第5話
あまりの激痛に目が覚めた。
目が覚めると、なぜか視界が横向きで、自分が何をしていたかが曖昧だった。
「目が覚めましたか。」
リミアは私の顔を覗き込んで言った
「はい、でもすごく頭が痛いです。」
「...やはり、そうですか。」
そう言い、リミアは私の頭に手を置いた。
「この痛みに関しては治癒魔術ではどうにもできません。視覚情報が急に増えたことで生じた負荷によるものでしょう。少しずつ脳細胞がその負荷に耐えれるよう、変化してくることで消えてくるはずです。」
話しているうちに少しずつどうして倒れているかを思い出してきた。
リミアがそう言ったという事は、私は上手く自分の脳を触れたということになる。
「よかった、上手く触れたんだ」
「はい、とてもお上手に。」
とても安心した。けれど、安心したけれど...
「私、やっぱり対勇者なんてできないです。自分には荷が重すぎます。」
「セナ様前にも言いましたが、それをサポートするために私がいます。」
「でも無理だと思うんです。この痛みだって、耐え続けられる気がしません。そして勇者と戦って死ぬんです。」
リミアは少し辛そうな顔をした。そして数秒がたった後、口を開いた。
「セナ様。セナ様には言ってませんでしたが、私は過去に勇者と剣を交えたことがあります。」
「戦ったことがあるんですか?リミアさんでも勝てないのに、私に勝てるわけがないじゃ無いですか。」
「確かにそうです。ですが、言いたい事はそこでは無いんです。その時の私は、私ができる最高の状態で彼に挑みました。ですが、私は負けました。何も見えなかったのです。当時の私の描画速度は通常の7倍。それを持ってしても見えなかったのです。化け物です。」
リミアは少しにがい顔をしながら話を続けた。
「セナ様。これから私が言うことを他の人に言わないと、約束してくれますか?」
私は頷いた。
「ありがとうございます。セナ様、私は魔王軍は勇者に負けると思っています。」
それを聞いた瞬間とっさに言ってしまった。
不安に思いたかった、確信を。
その時だけは頭の痛みを感じなかった。感じる暇すらなかった。
「じゃあ私は何のために、無理やり連れてこられて、家族を殺されたんですか!」
リミアは驚いた顔をした。 当然だろう。これまで上手く隠していたと思っていたのに、それを急に否定されたのだから。
「気づいていたのですか?」
私は小さく頷いて返した。
「隠しており本当に申し訳ありませんでした。ですがセナ様、だからなんです。無理やり連れてこられ、家族を奪われたセナ様だから、死んでほしく無いんです。」
リミアの声は最後の方にかけて消え入るように細くなっていった。目には少し涙が溜まっていた。
「描画速度を上げることができれば、少しでも勇者の攻撃を回避、受け身を取ることができます。私は少しでも、セナ様が生きる可能性を上げたいんです。」
その後リミアは隠していたことを謝罪し、頭を下げてきた。
どうして謝るのか分からなかった。リミアも上から言われてたんだろうし、彼女に落ち度はない。
それから数秒後、私は口を開いた。
「顔を上げてくださいリミア。私、もう一度、頑張ります。」
そうして私は、彼女の手助けを受けながらもう一度脳を触った。




