プロローグ
泣くのを我慢して泣けない人が、この作品で泣けますように。
加筆修正しながら、泣いてしまっている著者より
今日は、二人に大事な話があるねん。
だから、久々に二人のお墓に来たんやで。
二人は、俺の夢。
応援してくれるやろ?
俺な、一生許せへんと思うねん。
あの日々も、こないだの事も……。
でもな、それを全部背負って歩いて行くって決めてん。
だって……。
「美月~~、歩くん、早いねん」
「ごめん。話したかったから」
「まあーー、ええんやけど。あっ、俺も美月のお母さんと心春置いてきてもうたわ」
おかんと心春は、早歩きでやって来た。
俺と秋帆を見ながら「早すぎな」と心春が笑う。
「お花も用意してるんやから。先、先、行きなよ、みっくん」
「ごめん、ごめん。おかん」
「もうすぐ、奈美も来るんやから」
「旦那さんも一緒やろ?」
「そうやけど。何で?」
「俺、二人に頼まなアカン事あるから」
「何やのかしこまって」
「来たら話すから」
おかんは、不思議そうに首を捻りながらお墓に水をかける。
「久々やから、綺麗にしたろ」
「そうだね。名前に苔とかはえてるし。知ってた?ここは、顔なんだよ。だから、苔は綺麗にしてあげなくちゃ」
心春は、柔らかいスポンジで文字の部分を綺麗に洗ってくれる。
こんなに穏やかで幸せな日々が来るってあの頃の俺は知らんかった。
俺は、ずっと過去から逃げてたから。
あの時、向き合うことがなかったら、一生手に入れる事が出来なかった幸せが目の前にある。
あの時、2人がついてきてくれなかったら、俺はずっと苦しみの海をさ迷い続けていたことだろう。
それはきっとおかんも……。
「来た来た。こっちにもうおるよ」
奈美姉ちゃんも同じだったと思う。
「早くついたんやね」
「そうやの」
「一緒に来てもよかったのに」
「ほら、買いたいのあったから」
「回転焼き?」
「そうそう。それとこれね」
「こっちゃんが好きなケーキやないの」
お墓の前で、おかんと奈美姉ちゃんが笑い合ってるなんて奇跡みたいや。
「泣くなら肩かしたろか?」
「秋帆じゃなくて、僕の肩を借りるだろ?」
「いや、借りなくても大丈夫やから」
「美月が笑ってるだけで、俺も心春も十分やで」
「ほんとにそうだよ」
「ありがとう。俺が笑えてるんは、二人のお陰やで。二人がいるから、俺は前を向いて歩いていけてるんやで」
あの日、ヒーローに会いに行かない選択をしていたら。
こうしてこの場所に来ることも。
こんな風に笑うことも出来なかった。
俺は、救われたんだ。
あの日々に……そしてヒーローに。
タオルを硬く絞って墓石を丁寧に拭く。
俺の夢を話す前に、こっちゃんとおとんに話さなアカン事があったわ。
まずは、その話をするから聞いてて欲しい。




