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第25話 繋がる想い、照らされる道

 シズクの嗚咽が、静まり返ったアパートの部屋に響く。黒装束の女の言葉は、まるで呪いのように彼女を縛り付け、過去の傷口を容赦なく抉っていた。リコもルナも、心配そうに声をかけるが、今のシズクには届いていないように見えた。


 どうすればいい? 俺に何が言える?

 軽々しい言葉は、きっと彼女をさらに傷つける。でも、このまま黙って見ていることなんてできない!


 俺は意を決して、震えるシズクの隣に座り、その肩にそっと手を置いた。そして、ありったけの想いを込めて、不器用な言葉を紡ぎ始めた。


「……なあ、シズク。難しいことは、俺には言えねえ……けど」

 シズクがびくりと肩を震わせ、潤んだ紫色の瞳で俺を見る。


「過去にお前に何があったのか、俺は知らない。お前が一人で背負ってきたものがどれだけ重いのかも、本当の意味では、想像しかできないんだと思う」


 俺は一度言葉を切り、シズクの瞳を真っ直ぐに見つめ返した。


「でもな、シズク。一つだけ、絶対に確かなことがある。それは、お前は今、一人じゃないってことだ」

 俺は、隣で心配そうに見守るリコと、枕元で真剣な顔をしているルナ(猫)に視線を送る。


「俺がいる。リコがいる。ルナだっている。俺たちは、お前の仲間だ」

「シズク殿……!」

「そうだぞ、シズク!」


 リコとルナの声が、俺の言葉を後押しするように響く。


「お前が過去に間違ってたって言うなら、そんなもん、俺たちが一緒に背負ってやる。お前が怖いなら、俺たちがそばにいてやる。お前が戦うなら、俺たちが背中を守る。だから……」

 俺は、シズクの手をぎゅっと握った。


「……だから、顔を上げろよ、シズク!」


 俺の、何の飾りもない、ただ真っ直ぐな言葉。それが、凍てついていたシズクの心に届いたのかもしれない。

 彼女の瞳から、再び涙がぽろぽろと零れ落ちた。でもそれは、さっきまでの絶望の色とは違う、何か温かいものが溶け出すような、そんな涙に見えた。


 シズクは深呼吸を一つすると、ゆっくりと涙を拭い、そして、毅然とした表情で黒装束の女に向き直った。


「……確かに、わたくしは過去に大きな過ちを犯しました。その事実は決して消えませんし、生涯かけて償うべきことだと思っています」

 その声はまだ少し震えていたが、確かな意志が込められていた。


「ですが、あなたの言う通り、過去に囚われ、ただ絶望して立ち止まるつもりはありません。わたくしには今、この手で守り抜くと決めた、かけがえのない大切な仲間たちがいます。彼女たちと共に、わたくしは前へ進みます」

 そして、俺の手を握り返す力が強くなった。


「あなたの言葉に、もう惑わされはしません!」


 その気迫に押されたのか、あるいはシズクが放つ純粋な意志の力が効いたのか、黒装束の女の表情から嘲りの色が消え、僅かな動揺が見えた。シズクは冷静さを取り戻し、再び尋問を開始する。今度は、もう迷いはなかった。的確な質問と、時には相手の心の隙を突くような鋭い指摘(軽い精神探査の術も使ったのかもしれない)で、ついに核心的な情報を引き出すことに成功した。


 ルナにかけられた呪いの名は『星脈封じの呪印』。

 これを解除するには、この日本という土地の龍脈……大地のエネルギーが最も強く集束する聖地『龍穴』で、満月の夜に特殊な儀式を行う必要があること。

 儀式には、ルナ自身の清浄な魔力、儀式を執り行う術者としてのシズク、そして触媒として、強い生命力と『想いの力』を持つ人間が必要であること。


「強い生命力と、想いの力を持つ人間……?」

 俺が聞き返すと、シズクはこちらを見て、静かに、だがはっきりと告げた。


「……健太殿。おそらく、それはあなたのことです。あなたの、我々を、ルナ様を守りたいと願うその強い想いと、その奥に秘められた生命力こそが、儀式を成功させるための最後の鍵となるでしょう」


「……俺が、鍵?」

 予想外の事実に、俺は言葉を失った。俺が、ただの平凡な大学生である俺が、そんな重要な役割を……?


 さらに、追手の情報から、宰相ヴァルガスも『龍穴』の力を狙っており、ルナの『星脈感応』を利用してそのエネルギーを支配しようとしていること、そして儀式が行われるであろう次の満月の夜には、懐刀である最強の刺客『角(Horn)』級を送り込んでくる可能性が高いことも判明した。


 全てのピースが、はまった。

 最後の決戦の地は『龍穴』。決行は、次の満月の夜。敵は、最強の追手。そして、儀式の成否は、俺にかかっている……!


 ゴクリと喉が鳴る。正直、怖い。俺にそんな大役が務まるのか?

 だが、隣で俺の手を握るシズクの温もり、後ろで心配そうに見守るリコの眼差し、そして足元で「お主ならできるはずじゃ」とでも言うように俺を見上げるルナ(猫)の存在が、俺に覚悟を決めさせた。


「分かった。……やるよ。俺が、ルナを元の姿に戻す。そして、皆で、必ず勝つ!」


 俺の言葉に、リコが、シズクが、そしてルナが、力強く頷いた。俺たちの心は、今、確かに一つになった。


 捕らえた追手二人は、後腐れがないようにシズクが関連記憶を封じる術を施し、厳重に縛り上げた上で、アパートの押し入れに(一時的に)封印することにした。……うん、これが一番安全だろう、多分。


 さあ、最後の目的地は決まった。最後の試練も明らかになった。

 満月の夜は、もう間もなくだ。

 俺たちは、それぞれの想いを胸に、最後の戦いへと向かう準備を始める。


(続く)

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