第9話
「それでは、行ってらっしゃいませ。セナ様頑張ってください。」
「...リミア、私は、本当に大丈夫なのでしょうか。」
今この瞬間になって、急に不安になってきた。
「どうしたんですか?急にそんなことを言って。大丈夫ですよ、私に勝ったのですから。」
「でも...本当に、本当に私は、生きていられるんでしょうか。」
リミアはもぉと言って、少ししゃがんで目線を合わせてきた。
「セナ様、これまでのことを思い出してくでさい。セナ様は、私ができるようになってくださいと言ったことを、立派にできるようになりました。術式創造、描画速度、および処理能力の向上、そして私に勝つ。これほどのことを、この短期間でこなした者を、私は見たことがありません。自信を持ってください。」
とても複雑な気持ちだ。どうしてもこの場所を離れたくない。
気づけば視界がぼやけている。そのぼやけは目から溢れ、頬を伝っていた。
リミアあが手巾を取り出し、私の顔に近づけてきた。
「セナ様、不安になると思います。けれど泣かないでください。絶対に、諦めないでください。そうすれば、きっと... そろそろ時間です。ほらセナ様、早く馬車に乗ってください。」
私は渋々馬車に向かった。
「あ...セナ様、こちらをどうぞ。」
そう言って、リミアは私に一本の剣を渡してきた。
そういえば、彼女も今日、腰に剣をさしていた。漆黒で、とても綺麗だなと思った。
「アリがとう、リミア。行ってきます!」
馬車が進み始めた。どんどんリミアとの距離が離れていく。
「行ってらっしゃい!セナ様!」
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魔王城を出てしばらくしたころ、さっきの不思議な感情の正体が分かった。
寂しさだ。
思えば、ここに来てからずっとリミアと一緒にいた。
彼女が私の中でどれほど大きな存在になっていたかは測り知れない。
私は涙を拭って、外を見た。
いつも通りの晴天だ。
だけど、今の私にはとても殺風景に思えた。
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さらにしばらくした頃。目的地に着き、馬車を下りた。
馬車は、私を下ろした後、すぐに来た道を引き返していった。
最前線まではまだ距離があり、歩いて向かう。
と言ってもさほど距離はなく、すぐに着いた。
とてもひどい状況だった。
道には死体が転がっていて、悪臭が漂っていた。
道の真ん中に、人が一人立っていた。
絶望した。
絶対に当たりたくなかった。
他の相手なら、まだ勝てたのかもしれない。
だけどそこには、その希望とは反して、勇者が立っていた。
右手の剣は血にまみれ、左手にはその剣で切ったのであろう、生首を持っていた。
今すぐに引きたい。
帰りたい。
だけど帰れない。
引けない。
行くしかない。
私は剣に手をかけ、勇者に向かって踏み込んだ。
遅れてしまい申し訳ありません。




