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第9話 狐の知恵とパワースポット? いざ、異世界交流遠足へ!

 クールビューティーな狐娘、シズクが我が家(という名の異世界難民キャンプ)に加わってから、アパートの空気は少しだけ変わった。いや、カオス度が増したのは変わらんのだが、そこに知性という名のスパイスが加わった感じだ。


 シズクは宣言通り、俺のノートパソコン(もはや彼女専用機と化している)を駆使して、凄まじい勢いで情報収集を開始した。カタカタカタ…ターン! という打鍵音が、我が家の新たなBGMになりつつある。


「ふむ……この『Google Scholar』なるもの、有用ですね。異世界の魔術体系に関する論文は……さすがにありませんか」

「相川殿、この『Twitter』なる短文情報集積プラットフォーム、デマも多いですが、リアルタイムの情報伝播速度は驚異的です」

「なるほど、『ニコニコ動画』……コメントによる集合知形成、興味深い文化です」


 異世界の叡智を持つ(らしい)彼女は、インターネットという大海を、まるで自分の庭のように泳ぎ回り、必要な情報(と、時々サブカル知識)を猛スピードで吸収していく。その姿は、ちょっとしたサイバー巫女って感じだ。そのうち、「ハッキングは魔法みたいなものですね」とか言い出しそうで怖い。


 一方、リコはリコで、人間界(主に近所の公園)への適応を進めていた。持ち前の元気さと人懐っこさで、いつの間にか公園のガキ大将……じゃなくて、人気者になっていた。


「リコおねーちゃん、鬼ごっこしよー!」

「はい! 全力で追いかけますね!」(本気ダッシュ)

「きゃー!」(子供たちの悲鳴&親御さんの驚愕)


 ……うん、もうちょい手加減を覚えてほしいもんだな! 耳と尻尾隠しの帽子とパーカーが、運動の邪魔にならないか心配だよ。


 そして我らがルナ様(猫)は、相変わらずマイペース。日当たりの良い窓際か、俺の膝の上が定位置だ。シズクが難しい話をしていると、「ふぁ〜あ」とか言ってあくびしてるし。……まあ、時々鋭いツッコミを入れたり、王女としての片鱗を見せたりもするんだけどな。最近は俺が買ってきた猫用おやつ(高級品)にご執心だ。


 そんな日常の中、シズクの調査に最初の進展があった。


「相川殿、ルナ様の魔力回復について、一つ可能性が見えてきました」

 ある日の夕食後、シズクはモニターに表示した地図を指しながら言った。


「この世界…特に日本には、古来より『龍穴』や『霊脈』などと呼ばれる、大地のエネルギーが集積する場所が存在するようです。いわゆる『パワースポット』と呼ばれるものですね」


 パワースポット? ああ、なんか聞いたことあるな。縁結びとか金運アップとかの。


「古文書の記述や、こちらの世界の地質学データ、さらには微弱な魔力反応の観測結果を統合・分析したところ…この近隣にも、比較的エネルギー濃度の高い地点がいくつか存在することが判明しました」

 シズクが示したのは、俺たちが住むS県周辺の地図だった。いくつかの神社や、少し離れた場所にある古くからの森などがマークされている。


 ちなみにS県とはどこか詮索しないで欲しい。……だってケモミミ美少女が住んでる住所を公開できるわけねーだろ。そのくらいの常識は俺だって持っている。


「これらの場所ならば、ルナ様の魔力回復を多少なりとも促進できる可能性があります。また、ルナ様にかけられた可能性のある呪術に関しても……」

 シズクは別のウィンドウを開く。そこには、「呪い 解除 方法」「悪縁切り 神社」「秘伝 祝詞 効果」みたいな、ちょっとオカルトチックな検索ワードが並んでいた。


「科学的根拠は希薄ですが、民間伝承や古くからの儀式には、我々の世界の魔術体系と類似する概念が見られます。特に、特定の場所で行われる『お祓い』や『浄化』の儀式が、ルナ様の魔力の淀みを解消する一助となるやもしれません」


 なるほど……。パワースポットで魔力回復、ついでに呪い解除もワンチャン狙う、と。ファンタジーとオカルトの合わせ技か。まあ、背に腹はかえられん!


「よし、決まりだ! とりあえず、一番近場のパワースポットに行ってみよう!」

 俺が宣言すると、リコが目を輝かせた。


「おお! 冒険ですね、主殿!」

「ふん、妾も少しは外の空気を吸いたかったところじゃ」


 ルナもまんざらではない様子。シズクは「実地調査は重要です」と冷静に頷いた。


 こうして、俺たち異世界交流ファミリー(仮)の、初めての課外活動(?)が決定した。目的地は、ここから電車と徒歩で小一時間ほどの距離にある、比較的大きな神社だ。パワースポットとしても、まあまあ有名らしい。


 問題は、どうやって行くかだ。

 リコとシズクは、帽子とパーカーで耳と尻尾を隠す。ルナはキャリーバッグへIN。……うん、見た目はなんとかなりそう、か?

 でも、ケモミミ少女二人(しかも超美少女)と、猫入りキャリーバッグを持った大学生の組み合わせって、どう考えても目立つよな!?


「大丈夫か、これ…? 絶対なんかトラブル起きるだろ…」

 俺は大きな期待と、それ以上に巨大な不安を抱えながら、初めての「異世界交流遠足」の準備を進めるのだった。


 いざ、パワースポットへ! 果たして魔力回復の手がかりは掴めるのか!? そして道中、どんな珍道中が俺たちを待ち受けているのか!?

 ……俺の胃、持つかなあ……。

この小説はカクヨム様にも投稿しています。

カクヨムの方が先行していますので、気になる方はこちらへどうぞ。


https://kakuyomu.jp/works/16818622172866738785


もしくは・カクヨム・ケモミミ神バステト様・で検索ください。

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