くつろぎの空間
『では、お預かりいたしますね
お名前はなんとおっしゃるの?』
「田深山 ゆかりです、あっ!この子は田深山 紅です!」
『ふっふ、こうちゃん?こうくん?』
「男の子です」
『こうくん、ちょっとの間おばあちゃんといましょうね〜』
私の腕の中から紅のぬくもりと重さがなくなり、肩の力がすっと軽くなった気がした
『お母さんが心配でしょうから、モニターでこちらの様子が見えるようにしておきますね』
「じゃあまずは、私に着いて来てください」
しばらく歩くと、開け放たれた空間に、観葉植物や可憐な花が咲き、ほのかな香がリラックスさせてくれる、上品なインテリアも、とても落ち着く雰囲気だ
その一角にある椅子に腰掛けると、考え事をしている間に洗髪が終わっていた
『ちょっと傷んでしまってる髪は、お切りしてよろしいですか?』
と声をかけられ
「はっはい!
切ってくださるならお願いします」
『まずは、トリートメントをしっかりやってから、切りましょうか』
そして、名も知らぬクリームを丁寧に塗り込まれ、洗い流された
“あ〜頭がスッキリして気持ちいい〜“
遠くにジャズの音色が聞こえる
鏡のないフロアに彼のハサミの音
いつの間にか寝てしまい
気がつくと、ハサミの音は消え
ブローをされていた