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ポスト・カラミティ  作者: 壊れた炊飯器
チャプター1: destination unknown
4/10

邂逅、Moreover

■荒野の都市エンデュミオン・近郊の遺跡


旧文明の遺産が眠ると言われる遺跡を、ひとつの影が駆ける。


(右前方から機械人形、クリア……後ろには手榴弾を撒いておくか)


()()()()()()()()()()()()()機械人形をハンドガンの跳弾で撃破、追跡してくる別の人形の足元にグレネードを転がし爆破。

鮮やかな手つきで二体を仕留め、青年はさらに走るスピードを上げていく。


(全てがこの程度なら問題はない、……ッ!)


そこまで考えて、たどり着いた広間で立ち止まる。


「……!」


そこで待っていたのは───



先ほどまでとは明らかに"格"が違う、といった雰囲気を漂わせる大型の人形だった。


体型は箱に手足がついたようなもの。

頭頂高は2.5mほどだろうか?

首はないが、背部に2門・両腕にそれぞれ2門、脚部にも機銃を取り付けたシルエットは……並の兵器とは比較にならない性能を持っている、と一目で分かるものだった。



『……………。』


(門番ってところか。だけど……)


傭兵として、立ち塞がるものは全て粉砕するまで。

ハンドガンを仕舞い、《クイックチェンジ》スキルによって新たに顕現させた武装──ナックルダスターを肥大化させ、グリップも()撃部分と同等に長く、加えて先端に槍頭を取り付けたような──奇怪な"(ノコギリ)"を携え、彼は一歩踏み出す。



「───通らせてもらう」


『■■■■■■………』



人形も、呼応するように全ての武装を展開し……


鋼鉄に囲まれた遺跡の中で、傭兵と兵器が激突する。




(一斉射撃(フルバースト)……!)


突貫したアラトに、門番(ガーディアン)の全砲門を使った面制圧射撃が襲い来る。

しかし、



「《クイック・バースト》」



ヒトが修練の果てに得る技能、あるいは生まれついて持つ天賦の才───スキル。


そのうちの一つ、彼が持つスキル《クイック・バースト》は、魔力を放出することで任意の方向に推力を得るスキルである。

それを使って大きく右に跳び、全弾を回避。


続けてスキル《スライド・ブースト》を使用し、彼のブーツ、その接地面が魔力を帯びる。


ガーディアンの偏差射撃すらも追いつかない速度で地面を滑走、大きく回り込んで懐に入り背後から───


「足元がお留守、だッ!」


脚部機銃がこちらを向く前に、加速を乗せた足払い。

それだけで装甲がひしゃげ、本来尋常ではない硬度を持つラグリマ鋼のフレームごと脚部が()()()


人体の限界を優に超えた(わざ)を成し、しかしそれでも傭兵は止まらず。

ガーディアンが完全に崩れ落ちる前に、右手の鋸についたスイッチを押し上げると……



ガシャン!!と鋸の刃が持ち上がり、()が伸長し、巨大な"(サイズ)"へと変形する。



肉厚の刃が、ぎらりと凶暴な光を宿し───


続けざまに、四閃。

またしても装甲は意味を成さず、フレームごと四肢を()がれたガーディアン、その達磨(ダルマ)となった胴体に。


鎌の先端……そこに取り付けられた槍頭が押し当てられ、



ガキュン!!!と貫く。



槍打ち機(ランスバンカー)は的確にガーディアンの核を捉え、臨界した動力核が爆発するが───


それを為した当の青年は、常人であれば体がちぎれ飛ぶ大爆風を食らってすら……傷一つなく。



「……見かけ倒し、か」


見た目に違わぬ重量を持つはずの大鎌を軽々と振り回し、血糊(オイル)を振るい落としてから再び鋸に変形、仕舞い()()

それ以上、青年は残骸に一瞥もくれずに、さらに奥へと踏み入っていくのだった。





■旧文明遺跡・下層


「……これは」


遺跡を進むうちに見つけたのは、これまでとは雰囲気が違う自動扉。

とりあえず斬りつけてみるが───



─────ッガァァァァァン!!!



「弾かれるか……。……というか、魔術的な防御…?」


見れば、刃を弾いた扉の表面に魔術式の陣が浮かび上がっている。

その点でも、これまでの遺跡のギミックとは違うか。


「【走査術式(エクスプローラ)】。……反応なし。熱源レーダーもエラー……」


俺にとって、魔術(アーツ)は不得手中の不得手なんだがな……。

試せる手段を使い切ったならば、後は手探りのみ。

そう考えてペタペタと扉の表面を探っていると、


(ハッチ、か。コネクタが繋がるならハッキングもできるけど……)


上に開く(ハッチ)を発見。開けてみればそこには───


「………うーん。指紋認証……か? それとも……まあ、やってみる」


『ゲノム認証……コード09……確認。解錠します』


「か───って開いたァ!?」


……相変わらず、驚かされると口調が崩れる。

気をつけようと思いつつ、………まあ、入ってみるか。





「………暗いな。明かりは……よし」


薄暗い部屋の中、なんとかスイッチを見つけて明かりをつける。

するとそこには───


まず、何やら情報を処理しているモニター。

続けて、人間大のサイズの……箱?

さらには、中身は無いが培養液らしきもので満たされた大型のガラス管。


総じて、なんとも怪しさ……というかきな臭さ満点の部屋だな。


「……………まあ、調べてみるか……」


とりあえず一番危険が無さそうなモニターを確認、



などと考えていたのを嘲笑うかのように、響く大音量。


「ッ、なんだ!?」


『コード09保持者……ブーステッド(・・・・・・)と確認。および、()()()を確認………99.4%。条件をクリアとし、74号の凍結を解除します』


(……ブーステッド? ………()()()、か……?」


『凍結処理、解除完了』


「おい、………っ!」


一応モニターを注視してみるが、文字の列は高速で過ぎ去っていく。


そして、



人造人間(ホムンクルス)IR-74、覚醒しました』



背後で鳴り響く音。

思わず振り返って、先ほどの箱を見てみれば………




「……………。」


「…………………………お、女の、子…?」




美しい銀髪と、透き通った青い瞳。

一糸纏わぬ姿の美少女が、箱の中から起き上がってこちらを見ていた─────

・スキル

この世界に住む人間が修練の果てに獲得するか、あるいは生まれついて所持している技能。

スキルとして扱われていたものが後年科学的に再現可能になったもの、逆に科学的な機能を人の身でも使えるようにするもの、そのどちらにも該当しないもの...などがある。


魔術(アーツ)

大厄災の前から使われていた、人が持つ魔力を燃料とする術。

炎・水・風・地・光・闇・無の7属性と攻撃系・回復系・補助系などの系統が存在する。

時代が進んだ今では『魔術』ではなく『アーツ』という呼称のほうが一般的。


・『マルチプルサイズ』

グリップの伸縮・刀身の展開により、鋸・鎌・鉈の三形態に変形可能な武装。

先端の槍部分は、火薬を使用しパイルバンカーのように撃ち出すことが可能。

・取り回しを重視した鋸形態

・トリッキーな攻撃を可能とする鎌形態

・最も遠心力が乗り、単純な破壊力に秀でるが、槍を使用できなくなる鉈形態……といったように使い分けることができるが、それ故に使用者にも高い技量が要求される。

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