ビーラ
ねぐらに戻ると、ビーラが起きて何かしていた。
アラド「何してんだおめー?」
ビーラはびっくりしてその場を飛び退いた。
ビーラ「アブねぇ!?アニキ!脅かすなよ!」
アラド「悪い、悪い。それより、運命の雫の買い取り希望主、仕事の依頼主からいいもんもらったぜ。」
ビーラ「オレもいいもん作ってたんすよ。」
ビーラの見せたもの、爆弾だ。形は不格好だが威力は高そうだ。
アラド「お前、そんなもんどうやって?」
ビーラ「昔、ちょいと触ってた時期が、俺にだって得意分野はあるんすよ。」
ドヤ顔だ。案外手先が器用なのかもしれない。
よし、それなら決行は明日だ。2人は興奮して眠れず、
仕事の後、カネを受け取った後の将来の展望を熱く語り合った。くせー地下生活、下層民を抜け出して、
まっとうな暮らしをする。盗みなんて金輪際しない。
2人が夢見てたのは、そんな平凡な生活だった。
次の日
アスリィ家に入ってすぐにアラドはマタルから貰ったポーションを自分たちに振りかけた。
すると、衛士の後に自分たちの残像がついていった。
ポーションはあと1回は使える。
アラド達はアスリィ家の家探しを始めた。
アラド「確か、鏡のない部屋だったな。」
今日は非番の衛士が多いのか屋敷の中は手薄だった。
アラドはサクサク部屋を見て回った。
しばらくすると鏡のない部屋にぶちあたった。
そこの部屋の中央には異様なオーラを放つ小瓶が机の上に置かれていた。
アラド「運命の雫だ!」
その時、警笛が屋敷にこだました。
残像がバレたらしい。アラドは小瓶を素早く回収すると。一目散に逃げ出した。
ビーラ「アニキ!ありましたか!?」
アラド「おうよ!ビーラ、お前の爆弾の出番だぜ!」
ビーラ「合図は任せました、とりあえずここを出ましょう!」
遠くで衛士や家の者たちの怒号が聞こえる中、アラド達は中庭に出て、塀に向かった。
アラド「ビーラ、塀を爆弾で壊せ!」
ビーラ「合点だ!」
ビーラは懐から爆弾を取り出して、壁の所に設置する。
ドスっ
ビーラは矢で胸を射抜かれてその場に倒れた。
家の中からの狙撃、アラドは咄嗟にポーションを振りかけ、近くの茂みに隠れた。
次の瞬間には残像に矢が当たった。
衛士「奴はまだ近くにいるぞ!探せ!」
他の衛士達がビーラに近づく。
アラド『ビーラ。』
その時、アラドはビーラと目が合った。
ビーラは最後の力を振り絞って爆弾を起爆させた。
周りの衛士達、塀を吹き飛ばして。
爆風で舞い上がった、煙に紛れてアラドは外に逃げた。
アスリィ家当主の怒号が後ろで聞こえる。
アラド「ビーラ、いいやつだったのに。」
アラドには嘆き悲しんでいる暇はなかった。
すぐ後ろには、衛士達が迫っている。
アラドは走った。
アラド『あの赤い門のところまで行けば!』
自分以外は魔女の世界にはいけない。そう信じて、アラドは走った。
他の通行人が多くて矢は使えない。馬もこう人が多くては速度は出せない。
こんな所で人混みをすり抜ける。能力が役に立つとはアラドも思っていなかった。
高級住宅街から市街地に入って、アラドと衛士達の距離は縮まるどころか、だんだんと開いていった。
アラド「ここだ!」
いつもの広場への道、あの赤い門があるのが見える。
アラドは広場に転がり込んだ。
アラドが目を開けるとそこは、夜の静かな街、人は一人も居ない。追ってきていた衛士達も消えた。
アラドは上がる息を整え、ようやく、自分が泣いていることに気がついた。