カカ"ミ
衛士「なにぃ、最近成り上がったから、アスリィ家に謁見したいだと?」
アラド「身分相応の教養を得るには、教養豊かな人に教示してもらいたいと思いまして。」
そこへ、ラクダの行列が帰ってきた。現当主だ。
時間ぴったりだ。
派手な一張羅を新調して高級住宅街に出入りできるようになって数日、今のアスリィ家の当主は時間に、
厳しい。
アラドとビーラは身振り手振りを交えて訴えた。
ビーラ「当主様はそんなに心が狭いお人なんですかい?」
アラド「ぜひとも成り上がりにその高貴さをご教授くだせぇ!」
ソレを聞いていた、当主は歯がゆい顔をしていたが、
無言だった。しかし、隣にいた娘の方は違った。
アスリィ家の娘「そんなに言うんですから、謝礼は持ってきたんでしょうね?お前たち。」
ビーラ「あ、ねーや。」
アラド「バッカ!オメー、今度、持ってくるつったろ!?」
アラドは内心焦った。余計なことをしゃべるなと、
ビーラは口が軽い。そのやりとりが娘にはコミカルに映ったらしい。
アスリィ家の娘「あっはっは!おかしい!ホントに教養がないのねお前たち。いいわ、明日もココにいらっしゃいな、金額によっては私の家庭教師に見てもらいましょう。」
お高く止まってやがるなぁ。始終、高圧的で人を見下してかかっている。
気に食わねぇ。そんな顔のビーラを制しつつ、アラドは謝辞を述べ、娘の美しさを褒め称えた。
アラド「ありがとうございます!お嬢様!アナタは噂通り、心も美しいお人だ!では、明日、日を改めて来ます!」
当主「もういいか?扉を閉めろ。」
上機嫌の娘に断ってから何事もしているのか?
娘の方が付け入りやすそうだ。アラドはそう思った。
ビーラ「俺はあんな奴きらいだ。」
ねぐらに戻る時に広場を抜ける。
アラド「!アレは……」
柱だけの赤い門、広場の入り口にある。
アラド「なぁ?あんな門、前からあったか?赤いやつ。」
アラドは指差すが、ビーラには伝わってないようだ。
見えてもいない。
「そのまま、入ってこい。」
頭の中で声がする。
ゾワっとする。門を抜けると辺りは急に夜に変わった。まだ日は高かったのに……
広場の真ん中にはマタルが立っていた。マタルは、
アラドを一瞥した。すると、アラドの頭の中はぐちゃぐちゃと手で弄られている感覚になった。
アラド「うぅ!」
マタル「……なるほど、金か。ごうつくばりなやつだ。」
アラド「……もう、あんたでやればいいんじゃないか?」
マタル「そう言うなよ相棒。奴は運命の雫は鏡のない部屋に保管してやがるんだ。それに、今の私じゃ危険なのさ。」
部屋?鏡?何のことやら?
マタル「まあ、細かいことは気にするな。お前にコレを渡しておこう。こんだけあればいいだろ。」
なにもない空間から大きな袋がマタルの足元に落ちてきた。音からして金貨だろう。
マタル「中の地図だ。頭にたたき込め。」
ご丁寧に袋の中には間取り図も入っているらしい。
ラクダかロバに乗せるかな?
アラドは袋に手をかけるとさっきまでの夜の昼場は、
夕方に変わった。影が長い。当たりはまだ赤い日差しが照らしていた。マタルの姿も消えている。
気がつくと、アラドは汗でびっしょりだった。
しっかりやれ、完遂しろ、と聞こえてくるようだった。