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俺の王子様-3lover-【新エピソード&加筆修正版】  作者: 三愛 紫月


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9/10

待ってよ、王子様

 同窓会の会場を後にした。

 入り口で待っていた秋帆君と一緒に合流し、桜並木を3人で並んで歩く。


 スーツ姿が映えている2人は、本当に俺の王子様だ。


「はぁーー、スッキリした」


 心春君は、嬉しそうにニコニコ顔で笑う。


「お前は、やりすぎな」


 秋帆君は、心春君に怒って言った。


「ごめんね、だけど、ほら、もう我慢できなくて」

「約束ちゃうやんけ、振り向かしてから言うって。言ってたんちゃうかったんか」

「わかってる、ごめんね。だけど、もう、気持ちを押さえられなかった」


 心春君は、秋帆君の言葉に悲しそうに俯いた。


「あのさ、2人ってホンマに俺が好きなん?」


 交互に2人を見つめてから、俺は立ち止まって聞いてみた。


「ハハハ、欲しがるなーー」


 秋帆君は、俺の頭をくしゃくしゃと撫でて笑う。


「好きだよ。中学生の頃からずっと……。美月君が大好きだよ」


 心春君が柔らかく笑いながら俺を見つめる。

 その目に見つめられて、チクッと胸の奥が痛んだ。


「俺は、高二の夏に美月君と女の子が歩いてるんを見たんや。そっから、自分の気持ちが押さえられへんくなってしもて。それからはずっと好きや」


 秋帆君も、俺に笑いかける。


 まさか、中学の時の人気者2人が俺を好きだなんて信じられなかった。

 夢でも見ているのだれやうか?


「嫌悪感あるんやろ?大丈夫、大丈夫。俺等の告白なんて無視したらええんやから」


 秋帆君の言葉に、胸の奥がズキズキする。

 だけど、何で?

 さっきから痛みが、走るのはなぜだろう?


「そうそう。僕は、秋帆とゆるい付き合いを続けて行くから、大丈夫、大丈夫。大人になった美月君に会えてよかったよ」


 心春君の言葉に、さらにキリキリと胸に痛みが走った。

 なんでだろう?

 なんで、こんなに。


「じゃあな。また、どっかでいつか会おうや」


 またっていつの話?

 20年も会っていなかったのに、この先、いつ会えるん?


「バイバイ」


 心春君と秋帆君は、桜並木を仲良く笑いながら歩いて行く。

 俺は、足が固まって追いかけられない、動けない。


「ほら、心春。口から血いでとるからじっとせいや」

「痛いからやだよ」

「ほら、絆創膏だして、貼ったるから」

「消毒は?」

「そんなもん、いらんやろ」

「もーー、秋帆は乱暴だな」



 せっかく会えたのに……。

 2人が、消えて行っちゃう。

 2人が、見えなくなっちゃう。


 だけど、足が動かない。

 それに、さっきより胸が重くて痛くて動けない。



「ここの桜だけは、綺麗だね」

「俺も、標準語話そうかな」

「教えてあげようか?」

「そやな、わるないかもな」


 

 早くしないと。

 早く追いかけないと。

 いなくなっちゃう。


 いなくなっちゃう。

 

 2人がいなくなっちゃう。


 ちゃんと気持ちを言ってくれたのに……。

 俺は、まだ何も伝えてないのに……。


「待って」


 振り絞るようにめちゃくちゃ大声を出して叫ぶ。


 俺の声が聞こえた2人は、足を止めてくれる。


「なんやーー?どないしたんや?」


 秋帆君が、大きな声で叫んでくれる。


 涙が目の前を覆って、滲んで全部が見えない。


「あのね、あのね」

「うん」


 もう、見えないよ。


 涙で前が、見えないよ。


 でも、言わなくちゃ


 言わなくちゃ



「待ってよ、俺の王子様」


 ギュッて、後ろと前から抱き締められる感覚がした。


ーーえっ?


「そんな顔したらもっと愛してまうやんか」


 耳元で、そう言われる。


「とめられなくなってしまうよ。」


 優しい声が聞こえる。


「ごめん、変な事言ってしもたな。心春、ハンカチ」

「うん、はい。涙拭いて」

「じゃあな。ちゃんと幸せになるんやで!もう、あの時を引きずらんでいいようになったやろ?」

「さっきは俺の為に、みんなにうちあけてくれたん?」


 俺の涙を心春君が手で優しく拭ってくれる。


「あんな嫌な思いをずっとしてたのに、ちゃんと守れなくてごめんね。でも、美月君は幸せになっていいんだよ。これ以上苦しまなくたっていいんだよ」


 心春君は、ポケットから取り出したハンカチで優しく涙を拭ってくれる。


「心春、あんまりおったら俺等もあいつらみたいなるから」

「うん、わかってる。じゃあね」

「じゃあな」


 2人は、俺を置いてまた歩きだしてしまった。


「何で?聞いてなかったん?」


 もう、視界はクリアだ。

 俺の目に2人の姿がしっかりと映る。

 だから俺は、もう一度2人に声をかける。


「なに?」


 心春君が、聞いてくる。


「さっき、言うたやん。待って、俺の王子様って、言うたやん。聞こえてなかったん?2回もいうの恥ずかしいやん」


 顔がいっきに熱くなる。

 全身が心臓になったみたいに恥ずかしい。

 心臓がドキドキする。

 顔から火が出てるのかって思うぐらい熱いのがわかる。

 そんな俺の顔を秋帆君が近づいて覗いてきた。


「それって、どういう意味なん?」


 覗き込んできた秋帆君に言われる。


「わからへん。わからへんけど、さっき助けられた時も会場から引っ張られた時も、王子様に連れていかれたお姫様みたいに自分の事を思った。そやから、2人は俺の王子様なんや。だから、2人が見えんなったら悲しなるし。2人が、いなくなったら苦しなる。今は、それしか答えられへん」


 今は、それしかわからへん。

 涙が止まらなくなった。

 拭っても、拭っても涙はどんどんあふれてくる。


 そしてまた、俺の視界を塞いでいく。

 返事が怖い。

 怖いけど聞きたい。

 

 だってまた、ヒーローに会えんくなるんは嫌や。

 どんな形でもいいから2人と繋がっときたい。

 俺は、もう。

 2人を失いたくないんや。

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