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ドラゴンマスクより ーふたつのゴールー  作者: 福本 美憂


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20/29

蒼(あお)

試合終了後、グランドの片付けをしてた。

やらされるんじゃなくて、自分でやりたかった。

一年生だからって理由もあるんだけど、早く帰って練習したかったんだ。

先輩たちの試合、早くあの中に入りたい。


ジュニアユースからU−18に上がる時、高校サッカーと両立できるって知ったけど、どっちが早く試合に出られるかって考えて、高校サッカー1本にした。ママもパパも「もったいない」って言った。ずっとサッカーの支援してくれてたから、相談もしないで決めたことは、ホント、ごめんなさい。だけど、高校の監督も私を育てるって言ってくれたし、高校なら試合にすぐ出られるって思ってたんだ。並ぶのとか、順番待つの嫌なんだよね。ラーメン屋さんだって2人並んでたら、違う店探すってタイプだから。


でも、現実はなかなか難しい。


ラーメン屋さんと一緒でさ。別の店を探すより、そこで並んで待った方が早かったでしょ?ってママに言われた。

でもさ、ここは自分で探した場所だから、練習しながら待つよ、ママ。


片付けが終わると、監督に呼ばれた。


「プロ契約の話がきたんだ。お前の好きな、瑠のいたチーム」


まじ?!うそ!


「WEリーグ目指して今、作ってるクラブで、瑠の代わりを探してるらしいよ」

「すぐ、試合に出られるってことですか?!」

「お前次第だろうけど、こっちと両立もできるし、クラブで力をつけて、2年生になったらうちの主軸になればいい。気持ちがあったら、ご両親に話すから」

「監督!私、行きたいです!」

「うん。お前ならそう言うと思ったよw」


この名刺のチームは、Youtubeで有名だから知ってた。

ギリギリオーナーがやってる貧乏チームだ。


でも、県リーグ得点王の瑠さんはずっとみてた。すっごいストライカーがいるからとパパに言われてみに行った試合に瑠さんはいたんだ。パパはプレイスタイルが私に似てるから見せたかったって言ってたけど、想像の100倍、かっこよかった!今でも、モチロン大好きな選手だ。その選手がいたチーム。


プロってことはお金もらえるってこと?

あのギリギリオーナーのチームで?お金、私に使っちゃうの?


うちのパパ、社長なんだけどw


試合に出るならパパが送迎してくれるし、電車賃だっていらない。瑠さんの代わりなんてなれないけど、あんなプレイをしてみたい。何より試合に出たい。

ママとパパが監督から今後のプランを聞いて賛成してくれた。うちのパパとママは、私が決めたことには意見はするけど、反対はしない。

いつだって私の味方なんだよね。ありがたい。


クラブの練習の送迎は遅くなるからってパパがタクシーを呼んでる。そーゆーとこだけ過保護だけどね。


オーナーの律は、Youtubeの通りの人だった。


「お、きたな〜赤の25番!期待してるぞ!」

「よろしくお願いします」


練習初日はちゃんと挨拶して、仲間に入れてもらおうと思った。今時、お嬢様はわがままとかいう設定は昭和だし、チームスポーツって、そこ大事じゃない?早いとこ連携とって、スタメン取りたいし。


なのに、私はやらかした。


「おばさん、選手なの?」キャプテンに言ってしまった。


瑠さんが抜けて、キャプテンを引き継いだりんさんは、瑠さんの親友で、パパが言うには「瑠さんの良さを引き出すプレイヤー」だそうで、ってことは、私が1番連携をとらなきゃいけない人だった。


私は時々、そんなことをやらかしてしまう。


今は、高校1年生だからって、先輩たちにも「可愛い失敗」ってみてもらってるけど、ここは社会人のクラブ、それもプロ契約の選手なだからちゃんとしなきゃと思ってたのになー。でも、正直なのも私の良いところなんで、気持ちはちゃんと伝えた。


「鈴さん、私はおばさんが選手?って思っただけで、バカにはしてないから。安藤とか菅澤だって、今は私には叶わない。でも、すぐに追い越してやる」


「蒼、あんた今、安藤、菅澤をおばさんの仲間に入れたのわかってる?」

鈴は腹を抱えて笑ってる。


!!!!!!!こーゆーとこなんだよね、私・・・・・


私のそんなところを笑い飛ばしてくれる。鈴は、おばさんじゃなくて、大人だ。

そう言ったら「フォローになってない」

みんなも笑ってくれた。

「蒼は悪気ないもんね」

「悪気なく爆弾落とすタイプだけどね」

そう言って笑いながらボールを蹴り始める先輩たち。


……よし。

このチームで、絶対スタメンを取る。それも最速で!


私は昔から、口より足の方が得意だから。

「私も鈴って呼んでいいの?」

「当たり前じゃん。腹に力入れて、『リーーーーん!』ってボール呼びなよw」

「わかった!」

楽しくなりそう!


明日につづく

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