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俺の王子様-3lover-【新エピソード&加筆修正版】  作者: 三愛 紫月


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6/10

同窓会

「みっくん、場所どこやったっけ?」


 おかんの言葉に俺はポケットからハガキを取り出して見せた。


「ここやったら、この駅であってるわ」


 駅について電車から降りる。

 さくらの名所というだけあって、駅にはさくらの文字がついている。


 確か、引っ越す前に変わったはずだ。

 改札を抜けると、おかんは会場まで俺を案内してくれる。


「お花見、言うて、この会場から花見に行くだけやろか?」


 桜の咲いている道を通り抜けながら並んで歩く。

 おかんが言うように、お花見と言ったら外だよなとは思ったけど。

 

 俺は「しらん」と言い放った。


 おかんは気にする素振りも見せずにハガキを見ながら歩いている。


「あったわ、ここやわ」


 同窓会会場になる建物をおかんは指差した。



「みっくん、一人でいける?」


 心配と不安が織り混ざった顔をしながらおかんは俺に問いかける。



「俺はもうガキやないで、35や」

「そうか、ほなお母ちゃんそこで少しだけ待っとくから……行ってみてアカンかったらすぐに電話するんやで!わかった?」

「わかった」


 心配させないように強がって言ったけれど、ほんとうは不安だった。

 だけど、おかんに心配かけるわけにはいかん。

 

 堂々とした素振りを見せて俺は、おかんからハガキをとって歩き出した。


 もう、35や。

 こんなんたいしたことない。

 大丈夫。

 俺かて、ちゃんと働いてんねんから。


 建物の中に入ると受付の人がいた。

 俺が近づくと「名前は何ですか?」と聞いてくる。



流川るかわ美月です。」

「流川さんですね、こちらにお名前をご記入ください」


 受付の女子が、怪訝な顔を一瞬したのを俺は見逃さなかった。

 

 名前を記入してペンを置く。


「これ、どうぞ」


 受付の人に流川と記入されている名札を渡される。

 それを見ながら、一応来るとは思われていたんだと思った。


「どうも」


 まだ、名前を書いただけなのに、すごく疲れた。

 会場に入っていくと、たくさんの同級生がもう来ていた。

 みんな、そんなに会いたいんやな。

 キョロキョロする俺の耳に周りの声が聞こえてくる。



「あれって流川やん」

「やば、ようこれたよな」

「あいつって、ホモやろ?」

「そうやろ。だって、まだ、結婚とかもしてへんよな」

「童貞やけど尻は卒業したらしいで」

「うそ。ヤバない。何か病気あるんちゃう?」

「きもいな、あいつ」

「何しにきたんや」

「相手探しに来たんちゃう」

「うわーー。ヤバ」


 みんなは俺を見ながら、コチョコチョと話してるつもりだけれど、全て聞こえている。

 その場に居たくない気持ちがいっきに襲ってくる。


 やっぱり、俺。

 無理かもしれん。


 やっぱ、おかんに電話しよう。


 急いで外に出ようとした俺の前に現れた男。


 「なつかしいな。また、会えるなんて嬉しいわ」と艶やかな声で言いながら俺の顎を掴んでくる。


 それを見ながら、ニタニタ笑う5人組。

 こいつらの顔なんてみたくなかった。

 一生会いたくない存在や。

 いや、俺かて大人になったんや。

 あの頃とは違うやろ。

 俺かて強くなったんや。


「やめろ」


 俺は、顎に置かれている手を掴んだ。


「元気しとった?ゲイになったって聞いたけど」


 5人は俺を見ながらゲラゲラ笑い、周囲の同級生達は「やっぱりそうなんや」という言葉と共に冷たい視線を浴びせてくる。

 あの頃と変わらない視線が強く突き刺さった。

 そうだ。

 俺は、この視線に耐えられなかったのを思い出した。



「なってないわ」


 俺は、心臓がちぎれそうな程痛くなるのを堪えながら叫んだ。


「残念やな。俺は、あの日々からどっちもいけるようになったのに」


 クスクスと笑いながら耳元で灰原が囁いてきた。


 こいつの声を忘れたはずだったのに……。

 何で、俺の耳はこの声をしっかり覚えているんや。

 

 灰原の声に、反射的に気持ち悪くなった。

 

 ヤバい、吐き気がする。

 くらくらと目眩までしてきた。


 俺は、会場から出てトイレへと駆け出した。


「最悪や」


 トイレの鏡に映る俺を見ると今にも泣きそうな顔をしている。


 こんなとこで泣きたくない。

 俺は、泣くのを必死で我慢するように顔に力を入れた。


「なんで、逃げるん?」


 嫌悪感が身体中を駆け巡る声が聞こえて、怯えながらトイレの入り口を見る。

 全身が固まっていくのがわかる。

 トイレに入ってきたのは、灰原だった。

 逃げたい、逃げたら負けや。

 


「なんの用や」


 強がって大きな声を出す。

 だけど、ここにはいたくない。

 さっさと出なアカン。

 トイレから出ていこうとする俺の腕を灰原は掴んで、簡単に個室トイレの中に引っ張って行く。


 何で。

 俺かて強くなったはずや。

 なのに、何で。


 ガチャ……。


 個室トイレの鍵を閉めた灰原は、俺を便器の上に座らせた。


 灰原の力に敵わへんのやない。

 灰原と向き合うとあの頃を思い出して体に力が入らなくなるせいや。

 何をされるかわからないから俺は必死で足を踏ん張り立ち上がろうとするけれど、灰原に肩を押さえつけられてしまう。


「懐かしいな。興奮するやろ?」

「まったく、せーへん」


 その言葉に腹を立てたのか灰原は俺の胸ぐらを掴んで立たせた。

 狭いトイレの壁に押しつけられる。


「あれから、いろんなやつとやったけどな。美月のこの顔がずっーーと忘れられへんかったんやで」


 灰原は嬉しそうに笑いながら俺の顔を掴む。


「この目に興奮するねん」


 俺に睨み付けられて、灰原はニタニタと嬉しそうに笑う。


 狂ってる、気持ち悪い、吐き気がする。


 灰原こいつに会ったら、一発殴るつもりでいたのに、昔の出来事がフラッシュバックして俺は女みたいに震える体を止められない。


「美月かて欲しかったやろ?俺の事」


 灰原の問いかけに、首を横に振るだけで精一杯だ。


「嘘つけ。俺は、こんなに美月が欲しかったんやで。大人になったから、あの時より俺かてうまくなったと思うねん。試してみたいやろ?」


 俺は、さらに首を横に振る。

 

 逃げたいのに、逃げられない。

 灰原は、俺のズボンの上に指を這わしてくる。


 体が固まってるせいで、うまく力が入らない。


「やめて……くれ」


 やっとの思いで、絞り出せた言葉はそれだけだった。


「やめへんよ。俺は、ずっと、待ってたんやから……美月のこと」


 灰原はうっとりするような目で俺を見つめてから、「ハァーー」と首元に息を吹き掛けてきた後で、俺の唇にキスをしてきた。


 やめてくれ。

 離してくれ。

 叫びたいのに声が出ない。

 

 あの頃と違ってこいつは、確実に俺をやることが出来る。

 それぐらい灰原の力は強く振りほどくことが出来ない。


 それに、あの頃と違って、こんな俺を助けてくれるヒーローはどこにもいない。


 もう何も考えたくない。


 抵抗しなくなったと思ったのか、灰原は軽いキスを通り越し、ゆっくりと舌を入れてくる。


 酷い。 

 最低だ。

 

 俺の目から涙がゆっくりと流れていく。

 灰原の舌を噛み切ってやりたい。

 俺の下半身を這う手を切り落としてやりたい。


 だけど、何の抵抗も出来ない体。

 最悪や。

 俺は、またこうやって。

 あの頃と変わらんままなんや。



 手際よく、灰原がカチャカチャとズボンのベルトをはずしていき、チャックがゆっくり下ろされてスルッとズボンが下に落ちる。


 俺は、パンツだけになってしまった。


「やっぱり、ちゃんと俺を受け入れてるんやないの」


 灰原は嬉しそうに笑うと、またキスをしてくる。


 こんなに嫌やのに……何でそんな事になるねん。


 灰原がパンツの中にゆっくりと手を入れてこようとした瞬間だった。



ーーコンコン


ーーコンコン


 誰かがやってきて、トイレの扉を叩く。


「気分悪いんですか?」


ーーゴンゴン


ーーゴンゴン


 さっきよりノックをする音が強くなる。


「救急車、呼びましょか?」


 灰原はその声に苛立って、俺から離れた。


 イライラしているから離れる時に、ギリっと強く唇を噛まれた。


 いた……。

 痛いのに声が出んかった。


ガチャ……。


「気分なんて、わるないけど」


 噛まれた唇から、血がポタポタと流れてくる。


 灰原にドアを開けられた俺は、急いでズボンをあげた。


 恥ずかしい、今のをこの人に見られた。


 最悪だ。


 また、軽蔑される。


 あの日、森野達が俺のことを見て言った言葉を思い出した。


「あいつ、感じてんの?」

「きもっ、男にキスされてんのに。ヤバいへきやん」

「ハハハ」


 思い出しただけで、自然と涙が流れる。


 灰原は苛立ちながら、俺を置いて個室トイレから出る。


 よかった。

 恥ずかしいけど。

 灰原が出て行ってくれて、俺はホッとしていた。


 やられんでよかった。

 

 ホッとしたからか、力が入らんくなって、足がカタカタと震えだす。

 最悪や。

 また、みんなの笑いもんになる。

 軽蔑の目を向けられる。

 

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