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俺の王子様-3lover-【新エピソード&加筆修正版】  作者: 三愛 紫月


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3/10

おかんとの会話

「ただいま」


 家に帰るとおかんが何故か同窓会の紙を持って立っていた。


「なんやねん」


 俺は、部屋に入って鞄を置いて出てきた。


「手洗い、うがい」

「はい、はい」

「はいは、一回」

「もーー、うっさいな」


 おかんは、イライラしながらリビングに行く。

 俺は、洗面所で手洗いうがいをしてからリビングに向かった。


「あんた、これ隠してたやろ?」

「また、勝手に人の部屋にはいったんか?」


 イライラしながら話す俺を見つめながら、おかんもイライラしている。


「当たり前や、あんたが隠し事するからや」

「そうですか」


 コンビニの袋からチーカマを取り出して袋を開けるとすぐに口に加えて食べた。

 プシュっとビールを開けて飲む俺を悲しそうな顔でおかんは見ている。


「おかんな、あんたの結婚も子供も、とっくに諦めてんねん。わかるやろ?」

「うん」

「せやけどな、誰かな一緒に居てくれる人だけでも見つけてきーーや」


 寂しそうに目を伏せながらおかんが話すけれど、俺の気持ちは1ミリも動くことはない。


「俺は、絶対、あの街には行かへんで」

「行け」

「いやや」


 チーカマをまた開けて、俺は食べる。


「なんで、そんなん言うんよ」

「なんでも何もないやろ?死んだおとんが名前間違ったからこんな人生になったんや」

「人のせいにすな」


 おかんは、同窓会のハガキで俺の頭を殴ってくる。


「これでも、私らかて悪いと思ってんねんで」


 おかんは、俺のチーカマを1本取り出して勝手に食べ始めた。


「あっちは、毎日辛い言うてたからな。あれ、ホンマに事故やったんかな?お母ちゃんは、自殺やないか思ってるんやで」

「なに、言うてんねん、あれは事故や」


 おかんの言葉に俺は、ビールを飲み干す。


「人生かえてきーよ。あの子はもう無理なんやから。あんただけでも……」


 チーカマを食べ終わったおかんは、姉ちゃんの仏壇の前に行く。


 おかんの気持ちは、俺だってよくわかっている。


 残された俺だけでも、幸せになって欲しいと願っていることも……。


 俺には、ふたりの姉がいた。

 ひとりは、お城が好きな姉ちゃんで。

 もうひとりは、俺と双子の姉ちゃんだ。


 双子の姉ちゃんは、小学校を卒業し中学校にあがる前に、車にひかれて亡くなった。

 理由は、たぶん。 

 おとんが、出生届けを出す時に俺と姉ちゃんの名前を間違ったからだと思っている。


 おとんが間違ったせいで、俺の名前は美月になって、姉ちゃんの名前は虎太朗こたろうになった。


 なんでやねん。

 そんなアホな話があるか?


 おとんは、それに気づいてから激しく後悔をしたらしい。 

 どうすればいいか必死でおとんなりに調べたらしいんやけど。


 直し方は結局わからなかったらしい。

 小学校に上がる時に、俺達の担任の先生に必死に説明したらしいんやけど無理やった。


 おとんは、俺と姉ちゃんに「すまん」と何度も謝った。

 

 謝って済む問題やないし。 

 おとんを許せるわけはないけど。

 名前を変えれない以上は、受け入れるしかないと俺も姉ちゃんも諦めることにした。


 諦めていたはずの姉ちゃんが、名前を大嫌いになったのは、5年生の時に好きな人に告白した時だ。


「かわいいとは思うけど、男と付き合ってるって思われたくないからいやや。ごめん」


 大好きな人に名前の事でフラレたのだ。


 その話を姉ちゃんから聞いた時、俺は、全部。

 おとんのせいやと思った。


 それからおとんは、ことあるごとに俺達からぐちぐち言われたり、嫌味を聞いたりとストレスをさんざん受けた。

 だから、姉ちゃんが亡くなって、一周忌を済ませた翌日におとんは突然死んだ。

 


「名前、変える方法あったんやないん?」

「そんなん、今さら言われてもわからんかったから。あの頃のお母ちゃん達は……今みたいには…。スマホでサクサク調べられてたら生きてたんかな?こっちゃん」


 おかんは、姉ちゃんの仏壇の前に座りながら俺の方を見て泣いた。


「わからん。事故やから」


 おかんの涙を見るのが嫌な俺は、目をそらして2本目のビールを開ける。


「みっくんかて、嫌な思いしたんやろ?今かて」

「しらん」


 新しいチーカマを取り出して俺は食べる。

 おかんは、仏壇の前から目の前の椅子にやって来た。


「昔は、何でも言うてくれたのに今は何にも話してくれへんくなったやん」


 おかんは立ち上がると、冷蔵庫からビールを取り出して飲み始める。


「お母ちゃん、みっくんには幸せになって欲しいだけやで。誰かを愛して欲しいだけやで。他には、何もいらんねんで」


 お酒を口にしたせいか、おかんはさっきよりも泣きだしてしまった。

 俺は、おかんが泣くのが苦手や。


「奈美ちゃんもこっちゃんもみっくんも、お父ちゃんに似て、目鼻立ちがくっきりして綺麗な顔してるやろ。そんな綺麗な顔してんのに勿体無いで。人生楽しまなな」


 おかんは目の前の椅子に戻ってくると、また同窓会のハガキを俺に差し出してきた。

 

「だから、いかへんって」


 俺は、同窓会のハガキを無視して、新しいチーカマを開けてまた食べた。

 おかんは、知らんかも知れへんけど。

 俺は、あの街にいい思い出なんかないねん。

 だから、行きたくない

 さっきから、何度もハガキをこっちに見せてきて。


 おかんかて、姉ちゃんもおとんもあの街で亡くなってんのに、なんで、行かそうとするねん。

 


「お花見同窓会やて!あの街、桜が有名やもんな」


 ハガキの中身を読んだおかんは、立ち上がるとキッチンに行く。

 昨日のカレーを温めながらおかんはってくる。


「帰り、神戸寄ってお土産こうてきて」

「だから、いかんから」

「そんな悲しい事いわんと」

「いや、無理やから」


 俺は、またビールを飲んだ。

 さっきから、なんやねん。

 ほんまにイライラするわ。


 おかんは、俺にカレーを渡しながら、「今日一日、ゆっくり考えて決めたらええんよ」

 と笑いながら言ってくる。


 決めるもなにも、さっきから答え言うてんのに。

 何でわからへんねん。


 その言葉にイライラしていた俺は、おかんを無視してカレーを食べてビールをいっきに飲み干して部屋に行く。


 今日1日考えろって。

 行く意味なんかあらへんのに。 

 何で、あんな嬉しそうな顔するねん。


 ベッドに寝転がり、天井を見つめる。

 何だか吸い込まれそうになる。


 俺は、ゆっくりと目を閉じた。

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