない事を確認して、外に出る。
「ここは…川か?」
小川の綺麗な反射光に見とれたアルヴォンが言う。
「川か、この腐った村でも川は綺麗なもんだ」
ジョージが吐き捨てるように言った。
ついさっきまでの緊張さと真剣さが吹き飛んで、六人は警戒を捨てた。
それが命取りになってしまったのはこの後分かる。
ジョージが真っ先に走っていった。
油断を感じず。
「綺麗だなぁ〜」
ジョージの一言でデビットが笑ってしまった。
「ジョージでもそんな事を言うのか」
「バカにしてんのかい?」
その会話の途中で、安息は消された。
いきなり川底からオルビスが現れたのだ。
激しい水しぶきのせいで司会が悪く、ジョージの位置が把握出来ない。
「ジョージ!!大丈夫か!」
アルヴォンが叫び、走っていった。
「いきなりかよ…反則だ!!」
ジョージの叫び声と同時に銃声が響く。
ジョージの9ミリハンドガンが火を放った。
ようやく水しぶきが治まり、位置が見えた。
「そこか!!」
前の異型の怪物にマグナムを撃ち込むフォッズ。
オルビスは頭をかかえて川に沈んだ。
「やったか!?」
ルーズの確認の声の後、川から出てきたオルビス。
「しつこいぞ!!」
フォッズは近寄っていってショットガンの先をオルビスの頭に付けた。
オルビスは突然の出来事に動揺している。
「ぶっとべぇ!!」
フォッズのショットガンでオルビスの頭を粉砕した。
「やった…」
その安心の一言はオルビスにまた消された。
首が無いオルビスは、何とか体制を整えている。
が、視界が全く無いので、何処にいるかを察知できなかった。
「細胞だ!!」
アルヴォンが銃を構えて言った。
フォッズはそれに応えてサブマシンガンで中心核を狙った。
弾丸の雨が降った。
止むと同時にオルビスは倒れた。
「一体でこれだけか…苦しくなりそうだな」
デビットが言うと、オルビスは溶けていった。
全員が銃をしまう。
「これからは何もかもが危険だと思っていこう」
アルヴォンがそう全員に指示する。
「とりあえず、この川を下っていこう」
ルーズが下流を指差して言った。
少しでも早く行くため、移動速度を速めた。
「こんな村でも、ディモールたちが居なかったら綺麗だっただろうな」
ジョセフが一言こぼした。
それには皆答えなかった。
しばらく下って行くと、森が見えた。
「何ィ、今度は森かよ!!」
ジョージが文句を言う。
森と言っても、森林程度だったので、森よりは危険が無かった。
「仕方が無い、各自、警戒を保て」
アルヴォンが言うと、皆が頷く。
「よし、では行こう」
一同は森林へと向かった。