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俺の王子様-3lover-【新エピソード&加筆修正版】  作者: 三愛 紫月


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キスしてみる?

 俺と秋帆君も続いて歩き。

 エレベーターに乗り込む。

 

「今ここを借りてるんだよ」


 エレベーターから降りてすぐの部屋のドアに心春君は鍵を差し込んで開けた。


「秋帆と2人で住んでるんだよ」


 玄関を開けて、靴を脱ぐと心春君はどんどん中に入って行く。

 


「物があんまりないんやね」

「そうやねん。俺と心春は、3年前からこんな生活で。あっちこっち転々としてるねん。だから、少ない」

「そうなんやね。それで、今はこの街に住んでるって事?」

「そうそう、今年の初めに住んだんだよ」


 キッチンで荷物をわけながら、焼き肉をする為の準備を心春君がし始める。


「もし、美月君と付き合うってことになるなら、僕達も美月君の街に引っ越すよ」

「だから、そう言うのはやめろって言うてるやろ」

「わかってる」


 秋帆君に怒られた心春君は、苦笑いを浮かべて笑い、焼き肉の準備を続ける。


「ちゃんとわかってるんか、心春」

「はいはい」

「はいは、1回や」


 秋帆君は、まるで俺のおかんみたいだ。


「笑ってんのか?」

「あっ、ごめん。何だか、俺のおかんみたいやなって思って」

「そっか。俺はおかんか。ハハハ」


 秋帆君は、笑いながら心春君の近くに行き準備を手伝い始めた。

 不思議やな。

 こうやって、大人になったヒーローと一緒にいるなんて。



「肉食おうぜ、肉」


 秋帆君の言葉に、準備が終わった心春君は肉を焼いていく。


「肉だけやアカンで。ちゃんと野菜も食べるんやで」


 秋帆君は、やっぱり俺のおかんみたいだ。

 並んでる二人は、ほんまに綺麗や。


 心春君は、女の子みたいに細くて、顔立ちも女の子みたいだ。

 目の印象が柔らかくて、声も話し方も仕草も全部、とにかく柔らかい。

 全身から優しさが滲み出てるような人や。

 眼鏡かけてない方が、いいのにな。

 でも、眼鏡かけてないと、いろんな人にモテそうやねんな。

 たぶん、心春君もそれが嫌なんやろうな。


 秋帆君は、シュッとしていて綺麗な顔をしている男の子。 

 心春君とは違って、話し方も、声も男らしくて、鍛え上げられた肉体がより秋帆君の男らしさを作り上げてるのがわかる。

 全身から、男らしさを感じるタイプや。


 心春君は、守ってあげたいって気持ちになるけど、秋帆君には守られたいって感じになる。

 正反対やけど、2人共優しい目をしてる。


「焼けたよ。ワインあけよ」

「はいよ」


 秋帆君は、心春君の言葉にワインを開ける。

 そして、グラス3つにトクトクとワインを注ぎいれた。


「久しぶりの再会に、乾杯」

「乾杯」


 グラスを取って、乾杯をして俺はワインを飲む。



「肉、肉」

「だから、野菜も」

「はい、はい」

「はいは、一回」

「わかってる」

「わかってないやろ」



 秋帆君と心春君は、そんなやりとりを繰り返している。

 俺とおかんを見てるみたいで。

 自然と笑みが溢れるのがわかる。



「ホンマ、うまいな」

「うまいっす」

「美味しいね」


 3人で、ニコニコ笑い合いながら食べる。

 おかんとしかご飯食べてなかったから。

 たくさんで食べると美味しいっていう気持ちを忘れていた。

 


「あのさ、聞いていいんかわからんかったんやけど」

「なに?」

「トイレのやつって、いつからやられてたんや?」


 秋帆君は、眉毛を寄せて申し訳なさそうに聞いてくる。



「小学5年生から」

「マジでいってんのか?あいつらにか?」

「うん」


 俺は、初めて話した。

 軽蔑されたくなくて、おかんにもおとんにも奈美姉ちゃんにも、小学生からやって言えんかったから。

 唯一、その事を知ってたのは、双子の姉ちゃんだけだった。


「ずっと、辛い思いをしてたんだね」


 心春君は、俺の頭を優しく撫でてくれる。


「ちょっとみんなで、向こうで少しだけ話そうよ」


 心春君の言葉に秋帆君は、コンロの火を消した。

 ワインとワイングラスを持って、ソファーに三人で並んで座りに行く。


「あっ、そうや。会ったらちゃんと、2人にお礼を言うつもりやった。遅くなったけど。秋帆君がおらんかったら、俺はあいつらにもっと酷いことされてたやろうし。心春君がおらんかったら学校の授業に最後までおれんかった。ほんまにありがとう、ずっと俺のことを助けてくれて」


 俺の目から、自然と涙が流れてくる。

 心春君が、後ろから俺の背中を抱き締める。


「次に会ったら、美月君にこうしてあげようって決めてたんだ」


 優しく抱き締めてくれる。

 秋帆君は、俺の頭を撫でてからその手でそっと唇に触れる。


「いっつも、真っ赤やったな。もっと早く助けたりたかったんやけど。いつも、キスだけは阻止できんくてごめんな。間に合わんくてほんまごめん」


 俺は、秋帆君の言葉に首を左右にふった。

 授業だってあるのに、いつもいつも間に合うことなんてない。

 そんなんわかってる。

 わかってたから。

 だから、2人をそんなことで責めへんよ。

 言葉に出来ない気持ちが涙になって俺の頬を濡らす。


「僕、ずっと、キスしたかった。だけど、あいつらと同じになるから。だから、しなかった」


 心春君は、俺の背中に頭をピッタリとくっつけて話す。

 おんなじやなんて。

 そんなわけない。

 そんなわけ……。


 「キス……してみる?」


 俺の言葉に、2人が止まるのがわかる。

 

「ええの?」


 心春君じゃなくて、秋帆君が答えた。


「うん、ええよ。でも、3人で、キスはできへんから」

「そりゃそうやな」

「じゃあ、秋帆から、先にしなよ」


 心春君が、笑いながら言う。


「僕は、後ろから抱き締めてるよ」


 秋帆君は、心春君の言葉に軽く頷いてから、俺を見つめた。


「ちょっと痛いかもしれんけど、絆創膏、剥がすで」

「うん」


 丁寧にゆっくり絆創膏を剥がされていく。

 そして、優しくゆっくり唇が重なる。

 まるで、俺は壊れ物みたいだ。


 「ふぅーー」


 よくわからないけど、息がもれた。

 それを秋帆君は見逃さなくて、すぐに俺から離れる?


「気持ちわるうなかったか?」


 秋帆君の言葉に、俺は恥ずかしくなって俯いてしまう。

 目を合わせられへん。

 今、俺がどんな顔してるか見られへん。

 だから……。


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