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キム・ジュアが生きた証

私は幼い頃から心臓が弱かった。

もちろん、本当に幼い頃からというわけではなかった。

中学1年生の頃までは、一人で登校することもできていた。


友達に比べて体力はなかったけれど、走ったり、階段を上ったりするのは全く問題なかった。

でも、症状が出たのは中学1年生の夏休みだった。

その日はいつもと同じように塾に行く日だった。学校が終わって、友達とお菓子を食べた後、親友のジスと塾の車を待っていたら、突然息が苦しくなってきた。

胸がドキドキして痛くて、思わず顔をしかめてしまった。


「大丈夫?どこか痛いの?」

「あ…うん。」

「病院に行った方がいいよ。」

「でも、塾に行かないと怒られるし。」

「痛い時は病院に行かないと。お母さんに電話して。いや、私が電話するよ。」

「あ…うっ。」


その言葉と共に胸を押さえて、その場にへたり込んでしまった。


「お母様、ジュアが…倒れました。」


ジュアが?急にどうして?今どこ?

「学校の前です。塾の車を待っていたら、急に胸が痛いと言って、へたり込んでしまいました。迎えに来てもらえますか?」


うん。待って。今すぐ行くから。


それからの記憶はあまりないけれど、幸いにもジスが母に電話をかけてくれて、母が病院まで私を連れて行ってくれたそうだ。

ジスが母の電話番号を知っていたのは、ジスの両親と我が家が交互にカープールをしていたからだ。だから私はジスの両親の番号を知っていたし、ジスも私の両親の電話番号を知っていた。


病院ではすぐに精密検査に入った。

塾を休んで一緒に来てくれたジスが精密検査に入る前、私を慰めて「何でもないよ」と言ってくれたけれど、医者からは心臓病だと診断された。


幸いにも、病院での迅速な入院治療のおかげで、急性期を乗り切ることができた。

しかし、一時的に倒れている間に脳に血流が回らなかったためか、長期にわたる入院リハビリ治療が必要だと言われた。

そのため、病院での入院生活はしばらく続いた。


「腕を最後まで上げてみてください。」

「はい。」

「もっと高く。はい、できました。今度は足を動かしてみましょう。左足から上げてみましょうか?」


理学療法士との運動療法。


「スプーンをまっすぐに持ち上げてみますよ。はい、よくできました。今度は震えずに口に持っていってみましょう。」


治療士と一緒に、顔を洗う、スプーンや箸を使うなど、日常生活ができるように手助けしてくれる作業療法も並行して行わなければならなかった。

骨盤や骨、筋肉などを整える整体治療や超音波治療などももちろん、漏れなく熱心に取り組んだ。


入院リハビリ治療中、学校の授業の課題はジスがしばらく手伝ってくれた。

だから、治療が終わって休んでいる間も、病室で学校の授業についていくために勉強も休まず続けた。

そのため、医者も両親も私の完治に対する期待が高かった。

まだ幼く、治療にも十分よく従ってくれていたからだろう。


しかし、退院を目前にして、私の心臓は再び心筋梗塞を起こしてしまった。

病状に希望を抱いていた医者と両親の表情は、その日以来だんだん暗くなり、私も次第に笑顔を失っていった。


いつの間にか3年が経った。

中学2年生になり、3年生、高校1年生になってもジスは私のそばにいてくれた。

中学校を仕方なく辞めてしまったのに、親友のジスは週に一度は私を訪ねてきて安否を尋ね、私に学業を諦めないようにと励ましてくれた。

正直、ジスがいなかったら、私はとっくに死んでしまっていたかもしれないと思ったことは一度や二度ではない。4年間続いた病院生活と、良くなるどころかますます肥大していく心臓と症状は、両親にとってさらに大きな負担となってのしかかってきた。それを知らないはずのない私は、今すぐにでも自分が消えて、周りの人が楽になったらいいのにと何十回も考えたからだ。


2024年の真夏、その日も同じことを考えていた。

病院の屋上に上がった私は、屋上から下を見下ろした。

思っていたよりも高さがあった。

13階建ての建物だったから、たぶんここから落ちたら助かる可能性はそれほど高くないだろう。

だから、今すぐ飛び降りなければならないと思った。

今飛び降りれば、もう両親も悲しまないだろうし、私も罪悪感から解放されるだろうと思ったのだ。

それで屋上の手すりの上に両足を乗せて飛び降りる準備をした。

しかし、その計画は不幸にも実行に移せなかった。

一人の男の子が話しかけてきたからだ。


「あのさ、本当に死ぬつもり?」

「何?」

「俺、ここでパノラマ写真撮らないといけないんだ。だから、どいてよ。写真撮るのに邪魔なんだ。」


正直、私は呆れてしまった。

私と同年代に見える彼は、スマートフォンを持ったまま、あどけない笑顔を浮かべて、周りを見回しながら、もう一度大きな声で言った。


「日本語、分からない?早くどけってば。」

「何だって?」


私は呆れて手すりの上から降り、その男の前まで歩いて行って言った。


「学校に通ってないのかって言ったんだろ。なんで?」


彼の言葉に、さっきまで飛び降りるつもりだったのに、驚くほどその考えが一瞬で頭の中から消え去ってしまった。

学校に通ってないのかという言葉が私のトラウマを刺激したからだった。

私はすぐに写真を撮っているそいつのスマートフォンを奪おうとした。すると、そいつは私の行動に戸惑って反射的に体をひねり、その行動が図らずもそいつを転ばせてしまった。

問題は、そいつが転ばないように私の手をつかんだことだ。

おかげで映画でしか見ないような、あの名場面が運悪く再現された。


転んだそいつの上に私が重なってしまい、それをまた私を保護しようとそいつが抱きしめたおかげで、私たちはまるでドラマの名場面に登場しそうなシーンを演出してしまったのだ。

さらに、彼が触っていたスマートフォンは空気も読まずにカシャカシャと音を立てて、私とそいつが転んだ姿を撮り続けた。


私はそいつの体の上に重なった私の体を起こし、埃を払うようにして周りを見回した。

幸いにも屋上には私とそいつしかいなかった。目撃者はいなかったのだ。


誰もいないことを確認した私は、眉をひそめてそいつに言った。


「頭おかしいの?」

「頭おかしいって?さっきまで飛び降りようとしてたお前は正常なのか?」

「何、正常?」


そいつは私の言葉に一言も負けなかった。

むしろ私が立ち上がると、そいつも体から埃を払いながら立ち上がり、淡々とスマートフォンを開いて撮れた写真を確認した。


私は一言も負けるのが嫌なそいつを困らせてやりたかった。

ちょうどそいつはスマートフォンを見てから、自分のポケットから手帳を取り出した。

そして手帳のページにボールペンでスラスラと線を引いて何かをチェックした。

腹が立った私は、何食わぬ顔で自分の用事を済ませるそいつを黙って見ていられなかった。

それでそいつが書いている手帳を奪った。


「返して!」

「何これ?」

「返せってば!」


私はそいつから奪った手帳を開いてみた。

すると、面白い内容が書かれている。


[僕のバケットリスト、死ぬまでにしたい100のこと。]


45. コンチネンタル病院の屋上でパノラマ写真を撮る。


46. 非モテ卒業


47. 女性と手をつなぐ。


48. 女性とハグをする。


49. 彼女とキスをする。


50. 彼女とロトワールドで観覧車に乗る。


51. 彼女と一緒にアイスクリームの人気店に行く。


52. 私は下線が引かれた54番を見て、ふっと笑ってしまった。


「お前、さっき転んだのを、私とハグしたことにして下線引いたの?」

「違う!パノラマ写真を撮ったのに引いたんだよ。それは昔に引いたやつだし。」

「嘘つかないでよ。46番には下線が引かれてないじゃん。」

「引こうとしてたんだよ。まだ引いてない。返せ!」


そいつは素早い手つきで私が奪った手帳をひったくった。

私はさっきちゃんと見ていたから、彼が嘘をついていることを知っていた。

手の動きそのもので、彼が下線を引いているのを確認していたからだ。


「お前、女と手もつなげないの?」

「黙ってろ。」

「非モテ?」

「おい!黙れってば。」

「何歳で非モテなの?」

「あ~もう。呆れるな。」


その時、病院の屋上で誰かが私を呼んだ。


「ジュア!」


その声は母だった。母が驚いた顔で私を呼んだのだ。


「お母さん。」

「どうしてここにいるの。びっくりしたじゃない。病室から出ちゃいけないって言ったでしょ。次の治療があるから、みんなで探したんだから。」


母の言葉に、私はその男との対峙をやめて後ろを向きながら言った。


「ごめん。ちょっと風に当たりたかったの。戻るよ。」

「うん。早く入りなさい。」

「うん。」

「心配したじゃない。次からはそんなことしないで。お母さんが心配するって分かってるくせに。どうしてそんなことするの?」


母の言葉に、私はしょんぼりした表情で言った。


「分かったよ。お母さんも私の心配しなくていいよ。私もうすぐ18歳だよ。」

「18歳だって、お母さんの目には子供なんだから。」


母のその言葉に、私はため息をつきながら言った。


「ちっ。私もうすぐ死ぬのに。」

「そんなこと言わないでってば。お母さん、本当に死ぬところを見たいの?」

「はい~、ごめんなさい。」


母が私が死ぬという言葉を嫌がるのは分かっているけれど、それでもこれは仕方ない。私は心臓移植を受けられなければ、6ヶ月を乗り切れないと宣告されているのだから。

でも、その期間内に心臓移植を受けられないことはよく分かっている。

私の前の待機期間だけで3年残っている。だから、私に順番が回ってくることはないのに、母は相変わらず希望に満ちた未来ばかり考えている。


「早く入りなさい!ここにいたら体調が悪くなるわ。早く!」

「うん。」


母が私の背中を叩き、私は仕方なくそいつを屋上に一人残して、病室へ連れて行かれた。

病室に戻った私を待っていたのはリハビリ治療だった。

ますます肥大していく心臓と、胸を締め付けるような痛み。さらに、倒れるたびに蓄積された脳損傷でうまく動かせない顔の筋肉まで。

その上、だんだん間隔が狭くなる胸の痛みもある。


「ううう。お母さん、痛い…注射…鎮痛剤…。」

「またひどくなった?すごく痛い?」

「うん…。」


あまりにも苦しい。もう4年目になるこの繰り返される生活。

もうこれ以上は耐えられないようだ。

全てが苦しいけれど、ついに人生を終わりにすると決心した今日は、あの男のせいで実行に移せなかった。


「薬、入ります。」


薬が注入され、苦しんでいた心臓が安定を取り戻し、私の意識も次第に遠のき始めた。

明日は、明日はできるだろうか。

明日は必ず屋上に行って、みんなを楽にしてあげよう…

もうこれ以上周りの人たちを苦しめてはいけない。明日は必ず…。

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