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第16話 秘密特訓スタート! 目指せ、怪しまれない最強ケモミミ!?

 前回の追手・レイヴンとの戦いは、俺たちに大きな課題を残した。特に、真っ向から戦ったリコにとっては、自分の力が及ばなかったことが相当悔しかったらしい。


「わたくし、もっともっと強くならなければなりません! ルナ様と主殿を、今度こそこの手で完璧にお守りしてみせます!」


 ある日の朝食後、リコは力強く拳を握りしめ、俺とシズク、そしてルナ(猫)の前でそう宣言した。その鳶色の瞳は、決意の炎でメラメラと燃えている。……うん、その意気込みは素晴らしいんだけどな。


 問題は、そのトレーニング方法だ。


 翌日から、リコの自主トレ(という名の破壊活動)が始まった。

 早朝の公園では、一番太い桜の木に向かって「はぁっ!」とか言いながら正拳突き! ミシミシッて鈍い音が響いて、俺は慌てて止めに入った。おい、市の天然記念物を壊す気か!

 アパート近くの河川敷では、目にも留まらぬスピードでダッシュ! 土埃が竜巻のように舞い上がり、水面が衝撃波で波打つ! 周りでジョギングしてたおじいさん、腰抜かしてたぞ!

 そしてアパートの部屋に帰ってくれば、狭い空間で跳躍や受け身の練習! ドッタンバッタン! 下の階の大家さんから、鬼のような形相で怒鳴り込まれる寸前だったぜ!


「待て待て待て! リコ、ストーーーップ!!」

 俺はリコの暴走を必死に食い止める。


「その気持ちは分かる! 分かるけどな! そのトレーニング、人間界では完全にアウトだから! 下手したら警察呼ばれるレベルだから!」

「むぅ…そうなのですか? 王国では普通の訓練なのですが…」


 しょんぼりと犬耳を垂れるリコ。異世界の常識とこっちの常識は違うんだよ…。


 このままじゃ、追手にやられる前に社会的に抹殺されかねない。俺は頭を抱えた末、一つの提案をした。


「……よし、リコ。俺が、人間に怪しまれないトレーニングメニューを考えてやるよ」

「本当ですか、主殿!?」


 ぱあっと顔を輝かせるリコ。


「ああ。その代わり、これは俺とリコ、二人だけの秘密だ。他の誰にも言うなよ? ルナやシズクにもだ」

 秘密、という響きに、リコはこくりと頷き、少しだけ頬を赤らめた。


 こうして、俺とリコの「秘密の特訓」が始まった。人目を避けるため、トレーニングは主に深夜、あるいは早朝の公園や河川敷で行う。


 まずは基礎体力……って言っても、リコの基礎体力は俺の遥か上を行ってるんだけどな。とりあえず、俺のペースに合わせて一緒にジョギング。リコにとっては準備運動にもならないだろうが、「主殿と一緒に走れるの、嬉しいです!」と満面の笑みだ。

 腕立てや腹筋も、リコは軽々こなす。俺は「フォームが大事だから!」とか偉そうに言いながら、内心(俺より全然筋肉あるな…)と感心しきり。


 そして、対人戦(?)練習。俺が古いクッションをミット代わりにして、リコの打撃を受け止める。


「いきます! せいっ!」

 ドスッ!


「ぐふっ!?」

 軽いパンチのつもりだろうが、俺は数メートル吹き飛びそうになる。リコのパワー、マジで規格外だ!


「だ、大丈夫ですか、主殿!?」

「だ、大丈夫だ…もう一回…!」


 俺は必死に踏ん張りながら、リコのパワーとスピードを受け止め続ける。


 隠密行動の練習もした。気配を消して歩く、音を立てずに障害物を飛び越える…まあ、俺が教えられることなんてたかが知れてるけど、リコは「なるほど! こうすれば気配を薄められるのですね!」と真剣に俺の拙いアドバイスに耳を傾けてくれた。


 トレーニング中、俺はリコの身体能力の高さに驚嘆すると同時に、そのひたむきさ、一生懸命さに、どんどん惹かれていくのを感じていた。


「主殿のアドバイス、的確です! ありがとうございます!」

 キラキラした瞳で、太陽みたいな笑顔を向けられると、こっちまで嬉しくなってくる。休憩中に隣に座ってスポーツドリンクを飲む。流れる汗をタオルで拭う仕草。少し乱れた赤茶色の髪。その全てが、やけに魅力的に見えてしまう。ぴこぴこ動く犬耳や、嬉しそうに揺れる尻尾も、反則級の可愛さだ。


 もちろん、トレーニング中に彼女と俺の体が触れてしまう事は多数ある。そのたびに、俺の心臓はうるさいくらいに跳ね上がる。リコも時々、顔を赤くして俯いたりしているから、きっと彼女も何か感じている。

 しかし……彼女は真剣だし、ここで動揺しては訓練の邪魔になる。そう思って心臓の鼓動を抑えつける俺。アパートに帰るころにはグッタリ疲れている。訓練で突かれているのか、自分の心臓を大人しくさせるのに疲れているのか、自分でも分かんねーよ!


 俺たちが夜な夜な(あるいは早朝に)こっそり抜け出していることに、シズクあたりは薄々気づいているかもしれない。「ふむ、相川殿とリコ殿の連帯感が向上しているようですね。合理的な訓練効果でしょう」とか分析してそうだ。ルナは……不満そうな視線を向ける。……嫉妬だったりして(願望)。


 秘密の特訓を通じて、リコは少しずつ、人間界で力をセーブする方法を学び始めているようだった。そして、俺たちの間の距離も、確実に縮まっている。


 この特訓が、これからの戦いで役に立つのか? それはまだ分からない。

 でも、今はただ、この一生懸命で可愛い犬娘の力になってやりたい。そして、このドキドキする秘密の時間を、もう少しだけ……続けていたい。

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お読みいただきありがとうございました。

この作品をオーディオブック化してみました。

良ければ聴いてください。

https://youtu.be/VCuoImMK8WM


ルナ様(人間スタイル)のイラスト付き【AIイラスト】。

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