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第5話 同居人(ケモミミ)増量、俺のSAN値直葬!

 犬耳少女リコが俺のアパートに転がり込んできてから数日。

 結論から言おう。……カオス度が当社比300%アップした。


 まず、朝がうるさい。


「主殿! 朝稽古の時間です! さあ、ご一緒に鍛錬を!」

 まだ薄暗いうちから、元気MAXのリコが叩き起こしに来る。いや、俺はしがない大学生であって、騎士とかじゃないんですけど!?

  丁重にお断りしても、「そうですか! ではわたくしだけでも!」と、狭い部屋の中でブンブン素振り(?)的なことを始める始末。危ねえって!


 次に、食費がヤバい。

 リコ、見た目通りめちゃくちゃ食う。ルナ様の高級ツナ缶要求も健在な上に、リコは「わたくし、お肉が好きです!」と満面の笑みで宣う。俺の財布、マジで風前の灯火なんですけど!? 深夜バイト、増やすしかねえのか…?


 そして、一番の問題は、リコの存在をどう隠すかだ。

 ルナはまあ、喋らなければただの(ちょっと高貴な雰囲気の)黒猫で通せる(と思いたい)。だがリコは違う。ぴこぴこ動く犬耳! ブンブン揺れる尻尾! これをどう誤魔化す!?


 とりあえず、外出時は深めの帽子と、尻尾を隠せるダボっとしたパーカーを常備してもらうことにした。


「おお! これは動きやすい上に、なんだか『にんじゃ』みたいでかっこいいですね、主殿!」

 本人は妙に気に入ってるみたいだが、夏場どうすんだよこれ…。すでに俺のSAN値はゴリゴリ削られている。


 そんなこんなで、健太(俺)、ルナ(猫姿の王女様)、リコ(元気な犬耳護衛)という、字面だけ見るとちょっとしたハーレムラノベみたいな構成員になった俺のアパート。まあ、実態はドタバタ育児日記に近いんだがな!


 リコはルナ様第一主義なので、ルナの世話(毛づくろいとか遊び相手とか)は甲斐甲斐しく焼いている。ルナも満更ではないようで、リコにだけは少し心を許しているように見えた。その光景はまあ、微笑ましいっちゃ微笑ましいんだけどな。


 ある日の夜、バイトから疲れ果てて帰宅すると、ルナとリコがテレビの前で何やら真剣な顔をしてアニメを見ていた。魔法少女モノか?


「なあ、ルナ」

 俺は冷蔵庫から麦茶を取り出しながら、ふと気になっていたことを口にした。


「お前さ、本当はずっと猫の姿ってわけじゃないんだろ? その…ケットシー? っていうのは、人間の姿にもなれるもんなのか?」


 俺の言葉に、ルナの肩(猫だけど)がピクリと震えた。テレビに向けていた視線が、ゆっくりと俺に向けられる。その黒曜石みたいな瞳が、一瞬だけ不安げに揺らいだのを、俺は見逃さなかった。


 だが、次の瞬間にはいつもの尊大な態度に戻っていた。


「ふん、当たり前であろう! 妾がなろうと思えば、いつでも優美な姿に戻れるわ! …ただ、まあ、この姿の方が魔力の燃費が良いだけじゃ。こちらの世界は、どうにも力が薄くてかなわん」

 ぷいっ、と顔をそむけるルナ。強がってはいるが、声が微妙に震えている。やっぱり、何か理由があるんだな。


 すると、隣に座っていたリコが、少し悲しそうな顔で口を開いた。


「主殿…。ルナ様は、あの…王国からの大変な逃亡の際に、お力をほとんど使い果たされてしまわれたのです。それに…こちらの世界は、わたくしたち異世界の者には、少し…力が湧きにくい、というか、回復しにくい環境のようでして…」

 しゅん、と犬耳が垂れ下がる。


 なるほどな…。魔力切れ、か。それも、かなり深刻なレベルっぽい。もしかしたら、逃げてきた時の精神的なダメージも影響してるのかもしれない。


「…そうか。なら、仕方ないな」

 俺は努めて明るく言った。ここでしつこく聞くのは野暮ってもんだろ。

 だが、内心では決意を固めていた。(こいつらを元の世界に無事に返すか、あるいは、ここで安心して暮らせるようにしてやるには…俺がなんとかするしかねえよな…!)

 お人好しスキル、強制発動である。まあ、拾った責任ってやつだ。


「でもよ、何か方法はあるんだろ? 魔力を回復させるとか、力が湧きやすい場所とか、そういうのがさ」

 俺が言うと、リコはハッとした顔で頷いた。


「はい! きっと何かあるはずです! わたくし、全力で探します!」

「ふん、妾とて、いつまでもこんな姿でいるつもりはないからの」


 ルナも少しだけ前向きになったようだ。


 問題は、どうやって情報を集めるか、だ。異世界の情報なんて、ネットでググっても出てくるわけねえしな……。


「何か手がかりになるようなものがあればいいんだが…」

 俺が腕を組んで唸っていると、


「む…?」


 不意に、窓の外を見ていたルナが眉をひそめた。その視線は鋭く、さっきまでの雰囲気とは違う、王女としての威厳のようなものを感じさせる。


「どうした、ルナ?」

「……いや。気のせいかと思ったが……この気配……リコだけではなかったのか……?」


 ルナは訝しげに呟く。


「まさか、あやつまでこちらに来ておるとは……ふむ、厄介なような、頼もしいような……」


 え? あやつ? 誰だよ!?

 新たな来訪者の予感。それは、更なるカオスの始まりなのか、それとも、現状を打破する鍵となる存在なのか…?


 俺の胃痛は、まだしばらく治まりそうになかった。

この小説はカクヨム様にも投稿しています。

カクヨムの方が先行していますので、気になる方はこちらへどうぞ。


https://kakuyomu.jp/works/16818622172866738785


もしくは・カクヨム・ケモミミ神バステト様・で検索ください。

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