表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/20

第12話:宮本玲奈

――納得できない。


散々私のことをディスっておきながら、結局ヒドい選曲をしたのは亜紀さんの方じゃない。


「ち、違うの。これは私の青春ソングなの。なんでそんな穿った見方するの? みんなおかしいよ」

亜紀さんは真剣な顔でそう言っていた。


私はグラスを置き、静かに言い返した。

「一番おかしいのは亜紀さんです」


だってそうでしょう。

どこからどう聴いても【二人セゾン】なんて、直也さんと保奈美ちゃんの歌にしか聞こえなかった。

それを「青春ソング」とか言って済ませようとする方が無理がある。


なのに。


由佳さんも彩花さんも、梨奈さんまでも――テーブルを叩いて爆笑している。

涙を流しながら、「もうやめてwww」とか「五人セゾンwww」とか……。

腹立たしい。こっちは真剣にやってるのに。


胸の奥がじりじりと焼けるように熱くなる。


――だったらもういい。


ここで私が決めるしかない。

このカオスを収めるのは、私の役目。


時代を超えて歌い継がれるレベルのアニソン神曲。

ただのヒットソングじゃない。

名実ともに「伝説」に刻まれたラブコメの金字塔。


そう――【めぞん一刻】。


あの物語のフィナーレを飾った名曲こそが、私を救ってくれる。


――【硝子のキッス】。


これだ。

これで決める。


この曲なら、誰も文句は言えない。

笑いなんて挟ませない。

未亡人の管理人女性と、下宿学生との純粋な愛の物語。

そこには「直也案件」などと言わせる要素など存在しない。

私の真剣さを、きっと全員に分からせてみせる。


私はリモコンに手を伸ばした。

液晶に浮かぶ文字列を見つめながら、胸の奥で固く誓った。


「……次は、私の番」


マイクを握りしめる指先に、熱が宿るのを感じた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ