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ドラゴンマスクより ーふたつのゴールー  作者: 福本 美憂


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29/29

律 鈴 瑠 僕

2029

どうも!ギリギリオーナー律でーす。

なかなか皆さんにいいご報告ができず、申し訳ない!

こんな弱小企業が、ここまで頑張れてるのは、みんなのおかげ!

WE参入、なかなか手強いよ。

まぁーそんな簡単じゃない。

地域に既に2チームあるわけだしね。

そうそう。ご報告!

その既にあるWEリーグチームに

また、うちのスター選手が移籍しました。

うちのペドリ、蒼!

2年連続、県リーグ得点王だもんねーそりゃ、見つかっちゃうよ。

瑠に続き2人目ですよ。

これはいいことだよね。

うちのチームはWEリーグレベルに選手を育てられるってことだもんね。

みんなに支援いただいた、うちのクラブ、プロ1号、蒼を今後もよろしく応援してやってください。

あいつもU20に選出されてるから、オリンピック出場は狙えると思う。

蒼が高1だった頃から、このクラブを通して応援してくれてるみんなには感慨深いっしょ?あいつが代表ユニ着るなんてさ。俺もさ・・・なんか嬉しくって。

泣いてねーよ。

俺の目標はまだ達成してねーし。

選手見送って、オーナーが泣くってだけじゃ、おわんないから。

WEリーグ参戦まで、俺、みんなにいいも悪いも伝えていくから。

これ見たみんなの中の誰かが「私でもできるんじゃない?」とか思ってくれてもいいなと思ってる。たくさんのオーナーと指導者とプレイヤーとで女子サッカーの土台を作りたいからさ。俺のSNSがサカつくの攻略本にしてくれたらいいと思う。

そんなわけで俺はこれからも夢の実現に向かってジタバタする俺を発信するから。

チャンネル登録、「いいね」よろしく!

女子サッカークラブ、ギリギリオーナー律でしたー!


そっかー腰の回転ねー

ありがとう、ドラゴンマスク。

ぷち。

・・・顔出ししてるのに、もう、ドラゴンマスクってことにする必要もないんだけどね。

コーチモードの時は「ドラゴンマスク」って呼ぶことで、一目おくことができる。

今回は、いつまで経っても伸びないロングキックをご指導いただいた。

世界レベルの現役選手にご指導いただくのは贅沢だよね。

でも、ロンクキックの精度に関しては身内の「ドラゴンマスク」に聞くのが牛丼より「早い上手い安い」だったりする。

私は相変わらず、ありがたいことにサッカー三昧だ。

高校生の頃のただ、プレイヤーに憧れてた私には想像もつかない未来。

「やればいいのに、サッカー」

あの時、あいつは言った。

「やった方が楽しいよな」

そうだね。サッカーはやった方が楽しい。

あの時の言葉が忘れられなくて、あの時の楽しさが忘れられなくて、

私は公園でリフティングを始めたんだよ。

そして、ドラゴンマスクが現れ、律と再会、瑠に出会い

私はここにいる。

今はコーチ兼任選手。

サッカーから離れる気はさらさらない。

笑っちゃうでしょ?

あの時「女子チームとか、入るの?」って聞かれて「入らない」って即答したよね。

チームスポーツだから、これから、引かなきゃいけない時がくる。

でも、それは引退じゃない。

あのいつか見た、おじいさんたちのように、次のステージに向かおうと思う。

いつまでも、どこまでも、とことんサッカーしてから、あいつのいるとこに行く。

サッカーのある人生は楽しい!


サッカーのある人生は楽しい。

楽しんでサッカーをするようになってから、サッカーの神様に愛されてる気がする。

日本代表に定着してから、サッカーができる環境が好転している。

個のスキルが高い選手とサッカーをすると、自分が引き上げられる気がするんだ。

「まだまだ、私は上手くなる」

そう思わせてくれる。

いつもの感覚より1歩先でトラップできた時、オフサイドギリギリで飛び出してシュートできた時、

もっと先が見たい。

そう、思う。

海外のチームからオファーが来た。

ドイツのカールスルーエというチームだ。

まだ、やり切ってないけど、ドイツに行こうと決めた。

やり切ったから行くんじゃなくて、やり切る途中にドイツがあったってこと。

もちろん、会いたいよ。

でも、約束は守る。



近くでプレイを見た、ザイオンはすごかった。

バネの塊のようなフィジカル。

「かなわねー」と思い知らされる。

でも、

それでも、食い下がりたい。

そんな思いで代表にこだわっていたら、代表選考のための代表戦で使ってもらえるようになった。

SNSで知ってもらえたサポーターも多く、僕は日本でも「Zuki Laser」と呼ばれてる。出場できた試合では、代表サポーターもコールしてくれるようになった。ドイツでも日本でも僕には味方がいてくれる。

瑠は、僕より先に日本代表になった。

結果は出してるけど、ドイツに来る気配はない。

僕も代表戦で日本に帰ることはあるけど、瑠には会っていない。

「やり切ったか?」と言われれば、まだだ。

W杯に出るまでは、出場して勝利に貢献するまでは・・・と思ってる。


でも、それが「やり切った」になるのか?


それって、どこまでやれば「やり切った」なんだろう。

僕たちって、こうやってずっと会えないのかもしれないな。

まぁ、僕が言った「約束」なんだけどね。



・・・LINEだ。

「2029年8月1日 集合! ドラゴンマスクより」


2029年8月1日 さいたま市桜木町公園

ここは、あいつと出会った公園。

そして、私がサッカーを始めた場所。

あちー

「鈴!アイス買ってきたー」

「律にしては気が利くじゃん」

「じゃ、やんねー」

「うそうそ。ありがたくいただきますよ」

うまっ

「ここさーあいつと出会った場所なんだよ」

「知ってる。あいつから聞いてた」

「あいつ、そんなこと話すんだw」

「LINE交換もしないで別れたって言うから『バカだなー』ってw」

「そうなんだ」

「あいつ、女の子の話なんかしないからさ」

「ふーん」

「なーに満足そうな顔してんだよ」

「そーゆーやつだったよね。あいつは」

「うん。そだな」

「サッカーしか見てない」

「そうそう。結果として似たもの夫婦だったな」

「律、お願いがあるんだわ」

「なんだよ」

「待ってたら言わないだろうから言うわ」

「なんだよ!プロポーズなんかしねーからなっ!」

「そりゃ、こっちのセリフだわ」

・・・・・・・テレてんなよ。ちょっと期待してんじゃん。

「私さーコーチに専念するわ」

え?「プレイヤーやめるってこと?」

「今のチームはね。別のチームを作ろうと思う」

「なるほどね。いよいよ死ぬまで戦うチーム作りか」

「うん。サッカー教室のシニアで人数集まりそうだからね」

「どこまで伸びるか見たかったけどなー」

「いやいや、これからだって私は真剣よ。伸びる気でやるって」

「仕事は?」

「できればこのまま定年まで・・・」

「承知」

「律、感謝してる」

「これからも頼りにしてちょ」

「うん。結婚はしてやらないけどね」

「こっちのセリフだわー!」


2029年8月1日 フランクフルト空港

やり切ったら会う約束だよな。

ここに集合ってことは「やり切った」ってこと?


「おーい!ドラゴンマスク!」

「はっ恥ずいから!その名で呼ぶな!」

「久しぶりだね」

「2年?くらいかな?」

「代表戦とか一方的に見てたけど。あ!チケットありがとう」

「いえいえ。こっちも代表戦、見てたよ。すげーじゃん」

「いやー、あの、ザイオンと戦っちゃうドラゴンマスクもすごい」

「なんだよそれ。怪獣映画じゃん」

・・・親子で発想が一緒だな・・・・

「なんかさー見てて眩しかったよ。ザイオンと並んでるんだもん」

眩しいとか言うなよ。テレるじゃん。

「ザイオン超えるのは、ハンパないと思うよ。フィジカルじゃ敵わない。負けたくないと思ってやってるけどね」

「Zuki, ich drücke dir die Daumen!」 「Zuki, ist das deine Freundin?」

空港なので声がかかる。手を挙げて軽く挨拶をする。

「よ!有名人。なんて言ってるの?」

「頑張れよとか・・・」

「とか?」

「彼女かい?ってさ」

瑠は手を挙げて日本語で言った。

「彼女でーす。それと・・・」

それと?

「カールスルーエの選手でーす。よろしくー」

「ええええええええっ!」

「うん。オファーもらって受けた」

「それできたの?」

「そう、それで来た」イタズラっぽく笑った。

やっぱ笑った瑠はいい。

「やり切ろうと思ったら、途中にドイツがあったw」

「なんか、交差点みたいだな」

「うん。だからここで会うのもありかなって。サッカー以外は、深くも広くも先も考えてないで、ここに立ってるから」

・・・さすが瑠だ・・・

「じゃ、とりあえずクラブまで案内するよwいこ!」

「ありがと!助かったー」

瑠の荷物を押して、瑠の隣を歩く。

これからのことに目を輝かせる瑠は、うん、いい。

瑠はこうでなくちゃ。


ドラゴンマスクはいつだって私を助けてくれる。

だから大丈夫。


私たちのサッカーは終わらない。

最後まで読んでいただきありがとうございました。


ふたつのゴールは僕と瑠の「極めていく昇り詰めるゴール」と鈴と律の「やり続ける永遠のゴール」

色々な楽しみ方があっていい。「やる」「みる」「サポートする」「関わって生きる」好きだったら、どんな方法でもいいと思ってる私です。

ちなみに・・・

僕、鈴の姓は、「鈴」(りん)とZukiズキの響きがいいなと思って「鈴木」にしたのですが、日本代表GKにとんでもない壁「彩艶」の姓が「鈴木」であることを忘れてて、W杯中悩みました・・・

律は、実際のサッカーコーチがモデル。

るぅは、チームメイトだった2人をモデルに「顔に泥をつけ返した」も実話だったりします。

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