キム・ジュアが生きた証 (7)
「痛いところはなかった?」
「うん。午前に注射打って、一日中大丈夫だった。心配しなくていいよ。」
「うん。お母さん、今日は早く帰るね、明日お父さんとお昼に一緒に来るから。必要なものがあったら電話してね。」
「分かった。」
「そう。迷わないで、心臓病、全部乗り越えられるから、お母さんが言う通りにするのよ。分かった?」
「……。」
母の小言が終わった。
母が去った病室の中は静寂に包まれた。
思わず突然涙が流れた。
母が来るまではとても楽しかったのに、急に現実の壁にぶつかった感じだ。
母の言うことは間違っていない。
しかし、治療の可能性が見えない病気を患う私にとっては、希望のない拷問のように感じられるだけだ。
それを母が分かってくれるべきなのに。
母が私を理解してくれるべきなのに。
母は私の完治に対する可能性を失いたくないと願っていて、私はその母の希望を打ち砕きたくないだけだ。
その時、友達のジスからカカオトークが届いた。
[ジス先輩ㅋ]:笑、一週間元気だった?
私がジスを[ジス先輩ㅋ]というニックネームで呼んでいるのは、いつもチャットを「ㅋㅋ」(笑)で始めるからだ。
私は今日も「ㅋㅋ」の絵文字で始まるジスのカカオトークに返信した。
[キム・ジュア]:うん。そっちは?
[ジス先輩ㅋ]:今溜まった交換日記書いてる最中www。やばい。あんたも全部書いてるんでしょ?
[キム・ジュア]:あ、書かなきゃ。
[ジス先輩ㅋ]:何よ。笑 早く書きなさいよ。私もうほとんど書き終わるわよ。
[キム・ジュア]:うん。分かった。明日何時に来る?
[ジス先輩ㅋ]:お母様は何時にいらっしゃるって?
[キム・ジュア]:午後にいらっしゃるって。
[ジス先輩ㅋ]:もしお母様に交換日記が見つかったらいけないから、午前に行くね。
[キム・ジュア]:分かった。
私はしばらく考えてから、交換日記を書き始めた。
些細な話から今日あった特別なことまで、すべて書いた。
しかし、人生の最後にについては一言も書かなかった。
私はいくら私と一番親しい友達、ジスであっても、私が人生を終えようとしていたことは最後まで言わないと決心した。
ジスが母や父に話す可能性もあるし、もしかしたら私によってジスの学業に支障をきたすかもしれないからだった。
それでもソンフンについての話は書いた。
屋上での最初の出会いから、今日あったことまで。
腎臓が悪かった彼が介護士になるまでの話、そして心臓移植に関する彼の助言、そして看護師のお姉さんたちに内緒で外に出て食べた美味しい食べ物や映画、美術館についての話もすべて。
今日は普段と違って日記を書くのが楽しかった。交換日記の内容はいつも同じだったのに、今週に限っては普段とは違う話で満たされたからかもしれない。
*****
次の日になった。
今日は普通の平日とは違う一日が始まる。
いつもの土曜日と同じように、今日は医者の回診がない。
毎週、土曜日と日曜日は、何かあった時だけ医者に診てもらえる。
もし今日、具合が悪くなければ、義務的に投与される鎮痛剤の処方もパスできるかもしれない。
幸い、今日も体調は悪くなかった。
3日連続で具合が悪くない日だなんて、私にとって珍しい幸運だ。不整脈のせいで突然胸が締め付けられるように痛くなったり、血圧が下がって力なくバタリと倒れたりするのは、私にとってかなり頻繁にあることなのに。
ジスは春らしい香りが漂う白いTシャツとデニムジャケットを着てきた。頭にピンク色のキャップまでかぶっているのを見ると、今日のファッションにはかなり気を使ったようだった。
「ジュア。会いたかったよ。」
「ジス。私も会いたかった。何もなかった?」
ジスは1週間ぶりの訪問にもかかわらず、嬉しそうに挨拶を交わした。彼女は「何もなかった?」という私の言葉に微笑みを浮かべた。
「今回、学校で受けた模擬試験で5位以内に入ったんだ。だからお母さんがお給料をもらったらiPhone買ってくれるって。」
「iPhone、いいな。リア充の仲間入りおめでとう。」
「フフ、自慢するね。iPhone先輩ってこと?」
「自慢なんかじゃない、iPhone欲しかったんでしょ。友達としてお祝いしてるって話だよ。」
ジスは私が使っているiPhoneをいつも羨ましがっていた。1ヶ月前に両親から、今回の試験でクラスの5位以内に入ったらiPhoneを買ってあげると言われ、放課後も毎日夜遅くまで勉強していたが、その努力が実を結んだようだった。
私たちは挨拶を交わし、どちらからともなくお互いの日記を取り出して交換した。
私はジスの一週間の出来事を読み、ジスは私の一週間の出来事を読んだ。
ジスは本当に勉強に真剣だったようだった。
「鼻血まで出しながら勉強したの?」
「うん。私も鼻をほじって鼻血が出たことはあるけど、勉強中に鼻血が出たのは初めてだよ。私も鼻血が出た時は本当にびっくりした。」
「そうだよね。でも本当にすごいね。模擬試験で5位ってすごく高いんじゃない?私、高校に通ったことないから、それがどれくらいすごいことなのかよく分からないんだ。」
「フフ、高いよ、合ってる。もっと頑張らなきゃいけないけど、今の順位でも上位15%以内には入るから。」
ジスの可愛い行動はいつも自分を褒める時に出る。
ジスの自信満々な表情を見ると、思わず笑いがこみ上げてきた。
「へえ?介護士が男?それも5歳年上のお兄さん?」
ジスは私の日記を見て、かなり驚いた様子だった。
「不思議でしょ?あの人も私みたいに病院生活を送ってたんだって。臓器移植も受けたし。」
「うん。面白いね。あんたと話も合う人みたいだね。」
ジスは私が書いた日記に興味があるのか、かなり集中して読んでいた。
「ほお、外出もしたんだ。私といる時は怒られるのが怖くて出かけられない子が、どうしてこんな勇気を出せたんだろう?」
6ヶ月前にジスがこっそり外に出てみようと提案したことがあった。
しかしあの時の私は、母をがっかりさせたくなくて、やめようと言った。
考えてみれば、私は両親の言うことをよく聞く子だった。
ジスの言う通り、私はどうしてそんな勇気を出せたのだろう?まだ自分自身が理解できなかった。
「そうだね。私も無意識に引き寄せられて外に出たみたい。」
「ん?この人イケメンなの?」
「何よ?」
「イケメンだから一緒に映画も見たり、公園も行ったり美術館も行ったんじゃないの?」
ジスの問いに私が手を振った。
「そんなんじゃないわよ。」
「じゃあ何か心境の変化があったとか?元々外に出るの嫌がってたじゃない。」
「そんなこともないわよ。」
私の答えにジスが私の脇腹をくすぐりながら言った。
「んー、何かあるね。教えてよ。日記に書かなかった何か別の理由でもあるんでしょ?」
私はジスの言葉に最後まで「違う」と主張した。
「違うってば。」
「くっ。怪しい。いつものジュアじゃないって私の勘が言ってるわ。一体何かしら?うちのジュアさんが隠してることって何だろう?」
「何も隠してないから、推測しないでよ。」
私の日記の最後の部分を見たジスは、再び驚いた表情を浮かべた。
「へえ?電話番号まで交換したのね。どっちが先に番号教えてって言ったの?」
「……。」
私が答えなかったので、ジスは信じられないという表情で言った。
「ありえない、ジュアが先に電話番号教えてって言ったの?どれだけイケメンだったら、うちのジュアが先に電話番号を教えたんだろう?」
「あ…違うってば。ただ介護士なんだから、お互いの電話番号を持ってるのが普通でしょ。勝手に決めつけないでよ。」
「うちのジュア、男に興味まで持って、ずいぶん大人になったね。ずいぶん大人になったね。」
「そんなんじゃないってば!」
ジスのいたずらっぽい冗談に、思わず声が大きくなった。
するとジスが私の表情にいたずらっぽい顔をして言った。
「否定しても無駄よ。」
「あー、もう、冗談やめてよ。トイレ行ってくるから。」
「分かりました。もうやめる。」
「本当にあと1回やったら死ぬからね?」
「面白い。早くトイレに行ってきなさいよ。」
トイレに行っている間、ベッドにある携帯電話のベルがけたたましく鳴り響いた。
私の電話のベルの音に、私は普段通りジスにお願いするように言った。
「ジス。代わりに出てくれる?」
「うん。分かった。」
ジスは普段通り私の電話に出た。
私にかかってくる電話の相手は決まっている。母や父、そしてジス。そうでなければ広告や迷惑電話。だから普段からジスが代わりに電話に出てくれることが多い。
しかし今日は、他の人から電話がかかってきたようだった。
キム・ジュア患者の電話番号ではありませんか?
「ジュア、ちょっとトイレに行ってるんですけど。代わりましょうか?」
ああ、いえ。メールで残します。メールを読んでくれるように伝えてください。
「はい。そう伝えます。」
トイレから出てきた私は首をかしげながらジスに尋ねた。
「誰?」
「番号見たらあの男だったよ。」
「あの男って誰?」
「介護士。あんたの電話番号を聞いてった人。」
「本当?」
「驚き方見てよ。本当に好きだったみたいね。」
「違うってば。あの人、なんて言ってたの?」
「言いたいことがあるから、メールで残すって。メールを読んでくれるようにって。」
「うん。」
ジスとの会話が終わる頃、メールが届いた。
ところがメールの内容はかなり長かった。
2024年4月13日 土曜日 午後3時26分。
お前は不整脈の発作で意識を失うだろう。意識を失わないように看護師のお姉さんに前もって言っておけ。でもあまり心配するな。今日だけ耐えればしばらくは痛まないから。-