斜光
砕石の凸凹を埋める水分と同じものが、枕木の摩擦係数を低減させる。高炭素鋼は斜光を返して、底冷えと熱感とが湛えられている。左右運動を続ける体幹に連動して五本指の四肢が軌条を乗り越えてゆく。蜥蜴の向かう先は草叢だった。
破けた二次元コードが、突風に遵って着水する。「種類別アイスクリーム」のメタリック塗装。二次元コードの剥げたところから、ばさついた紙製品が顕現していた。草叢の奥に拡がる河口付近の川幅を、自動販売機専用アイスクリームの蓋は笹舟のように揺蕩う。
六〇〇メートル級の稜線が、川面にぼやける。やや赤みの差した黄色い嘴につつかれて、アイスの蓋が転覆した。鷺は待ち伏せののちに嘴へ魚を挟み、踵を返した。山は、幾許かの建物が点在する田畑の奥へ列なっている。僅かばかりの木立から、蝉の声が届けられる。
巻雲の散らばる空は大きい。シャーベットカラーに、海鳥が迷い込んでは帰っていく。
合成樹脂にあけられた穴が乾燥を助け、乗降場に設けられた四人分の椅子は、スクールバッグとジャージ姿を支えている。他に人の気配はなく、一人のポケットの中で、硬貨がジャラッと音を立てた。もう一人の手にも円錐型のパッケージが渡り、二人は並んで紙をむきはじめる。パッケージの残骸は自動販売機横のゴミ箱へ放られた。
架線のない単線区間。防犯カメラが堂々と吊られている。画鋲で留められたポスターは、交通系ICカードの利用可能エリアと、乗車証明書の取得方法を伝える。列車の接近を知らせる放送が届けられ、二人は立ち上がった。低音と同時にプシューと空気を振動させながら、二両編成の気動車が進入する。車両の湾曲部へせり出すように、ご当地アニメのキャラクターと台詞入りのコマが踊る。背景画は手前から、川、田園そして山々の構図だった。
ドアが開くと、二人はボックス席のほうへ向かった。イヤホンのケーブルがファスナーの隙間から伸びる。赤シートがぱらりと落ちた。




