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キム・ジュアが生きた証 (3)


再び意識を取り戻した私は、すぐに病室の中にある時計を見た。

午後1時13分。

時計を見た私は安堵のため息をついた。


普段、点滴を打つと午後5時になってようやく正気に戻る。

目覚めていても朦朧としているため、自分が何を正確にやったのか、どんな行動をしたのかもよく覚えていないからだ。

しかし今日は違った。

おそらく医者が点滴の量を半分に減らしたせいだろう。

そうでなければ、午後1時に私がこんなにまともな精神状態であるはずがないからだ。


私は安堵のため息をつきながらベッドから体を起こした。

目的は屋上へ行くこと。

そしてこの繰り返される日常をすべて終わらせ、皆に安寧をもたらすこと。

なのに、なぜ?


「起きた?」


さっきの彼が病室のドアを開けて入ってきた。

両手には、ひどく食べたくないあの病院食を持って。

私は顔をしかめて言った。


「私を止めないで。出ていくから。」

「止めないよ。」

「本当?」

「代わりにこれ全部食べなきゃ。そしたら出してやるよ。」


私の気持ちを知ってか知らずか、にこにこ笑っている彼を見ると、怒りがこみ上げてきた。

しかし彼は私の表情を気にもせず、自分の言いたいことだけを繰り返すばかりだった。


「約束するよ。全部食べたら外出。OK?」

「約束したわね?」

「もちろん。俺は一度言ったことは曲げない。」


どうせ力では勝てない相手だから、私は一歩引いた。

ご飯を食べて寝てからあまり時間が経っていなかったのでお腹は空いていなかったが、それでも計画を実行できるという思いで、無理やり食べ物を口に押し込んだ。

それでも私は、あるおかずだけは手をつけなかった。


「豆もやしも食べなきゃ。」

「私、豆もやしは元々食べないの。これくらいは許してくれてもいいでしょ。」

「アレルギーがあるわけじゃないだろ。栄養士の先生がお前の健康を考えて組んだ献立なんだ。残さずに全部食べろ。」


栄養士まで言い訳に使うなんて、こいつ、本気だ。


「あー、もう。」

「外に出たくないのか?」

「全部食べるから、もうやめて。」


無理やり全部食べたら気分が悪くなった。

どうやらお腹が空いていないのに無理やり食べたせいだろう。

食事を終えると、彼が食板を片付けた後、立ち上がった。


「食板を返してくるから待ってろ。」

「外出は?」

「急ぐことないだろ。5分だけ待ってろ。」


私は彼の口調からして、外出を許すはずがないと悟った。

タメ口に勝手な行動まで、良い点が一つも見当たらない。


私は彼が食板を返しに出かけたタイミングを逃さずに寝室から立ち上がった。

ところが、彼が出かける際に看護師のお姉さんを呼んだのだ。


「お姉さん、俺、食板を返してきますね。少しジュアを見張っていてください。」

「うん。分かった。」


彼の頼みに看護師のお姉さんが病室に入ってきて、靴を履いていた私を見つけ、


「ジュア。なんで靴履いてるの?」

「トイレに行こうと思って。」

「うん。早く行ってらっしゃい。」

「はい。」


私は病室の外に出ようとする計画にまたも失敗し、病室内のトイレへ向かうしかなかった。

本当に腹が立った。

今日は本当に成功できると思っていたのに。

しかし昨日に続き今日、二日連続で私の計画はすべて失敗してしまった。

すべて彼のせいだった。


「イライラする。」


私は結局、誰も見ていないトイレで一人、拳をぎゅっと握りしめて怒りを飲み込んだ。

私の最期は完璧でなければならないのに。

今日は母にとっても完璧な最期の姿だったはずなのに、なぜ彼に邪魔されなければならないのか。


私は結局、トイレで何もせずにしばらく留まった後、再び出るしかなかった。看護師のお姉さんの視線を受けながらベッドに戻ると、私を邪魔した彼が食板を返して病室に入ってきて言った。


「準備できたか?」

「何の準備?」

「外出。外に出るって言っただろ。」


意外な言葉に私は目を見開くしかなかった。全く許してくれないだろうと予想していたのに、意外にも彼は私の外出を簡単に承諾した。

私は看護師のお姉さんを見て尋ねた。


「お姉さん、本当に外に出てもいいの?」


隣で看護師のお姉さんも笑いながら言った。


「うん。ただし、病院から遠いところまではダメよ。歩いて10分圏内までしか許可しないから。それ以上は外出申請書を書いて出なきゃダメ。保護者のお母さんの承認も必要だし。それは分かってるでしょ?」

「はい。すぐに出る準備します!」


私は久しぶりに笑顔を見せた。

考えてみれば、外出は本当に久しぶりのようだった。

3ヶ月前に母と一緒に出かけたことはあったけれど、その時は別の病院で診察を受けるために出かけたので、特に外出という感じはしなかった。

でも今日は正式に許可をもらって出るからか、妙にワクワクする気持ちまで湧いてきた。


エレベーターに乗って1階の正面玄関を出ると、広い庭園が広がっていた。

毎日窓の外から見ていた風景だったが、実際に出てみると、病院の患者たちが思っていたよりも多く病院の前を散歩したり、うろついたりしていた。

その時、私が乗った車椅子を押していた彼が独り言を言った。


「どれどれ、チキンが食べたいって書いてあるな?」

「何?」

「ここ、お前がノートに書いてるだろ。病気が治ったらまずチキンが食べたいって。」


振り返った私は、彼が私が中学の時に書いた日記を盗み見していることに気づいた。その日記は、一番仲の良い友達ジスと交換して書いていた交換日記だった。


いつもお見舞いに来ていたジスは、退屈している私を見て、お互いに交換日記を書こうと提案し、私は最初は拒否したが、ジスの懇願に結局承諾した。

ジスの日記を通して学校生活を間接的に感じた私と、私の病院生活を知ったジスは、お互いについてより深い関係になった。

今はジスが高校を別の町に行ってしまい、週末にしか遊びに来ないが、中学校は病院と近かったので、今よりもっと頻繁に会っていた。

とにかく、その時から書いていた日記を彼が今手に持ち、読んでいたのだ。


「あ、なんであんたがそれ持ってるのよ?」

「お前も俺の手帳見ただろ。これでお互い様じゃないか?」

「あ?」


私は素早く彼が持っている日記を奪い取った。

ニヤニヤ笑っていた彼は突然車椅子を置き、正面玄関に向かって歩いて行った。


「おい!どこ行くのよ?」

「待ってろ。」


彼は1分も経たないうちに再び私のいる方へ戻ってきた。

私は彼が持っている何かを見て驚いた。

私が交換日記に書いたあのチキンが手に握られていたからだ。


「食べるだろ?」

「……。」

「食べるかって聞いてるんだ。注文したのに食べないのか?」


私はすぐには答えられなかった。確かに食べたかったのは間違いないが、今はもうお腹がいっぱいだったし、外部の食べ物を注文して食べることは病院の規則に違反する行為だったため、食べるとはなかなか言えなかった。


「でも、それ食べたら怒られるのに…。」


私の言葉に彼が再び尋ねた。


「食べるのか?食べないのか?食べないなら捨てるぞ。」


こいつは人の感情をもてあそぶのに卓越した才能があるに違いなかった。


「せっかく注文したものを捨てるなんて、後で食べればいいのに。なんで捨てるのよ?」


私は結局、彼の催促に頷いて答えた。


「食べる。」

「うん。一番美味しいやつ注文したから。」


私は彼が私に差し出したチキンを口に入れた。

病院でチキンが全く出ないわけではないが、病院のチキンは美味しくない。

だから、こうして外部で注文して食べるチキンは本当に久しぶりだった。

長い病院生活の間、私は本当に母、父、医者、看護師のお姉さんの言葉を忠実に守った。

健康のためにまずい病院食だけを食べ、治療に専念した。

だから、注文して食べる食べ物がこんなに美味しいと改めて気づいた。


カリカリとしたチキンの衣はもちろん、身も絶品だった。

さらに、つけて食べるソースも3種類もあり、ニンニクチキンソース、ペレソース、バーベキュー醤油ソースも含まれていて、様々な味を楽しむことができた。

私はもうお腹がいっぱいだったのに、チキンの誘惑を振り払うことができなかった。

そんな私を見て、彼は手帳を開いて携帯用のペンで線を引いた後、私に見せながら言った。


「チキンは食べたんだぞ?」


私は彼が見せる手帳を覗き込み、呆れた表情を浮かべた。


*************


退院後のバケットリストは以下の通りです。


1. チキンを食べる

2. 美術館に行く

3. 彼氏とデートする

4. 映画館に行く



*************


私が書いた交換日記の最初のページに書かれたバケットリストが、そのまま手帳に書かれていたからだった。

私は呆れた表情で言った。


「何よ?私の日記を盗み見たの?」

「いや。なんで盗み見たって思ったんだ?」

「私がやりたいことが書かれた内容が、そのままあんたの手帳に書かれてるじゃない。」

「俺は違うけど?」

「ちょっと!何が違うってのよ。」

「本当に違うけど?」

「あんた、お母さんに言って介護士変えるからね?お金もらいたくないの?」


私の言葉に彼が鼻で笑って言った。


「言えば。どうせ介護士は需要がある。お前の介護の仕事しなくても、仕事は溢れてる。他の人の介護をすればいい。」


反論できない論理に私は言葉を失ってしまった。

正直、介護士を見つけるのは韓国では簡単なことではない。しかも私のように頻繁に病気になる人を担当したがる人は、あまりいないのが現実だ。

私が何も言えずにいると、彼はにやりと笑って言った。


「全部食べたよな?じゃあ次のことしに行こう。」

「次のこと?」

「うん。」


彼はチキンの箱をゴミ箱に捨てると、すぐに私の車椅子を引いた。どこへ行くのか分からなかったが、正直気分は良かった。毎日同じ日常を繰り返していた私にとって、これは新しい経験だったからだ。

こんな日が来ることを密かに願っていたりもした。


彼は看護師のお姉さんが許可した病院の近くを離れ、かなり遠くの大きな通りまで私を連れて行った。

四車線道路と横断歩道を車椅子で押して行ったせいで、私は振り返って尋ねた。


「ここ、病院からかなり遠いじゃない。」

「それが?」

「看護師のお姉さんがこれ以上行なって言ってた。聞いてなかったの?」

「だから病室に戻ろうって言うのか?」


またしても質問を投げかける。彼はいつも私の道徳心を疑わせる。私がしたいことと、してはいけないことの間で質問を投げかけ、私を試し続ける。

もし母や父が同じ質問をしたなら、私は頷いただろう。

私は母に、父に、ジスに、そして周りの人たちに良い人として記憶されたかったから。

しかし彼に対してはそうではなかった。


「違う。」

「じゃあ周りでも見てろよ。」


正直、彼に良く見られる理由もないし、良く見られたくもない。

私より5歳も年上の兄なのに、マナーもないし、自分勝手だからなおさらだ。

だから、私が介護士の資格証を見たにもかかわらず、彼にはタメ口をきくのだ。

マナーのない人にまでマナー良く振る舞う必要はないから。


しかし、周囲の風景がその怒りを和らげる。

横断歩道を渡って彼が私を連れて行った場所は、驚くことに映画館だった。

私はびっくりして彼を見上げた。

すると彼はにやりと笑って言った。


「映画館、どうしても来たかったんだろ?」

「……。」

「見たいもの見よう。何見る?」

「お金は?」

「俺が出すよ。」


「いや。明日払う。」

私は首を横に振って言った。すると彼が再び答えた。

「いいよ。これくらいは俺が出すから。」


結局、彼が映画代を出すことになった。ポップコーンも食べようかと思ったが、お腹がいっぱいだったのでナチョスとコーラに変えた。

実は今、かなり楽しかった。毎日病院にばかりいると、見る映画を選ぶのも、何を食べるか選ぶのも、一つ一つが目新しい経験だった。

なぜ楽しいのか考えてみると、病院に入って以来、私が何かを選んだことがほとんどないことに気づいた。

毎日、看護師のお姉さんが言う通りに、医者が言う通りに、両親が決める通りに行動していた。私の日常はすべて決められた通りに流れていくばかりだった。

しかし今日は違った。だから特別だった。

たとえ全く礼儀知らずの介護士と一緒の場だったけれど、それもそれなりに特別な経験だと感じられた。


「映画見るんだけど、車椅子から降りた方が良くないかな?」

「好きにしろよ。倒れそうになったらすぐに支えてやるから。」


私は車椅子を隅に置き、映画館の椅子に座った。

車椅子とは違って、ふかふかした感じがとても良かった。私が想像していた映画館の雰囲気そのものだった。


「来てよかったみたい。」


映写機が回り、10分間ぶっ通しで広告が流れるのに、私はすべてが新しく感じられた。

5.1チャンネルから放たれる音響サウンド、巨大なスクリーンすべてが、テレビやスマートフォンとは全く異なる特別な感覚を私にもたらしてくれていた。



ザ・トラップ

私が彼と見ることにした映画は「ザ・トラップ」というミステリー・スリラー映画だった。

思っていたよりも怖くて残忍だった。

明らかに15歳未満禁止なのに、なぜ人が死ぬのだろう?

私は生まれて初めて経験する恐ろしい音響と緊張に胸が締め付けられた。

突然落ちてくる死体と、暗闇の中から現れる殺人鬼。そして、そんな殺人鬼たちから生き残るために絶叫し、抵抗する主人公たち。そして、とんでもないどんでん返しまで。

ものすごい緊張感が漂い、背筋には知らず知らずのうちに汗が流れ、しまいには怖くて涙まで出た。


映画が終わり、照明が点くと、隣に座っていた彼がじっと私を見つめながら尋ねた。


「泣いたのか?」

「少しだけ。」

「こんなものを見て何を泣くんだ。立て、車椅子に乗るまで支えてやるから。」

「……。」


再び車椅子に乗って映画館を出た。

午後5時40分、目にしても大丈夫だと思われた澄んだ空は、すでに真っ赤な夕焼けに染まっていた。

再び横断歩道を渡るために歩道で止まった私は、病院に戻ることを知りながらも、名残惜しさに車椅子を押している彼に尋ねた。


「病院に戻るんだよね?」

「うん。もう時間だ。これ以上遊んでたら看護師のお姉さんにバレるぞ。」

「そうかもね。」


信号が青に変わった。

私は青信号がひどく恨めしかった。怒って、喧嘩して、笑って、泣いて、今日は本当にたくさんのことが起こった。

久しぶりに普通の人々がどう生きているのか改めて気づかされたのに、また病院に戻らなければならないこの状況が、あまりにも複雑な気持ちにさせられた。

しかし私の感情とは関係なく、私はいつの間にか病院の正面玄関に到着していた。

私の意思とは関係なく動く車椅子は、病院の正面玄関を過ぎてエレベーターへ、エレベーターを通して私がこの4年間を過ごさなければならなかった病室へと私を連れて行った。

彼は病室に着くと私に尋ねた。


「支えてやろうか?」

「いや、大丈夫。一人で立てるから。」


そう答えてベッドに上がった私を見た彼は、車椅子に触れながら言った。


「車椅子は畳んで片付けておくよ。」


カチカチと音を立てて車椅子が畳まれ、畳まれた車椅子をベッドの横に重ねて入れた彼は、頭を掻きながら言った。


「あのさ…。」

「……。」

「今日のことは看護師のお姉さんとご両親には秘密だよ。それくらいはできるだろ?」

「うん。」

「じゃあ夕食持ってくるよ。」


私は彼がすでに病室を去ったのに、しばらく病室のドアの方を見つめていた。

どうしてあんなことを言ってしまったのだろう?

生まれて初めて感じる感情だった。

午前中の私だったら、きっと「秘密にしてほしい」と言われても「絶対にダメ」と言っただろう。

その時、母が病室のドアを開けて入ってきた。


「ジュア。何事もなかった?」

「うん。」


私に安否を尋ねた母は、車椅子の位置が変わっているのを見て、私に視線を向けた。


「外に出たの?」

「うん。ちょっとこの前まで行ってたの。」

「お母さん、外に出ちゃダメって言ったでしょ。ただでさえ心臓が悪い子なのに、風邪でもひいたらどうするの。次からは出ちゃダメよ。分かった?」


いつもこんな調子だ。母はいつか私の心臓病が治るという希望を抱いて、私から自由を奪う。

確かに気管支が悪くなると心臓病には致命的だ。以前、風邪をひいて苦しんだ時、狭心症も併発して本当に死にかけたことがあった。

その時は本当に人生を諦めたくて、しばらくの間、ただただ泣き続けた。

それ以来、母の心配はさらに募り、私はそんな母の姿を見て、もっと良い娘になろうと決心した。


「分かった。もう出ない。」

「そう。」


その時、介護士である彼が夕食を持って入ってきた。

彼を初めて見た母は、珍しそうに彼を見つめた。


「学生さんがうちのジュアの介護士さんですか?」

「はい。前任者の代わりに参りました。半月だけ私が担当することになりました。」

「何歳ですか?」

「23歳です。」


母は彼を見ても疑問が解けないのか、さらに問い詰めた。


「最近はこんなに若い学生も介護士をするんですか?」

「稀ですが、いないわけではありません。あー、もちろん私が特殊なケースではあります。実は以前、慢性腎不全を患っていたんです。その時、介護してくださった方のことを思い出して、私もその方のように介護が必要な患者さんたちの役に立つ人間になりたいと思ったんです。」

「ああ…。」

「患者食はここに置いていきます。私はもう勤務時間が終わるので、これで帰ってもよろしいでしょうか?」


母が頷くと、彼が黙って挨拶をした後、病室の外へ出て行った。

母は食事をする私を見つめながら首をかしげて尋ねた。


「不便なことはなかった?」

「うん。特に何もなかった。」

「不便だったら言ってね。他の介護士に変えてもらうように言うから。」

「ううん。大丈夫。不便なことはなかったよ。」

「もっと食べなさい。どうしてそんなに食が細いの?」


母の言葉に私は食板を見つめた。

食事を始めて5分が経ったのに、おかずとご飯がそのまま残っていた。

なぜこんなにご飯が喉を通らないのかと思ったら、今日は思ったよりも美味しいものをたくさん食べた。

チキンにナチョス、それにコーラまで。

まだそれらの食べ物が消化されていなかったので、夕食は全く食欲が湧かなかった。


「もう食べない。」

「そう言わずに、もっと食べなさい。」

「お腹がいっぱいなの。もうやめるね、お母さん。」


私の言葉に母が悲しそうな表情を浮かべて言った。


「ジュア。本当に…。お母さん、すごく悲しいわ。」


母が悲しい顔で食板を片付けた。

私は母の顔を努めて避け、顔をそむけた。


「寝るね、お母さん。お母さんも会社から帰ってきて疲れているだろうから、もう家に帰って休んで。」

「ジュア。」

「私も今日、午前中に注射を打ったから疲れてるの。休むね、お母さん。」


私が深く頭を下げると、母はため息をついた後、食板を持って出ていきながら言った。


「明日の朝、出勤前にまた来るから。何かあったら電話してね。」

「うん。」


母が去り、病室に一人きりになると、突然目に涙が溜まり始めた。

母にとって可愛い娘でいたいのに、いつまでも母にとって良い娘でいたいのに、今日また失敗してしまった。


これが私の最後の姿であってはいけないのに…。母にとって私の最後の姿は、明るく笑う姿でなければならなかったのに、幸せな姿でなければならなかったのに、失敗してしまった。

後悔する気持ちを後に、私は目を閉じながら誓った。

明日は必ず…。明日は必ず母に幸せな姿を見せてあげると。

母と父、そして皆を安心させてあげると。


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