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俺の王子様-3lover-【新エピソード&加筆修正版】  作者: 三愛 紫月


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心春と秋帆

 暗い感情に連れていかれそうな僕に天羽が、声をかけてくる。


「ボッーとしてんで、これ」


 いつの間にかブランコを降りていた天羽は、僕の隣に立っていた。


 ハンカチを渡される。


「僕な、家族がどこに住んでるかしらんねん」

「どういう意味?」

「お婆ちゃんちに来る日にママが僕に言ってん。心春、ママとパパを探したらアカンよって。心春は、これから美澄の婆ちゃんの養子になるんよって」

「酷いおかんやな」


 天羽は、僕の言葉にイライラしながら地面を蹴った。


「欠陥品なんやって、パパがそう言うてたから。そうなんやろな」

「何やそれ、アホらしい。子供の個性も尊重できんやつわ。こっちから、捨てたったらええねん」


 天羽は、僕よりも怒ってくれる。


「なんか、胸がスッーってしたわ」

「よかったな」


 天羽は、またブランコに乗る。


「この先、どんな事があっても俺は美澄の味方やから。だから、オレ以外にそんな話すんなや!皆が美澄をどう思うか俺にはわからへんから。な、約束」


 天羽は、小指を差し出してくる。


「約束」


 天羽は、またブランコを漕ぎ始めた。

 何か不思議なやつだ……。

 天羽みたいな人間に僕は初めて会ったよ。


「あのさ、僕の事呼ぶの心春にしてや。美澄って名前嫌いやねん」

「わかった。じゃあ、心春な!俺も秋帆でええよ」

「何か、女みたいな名前やない?二人とも」

「ほんまやな」


 天羽と笑い合う。

 それから僕と秋帆は、毎日一緒にいた。

 小学校と違って、中学は楽しくなりそうな気がしていた。



 そして、あの日がやってきた。

 それは、後二週間で夏休みに入る頃。

 僕は、いつもは使わないトイレに来ていた。


 鏡の前で、顎にできたニキビを見る。

 なかなか治りにくいから嫌いなんだよね。


 ガタンっ、個室トイレの扉が開いてビックリした。

 僕は、鏡越しにトイレを見る。


 中から、ぞろぞろと人がでてきた。

 何人で、トイレはいるねん。

 心の中で、呟いた。


 5人は、僕を気にしないで出て行く。


 なんか、中で話してたのかな?

 そろそろ、戻ろうかな?


 振り向いたら。

 まだ、中に人がいてビックリした。

 俯いてるけど、憂いを帯びている目。


 トクントクンって胸が踊るのがわかった。


 間違いない、入学式で出会った子や!!


 僕は、運命やと思った。

 すぐに、声をかけたい。

 彼の声を聞きたい。


 だから僕は、声をかけようとした、したんだけど……。


「キモいねん」


 突然、頭の中に真君の言葉が響いた。


「なんで、そんなん言うん?」

「男同士で、そんなんしてるやつおらへんわ。気持ち悪いわ」

「真君」

「触んなや、キモいねん」

「なんでや、なんでわからんのや」


 あの日……僕は受け入れてくれない真君を殺そうとした。

 また、同じになる。

 あの時みたいに、この子にキスがしたくなる。

 僕は、見ないフリをしてトイレから出た。


 何をされていたかわからなかったけれど、彼の頬を涙が伝っているのは見えた。



「心春、探したで」

「あっちのトイレ行ってた」

「そかそか!」

「あのさ、秋帆。お願いがあるんやけど」

「なんや?」


 僕は、秋帆を人がいない場所に引っ張っていった。


 そして、さっき見た光景を話した。


「で、その子を俺が助けるんやな?」

「うん。僕は、歯止めがきかなくなるから……。だから、秋帆にお願いしたい」

「わかった。俺が助けに行ったるわ」


 秋帆は、僕に約束をしてくれた。


 そして僕は、助ける以外の方法で美月君に接触することにしたんだ。



「はい、飴ちゃんあげる」

「ありがとう」

「午後からも頑張れ」


 僕は、美月君に笑った。

 美月君と話せるだけで嬉しい。

 それだけで、充分。 


 そんな幸せな日々も、中学を卒業後、別々の高校に行って終わってしまった。


「秋帆、なんで連絡先聞いてないねん」

「学校でいつでも会えるからいらん思ってたわ」

「あーー。なんか、見つけてもらえる方法ないかな」

「これ、いいんやない?」

「音楽?」

「歌うたったらいつか届くんちゃう?」

「せやな!ほな、やってみようや!二人で」


 僕と秋帆は、二人で歌を唄うことにした。

 しばらく続けてたら、高校にスカウトの人がきて、僕達は卒業したら歌手として活動することになった。


 でも、全然美月君から連絡はなくて、仕方ないからたくさん活動した。

 それでcmにも出演させてもらったり、秋帆もいろいろ頑張ってくれて、たくさん雑誌にも載ったのに美月君からは何の連絡もなくて。


 ガッカリしていた僕に、連絡をして来たのはママだった。

 用件は、慰謝料を払えってことだった。


 もうこんな生活を続けてても仕方ない。

 8年目を迎えた僕は、心も体も疲弊してる事を事務所に伝えた。


 そして、10年を節目に辞めさせてくれる事になった。

 だから今は、秋帆と好きな時に歌を作って売る生活をしている。


「これが、僕の話」


 美月は、僕の話に泣いてくれていた。


「次は、秋帆の番だよ」

「わかった、話すわ」


 会えなかった時間を埋めるように、秋帆は話し出す。

 



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